
突然ですが、地球上に最も普遍的に存在し、利用可能なエネルギーは何でしょうか?
水力?-豊富な水量がないとダメです。水不足は世界的に深刻な問題です。
潮力?-海や湖がないと生まれ得ません。波力も然りです。
バイオ燃料?-生物がいれば、排出したエネルギーを利用できます。しかし違います。
風力?-惜しいですが、今回はもっともっと地球上に広く、常に存在しています。
答えは、重力です。
世界で最も豊富なエネルギー
地球上にいれば、どこでも、常に影響を受けています。そういった意味で地球上に最も普遍的に存在します。しかし、重力そのものは力としてはあまり利用されていないのではないでしょうか?
重力の利点は、どこでも、常に存在するということです。いくら使っても地球が存在する限りはなくなることがありません。そういった意味では理想的なエネルギーであるといえます。
今回ご紹介するソーシャルプロダクトは、この重力を使って発電するランプです。
電気のない生活
ソーシャルビジネス総合研究所でもたびたび取り上げてきましたが、世界ではいまだに全人口の約20%、13億人が安定した電力の供給を受けられていないといわれています。そしてそういった人々が代わりに使っているのが、蝋燭や石油ランプです。
インドのPrakti DesignやフィリピンのSALtでも取り上げたように、石油ランプは、不完全燃焼によって煤煙を多く出してしまいます。そしてこの煤煙を吸引することで、呼吸器系の病気になるリスクが高まります。現に途上国では、呼吸器系疾患による損失が高い国が多くなっています。女性や子どもは、一日あたりタバコ40本分にも匹敵する有害物質を吸引しているといわれています。
毎月分の石油の購入は、家計の30%を占めるとも言われており、結構な負担になります。更には、怪我や家事の原因にもなり、温室効果ガスの排出にもつながっていきます。
このように高負担な上に高リスクの生活を強いられている地域は決して少なくありません。
Gravity Light
そこで利用するのが、重力です。Gravity Lightは、重力を利用して明かりを灯します。
梁や屋根に器具をかけ、一方に石などを詰めたおもりをひっかけ、引き上げます。そうすると、おもりがゆっくりと、分速1mm程度で降りてきます。そのエネルギーを利用してランプに明かりが灯ります。
Gravity LightのHPより引用
つるしているロープに穴が開いており、ランプ内部の歯車を回して発電機を起動させるという仕組みです。重しが地面についたら、再びおもりを引きあげるだけで繰り返し使えます。180cmの高さにつるした場合、大体30分ほど持つ計算になります。
ランプはLED製で、明るさも三段階に調節が可能です。つるすとすぐに灯り、石油ランプの5倍の明るさを提供してくれます。
取り付けもライトをつるして紐を通すだけで、おもりは専用の袋に石などを12kgほど詰めればよいだけと、非常に簡単です。
石油ランプの撲滅
これを開発したGravity Lightは、イギリスの非営利組織で、ミッションに「石油ランプの撲滅」を掲げています。確かに、石油ランプは前述のとおり健康リスクが非常に高い上に、家計負担も大きく、環境負荷も大きいなどあまりメリットがありません。
一方Gravity Lightは、取り付けも簡単で、どこにでもある重力を使うために燃料費もゼロ、毎月石油を買う必要もなくなります。また、明かりを灯しても有害物質は一切出ず、けむりに悩まされることもありません。石油ランプをこれに置き換えることで、さまざまなメリットが期待できます。
Gravity Lightは、現在インドなどでのテストを経て、重いものが持ち上げられない人に向けたデザインなどを開発中です。
現在は、20ドル程度するようですが、将来的には5ドル程度に抑え、ケニアなど必要としている地域での組み立てを予定しています。
Gravity LightのHPより引用
再生可能エネルギー
重力は地球が存在する限り尽きることがなく、また普遍的に一定値で存在するため、実は最も普遍的に使える再生可能エネルギーであるといえます。強みは安定性です。
再生可能エネルギーの欠点は、大規模な発電が難しいことと、供給が不安定になりがちな点であると言われています。重力は、この弱みのうち少なくとも不安定性を克服できるエネルギーとして、今後利用経路を探っていく価値があるのかもしれませんね。