衣料ロスとは?衣服の大量廃棄が起きる原因と、私たちにできること
手頃な価格で気軽にファッションを楽しめるようになった一方で、その裏側で多くの衣類が廃棄されている「衣料ロス」の問題も、少しずつ知られるようになってきました。
ここでは、衣料ロスの現状や背景、そして私たち一人ひとりにできることについて解説します。
衣料ロスとは?
衣料ロスとは、まだ着られる服や、十分に活用されていない衣類が廃棄されてしまうことを指します。
衣類の廃棄は、私たちが着終えた服を手放すときだけに発生するものではありません。服がつくられ、販売され、使われるまでのさまざまな段階で、廃棄される素材や製品が生まれています。
たとえば、糸や生地をつくる工程で生じる端材、縫製時に残る裁断くず、販売されないまま残る在庫、そして使用後に捨てられる衣類などです。
衣料ロスは、服が私たちの手元に届く前から始まっている問題なのです。
世界と日本における衣料ロスの現状
世界で発生している繊維廃棄物は、年間約9,200万トン[1]。これは毎秒ごみ収集車1台分の衣類が焼却または埋め立て処分されている量[2]に相当します。
日本でも、2022年には年間約73万トンの衣類が、家庭や事業所から使用後に手放されました。
そのうち、リユースされたものは約18%、リサイクルされたものは約17%。残る約48.5万トン、全体の約64%は廃棄されています。[3]
48.5万トンを1日あたりに換算すると約1,330トン。10トントラックに置き換えれば、毎日およそ130台分の衣類が捨てられている計算です。
出典・参考文献:
[1]国連環境計画(UNEP)プレスリリース「Unsustainable fashion and textiles in focus for International Day of Zero Waste 2025」(2025年3月27日公開)
[2]毎日新聞「いらなくなった服はどこへ? 「繊維ごみの首都」パニパットを歩く」(2025年12月17日公開)
[3]経済産業省「産業構造審議会 製造産業分科会 繊維産業小委員会 第9回資料」(2024年2月29日公開)
なぜ衣料ロスが生まれるのか
衣料ロスは、単に「服をつくりすぎている」ことだけが原因ではありません。
新しい服が次々と求められる市場の仕組み、生産や販売のあり方、私たちの消費行動、そして既存の多くの服が資源として循環させづらいなど、複数の要因が重なって生まれています。
主な原因を見ていきましょう。
ファッションのサイクルが短くなった
ファストファッションや格安で購入できるショッピングサイトの広がりなどによって、手頃な価格で新しい服を気軽に楽しめるようになりました。
一方で、次々と新しい商品やトレンドが生まれることで、まだ着られる服でも「流行が過ぎた」「新鮮さがなくなった」と感じやすくなりました。購入するときの負担が小さくなるほど、「長く使うこと」よりも「新しいものに買い替えること」を選びやすくなります。
国連環境計画によると、世界の衣類生産量は2000年から2015年の間に倍増した一方、一着の服が使用される期間は36%短くなったとされています。[4]
服そのものの寿命だけでなく、私たちが服を「着たい」と思う期間も短くなっていることがわかります。
売れ残りが生まれやすい生産・販売構造
アパレル事業者にとって、必要な商品を、必要な時期に、必要な量だけつくることは簡単ではありません。
需要を正確に予測するのは難しく、売り切れによる販売機会の損失を避けるために、実際の需要より多めに発注することがあります。また、一度に多く生産するほど、一着あたりの製造コストを抑えやすいという事情もあります。
こうして需要を上回る量の商品がつくられ、値下げをしても売り切れなかった衣類などが在庫として残っていきます。
低価格で商品を届けるうえで、大量生産は効率のよい仕組みのひとつです。その一方で、需要を上回る生産につながりやすく、売れ残りを生み出す一因にもなっています。
衣料ロスは、消費者だけ、企業だけの問題ではありません。安さや新しさを求める消費と、それに応える生産・販売の仕組みが影響し合って生まれています。
出典・参考文献:
[4]国連環境計画(UNEP)プレスリリース「Unsustainable fashion and textiles in focus for International Day of Zero Waste 2025」(2025年3月27日発表)
衣料ロスが環境や人に与える影響
服を一着つくるためには、原料だけでなく、水やエネルギー、染料、化学物質など、さまざまな資源が使われます。
例えば水の使用量をみてみると、日本国内に供給される衣類の生産には、原材料の調達から生産までを含め、年間約84億立方メートルもの水が使われると推計されています[5]。一着あたりでは約2,368リットル。一般的な家庭用浴槽を約200リットルとすると、およそ12杯分に相当します。
さらに、この水使用量のうち約92%は、コットンなどの原材料を調達する段階で発生しています。
十分に着られないまま服が捨てられることは、その服をつくるために使われた資源やエネルギーも、十分に生かされないまま失われることを意味します。
また、衣類を大量かつ低価格で供給するために、生産現場へしわ寄せが及ぶこともあります。
2013年にバングラデシュで起きたラナ・プラザ崩壊事故では、複数の縫製工場が入る建物が倒壊し、1,100人を超える人々が亡くなりました。
この事故をきっかけに、安価な衣類の背景にある労働環境や、安全管理の問題が世界的に注目されるようになりました。
出典・参考文献:
[5]環境省 サステナブルファッション事例資料「『ファッションと環境』調査結果」
捨てる代わりに古着として輸出すれば解決する?

日本を含む先進国で回収された古着の一部は、海外へ輸出されています。
古着として輸出される衣類は、現地で販売・修理・再利用され、多くの人の暮らしを支える一面もあります。一方で、安価な輸入品が地元の繊維産業との競争を難しくしたり、売れ残った衣類が廃棄物となって環境問題を引き起こしたりするケースもあります。
実際、南米、アフリカ、アジアの一部の国・地域では、海外から流入した大量の古着を処理しきれず、文字通りいくつもの「服の山」ができてしまっています。それにより廃棄物の増加や環境負荷、地域産業への影響が課題となっています。チリやガーナは、その代表的な事例として知られています。
古着輸出によって、廃棄された衣料を他国へ押し付けているだけになってしまっている側面もあり、「輸出すれば解決」と言えるほど単純な問題ではないのが現状です。
服から服へのリサイクルはわずか1%
衣料ロスを減らす方法の一つが、リサイクルです。日本では、手放された衣類の約17%が、ウエスや断熱材など、さまざまな用途に再資源化されています。
ただし、完全に別の製品へつくり替えるとなると、加工のためのエネルギーや資源がある程度必要で、一度別用途に使われたあと、さらにリサイクルすることが難しくなる場合もあります。
そこで重要になるのが、使い終えた服を再び服の原料として循環させる「服から服」へのリサイクルです。新たな原料への依存やエネルギーの消費を減らしながら、繊維を衣類として使い続けることができます。
しかし、服から新しい服へと再生される「水平リサイクル」は、現在、世界全体で1%未満にすぎません。[6]
大きな理由の一つが、衣類に使われている素材の複雑さです。
服には、綿やウール、ポリエステル、ナイロン、ポリウレタンなど、複数の素材を組み合わせた「混紡素材」が多く使われています。素材を組み合わせることで、伸縮性や速乾性、耐久性などを高められる一方、使用後にそれぞれの繊維を分離することが難しい現実があるのです。
出典・参考文献:
[6]エレン・マッカーサー財団「The trends and trailblazers creating a circular economy for fashion」(2024年3月18日公開)
衣料ロスを減らすためにできること
衣料ロスは、誰か一人の努力だけで解決できる問題ではありません。
服をつくる企業、販売する企業、服を選んで着る私たち、そして回収や再資源化を担う事業者。それぞれが役割を果たすことで、廃棄を前提としない循環型のファッションに近づいていきます。
企業ができること
必要な量だけを生産する
需要を見極めながら生産量を調整したり、受注販売や小ロット生産を取り入れたりすることで、売れ残りを減らすことができます。
■エシカルなものづくりを支えるアパレルOEM
Sunday Morning Factory
バングラデシュに自社縫製工場を構えるSunday Morning Factoryでは、オーガニックコットンやリサイクル素材などを取り入れたOEM生産を行っています。生地の手配からパターン・サンプル制作、本生産、検品、輸入まで一貫して対応。つくる人や環境にも配慮しながら、ブランドの想いをかたちにするものづくりを支えています。
サイト:https://sundaymorning-f.com/oem/
長く着られる服をつくる
流行だけに左右されないデザインや、耐久性の高い素材、修理しやすい設計など、一着を長く着られる工夫も衣料ロスの削減につながります。
着終えた後まで考えて設計する
リサイクルしやすい素材を選んだり、素材をできるだけ単純化したりするなど、服が役目を終えた後まで見据えたものづくりも重要です。
回収・再資源化の仕組みを整える
不要になった服を回収し、新たな資源として活用できる仕組みを整えることも、企業や業界に求められる役割です。
私たち一人ひとりにできること
いま持っている服を長く着る
新しい服を買う前に、まずは今ある服を大切に着続けることも立派なアクションです。
洗濯表示に合ったお手入れをしたり、ボタンやほつれを修理したりすることで、一着を着られる期間は長くなります。
本当に必要か考えてから購入する
「安いから」「流行しているから」ではなく、「長く着たいと思えるか」「手持ちの服と合わせられるか」といった視点で選ぶことで、不要な購入を減らせます。
長く使える品質の服を選ぶ
購入するときは価格だけでなく、素材や縫製、修理のしやすさなどにも目を向けてみましょう。長く使える一着を選ぶことは、結果的に衣料ロスの削減にもつながります。
古着として売る
古着を購入したり、フリーマーケットや回収サービスを利用したりすることで、一着の服をより多くの人で活用できます。
■ベビー・子ども用品専門リサイクルショップ
POST & POST
子どもの成長とともに、まだ十分に着られる状態でも次々とサイズアウトしていく子ども服。福岡を拠点とする子育て専門リユースショップ「POST&POST」は、子ども服やベビー用品などを買い取り、必要とする次の家族へとつなぐことで、子育ての中にリユースが当たり前にある社会を目指しています。現在では、年間約10万点の商品を再流通させています。
サイト:https://post-post.jp/
Instagram:https://www.instagram.com/post_and_post/?hl=ja
服がつくられた背景を知る
どんな素材が使われているのか、どこで、誰によってつくられたのか。価格やデザインだけでなく、企業のウェブサイトや商品表示からものづくりの背景を知ることで、服を選ぶときの基準は広がります。
そうした情報を開示する企業や、環境・人権に配慮したものづくりを選ぶことも、衣料ロスを生みにくい産業へ変えていくために、私たちができることの一つです。
衣料ロスについてもっと知りたい方は、RICE Mediaの動画や記事も参考になります。
■衣料ロスについて知ってみる
RICEメディア
RICE メディアは、「日本で最も面白く社会課題やSDGsを知れるメディア」をコンセプトに、衣料ロスや食品ロス、環境問題など、さまざまな社会課題をショート動画でわかりやすく発信しているメディアです。
思わず見たくなるユニークな切り口で届けることで、視聴者の約半数を若年層が占めるなど、これまで社会課題に馴染みのなかった人が知るきっかけも生み出しています。
サイト:https://rice-media.net/
Youtube:https://www.youtube.com/@RICEMEDIA
社会の仕組みを変えるという選択肢も
衣料ロスを減らすためには、企業や消費者の取り組みだけでなく、社会の仕組みそのものを変えていくことも欠かせません。
近年では、大量生産・大量廃棄に依存しないビジネスモデルや、資源が循環する仕組みを目指す取り組みも広がりつつあります。
もし「服を選ぶ」だけでなく、「社会を変える側」として課題解決に関わりたいと考えるなら、自ら事業を立ち上げたり、新しい仕組みづくりに挑戦したりすることも一つの方法です。
■社会起業のためのソーシャルビジネススクール
ボーダレスアカデミー
ボーダレスアカデミーでは、衣料ロスをはじめとするさまざまな社会課題をテーマに、ビジネスを通じて解決する方法を学び、自ら事業づくりに挑戦するプログラムを開催しています。社会課題を「誰かが解決してくれるもの」と考えるのではなく、自分自身が解決の一歩を踏み出す。その選択肢を知ることも、未来を変えるきっかけになるかもしれません。
サイト:https://academy.borderless-japan.com/
X:https://x.com/bls_academy
まとめ
衣料ロスは、服を大切に着るだけで解決できる問題ではありません。
必要な量だけを生産する企業、資源が循環する仕組みをつくる社会、そして背景を知って服を選ぶ私たち。それぞれの取り組みが重なることで、大量生産・大量廃棄に頼らないファッションへと近づいていきます。
一着を長く着ること。背景を知って選ぶこと。そして、ときには社会の仕組みを変える挑戦に加わること。
私たち一人ひとりの選択が、未来のファッションを少しずつ変えていく力になります。
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■「ボーダレス・ラジオ」を聴いて、ソーシャルビジネスに挑むボーダレスの日々の取り組みを知る
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