
「会社に突然、日系パラグアイ人がやってきた!」でご紹介した、パラグアイ人のサトウ・ヤマダ・シンゴ・ミゲルくんを、みなさん覚えておいででしょうか。
彼が来て、はや9ヶ月。人が良く面白い彼はすっかり人気者になり、今やAMOMA出荷チームの「キムタク」と呼ばれるまでになっています(だいたいの年代がわかってしまいますね!)。
そんな彼にもとうとう帰国の日が迫ってきました。「黙って帰るわけにはいかない。みんなに、ボーダレスで何を学んで、これからどうしていくのか、きちんと伝えたいんです。」と、3ページの原稿を送ってくれました。
ちょ、待てよ!と言いたくなる、かっこよすぎるキムタクの門出。「パラグアイの農業を、社会を変えたい」その熱い想いが、みなさんに届きますように。
ボーダレス・ジャパンに来るまで
ボーダレスに来るまでの僕は農業をやりながら、日々「しょうがない」という現実で生きてきました。人のことも、社会のことも、環境のことも。自分達が生きていくのに精一杯で、何もかも目の前のことしか見えないのが現状。
本当にこれしか道が無いのだろうか。もっと人が働きたくなるような仕事だとか、意義ある仕事に取り組むことや、環境のことを考えられる社会だとか。そういったことを求めるのは、皆が言うみたいに「キレイ事では食っていけない」ことなのか。
ボーレスが掲げる理念、「ソーシャルビジネスで、社会が困っていることを前提にビジネスをする。」
いやいや、これこそキレイ事ではないか。そんなかっこいいことを言っているけど、実際どうなんですか。
それが知りたくて、ボーダレスに来ました。
ボーダレス・ジャパンで見たもの
ボーダレスで見たものは、皆が高い理想とそれを実現するための行動を起こしていること。社会が困っていることを前提にビジネスをするというコンセプト故に、数えきれないハンデがある。
それを乗り越えるために必要なのは一流のプロフェッショナリズムであり、理想を追い求める高い志であると感じました。
自分がパラグアイで、「仕方ない」と諦めていた状況よりもずっとずっと難しい課題に挑戦している状況を見て、本当に勇気をもらいました。
やりたいことがあるなら、やるための努力をする。儲からないなら儲かる仕組みを作る。シンプルな考え方です。
高い理想をもって日々挑戦している組織は大きなエネルギーを生む。何かを成し遂げようと集まる人たちの中にいる時間はとても充実していて幸せでした。
もっとここにいたいという強い気持ちがある中で、パラグアイに帰ることを決めました。
パラグアイで「エシカルだから豊かになる」
エシカルとは、人、社会、環境の事を一番に考えて活動すること。そんな人間になるために、継続してリソースを生み出せるプロフェッショナルになる。
自分の家族に、自分の地元に、そしてこれから生まれてくる次の世代の人たちに残したい「エシカルでも、いやエシカルだから皆豊かに生きていける社会」を。
パラグアイの豊かな自然と広大な大地を使わせてもらっている者としての責任。それはこの地に住む人たちに 「世界中の誰よりも先に、安く、質の良い食材を提供する」ことだと思います。
「実家の農場を地元一、エシカルな農場にしたい」
まずは、目の前の、自分が生きている環境から始めないと、納得できないと思っています。
パラグアイの農村では、今なお、半自給自足の生活が続いています。食事は自分の小さな畑で取れる穀物と粗悪な炭水化物が中心です。
商店へ買い物にいけない主婦も多く、なにより肉や乳製品は高くて買えない。南米でも有数の酪農と農業国で他国へ輸出もしているのに、一番負担を背負っている農村部で食材のコストが一番高い。
人件費が安く、収入もない人たちにもっと食生活を充実してもらいたい。
ならば、地元の農場で地元の人たちのために、食材を作り定期的に届けるビジネスをしてはどうか。必需食材(肉、卵、牛乳、小麦粉等)をセットにし、どの商店よりも安い価格で毎週届けるサービス。
基本的に主婦達は現金をほとんど持っていないので、料金を上手く回収するための定期購入の仕組みを作れば負担も少なくすむはず。環境にも負荷の少ない農業を始めて、従業員の生活を少しでも良くすることにコストをかけ、ちゃんと利益を出す。
儲からないから社会貢献や環境の事を考えられない。化学肥料・農薬をやめられない、従業員の生活も改善できない。そこにビジネス感覚を取り入れ、地域で消費してもらうための農業をする。
そんな農場が存在することで少しでも、社会貢献や環境への意識を地元に、そして将来的にはこの土地に住む人全てに、広げて行けたらいいと思います。
「キレイゴト」を「当たり前ゴト」に
僕がやりたいこと。それは小さなインパクトかもしれないです。しかし、自分が今一番求めていることです。目の前の状況から変えて行きたい。
パラグアイの皆にもあきらめてほしくない 。やればできるはず。人、社会、環境の事を配慮しながらでも生きていける。エシカルであることが本当の豊かな社会の定義だと思います。
「そんなキレイゴト・・」を「当たり前ゴト」にするための、
農業ビジネスをこれから始めます。
Written by しんご