こんにちは!
世界の無国籍問題を解決するため、AI技術を用いたアノテーションサービスを運営している、アノサポ代表の河内将弘です。

昨年8月に会社を設立して、はや9ヶ月。
社会問題解決を仕事にすることは、本当に難しいことなんだと日々感じると同時に、この事業によって一人でも子どもが国籍を取得し、学校に通えるようになる景色を想像すると、この事業をやる意義ややりがいも感じています。

とは言っても数年前まで、実は起業したいとは微塵も思っていませんでした。
大学2年の夏、ボランティアで訪れたマレーシア。
そこで出会ったある男の子との出会いから、僕の人生は変わりました。

今回は、当時の出来事とともに、なぜ僕が「無国籍」について起業したか。きっかけと僕たちアノサポの想いについてお話します。

◇目次
1. 無国籍問題の解決を人生をかけて取り組みたい
2. 起業することが、無国籍問題解決の近道
3. 自信を持って、彼らを迎え入れたい

1. 無国籍問題の解決を人生をかけて取り組みたい

8歳の男の子に言われた言葉、『じゃあ今から仕事に行ってくるね』

今から約6年前、マレーシアの雑木林で偶然出会った8歳の男の子。
雑木林で暮らすその子の家族は不法移民であり、自分も不法移民(無国籍)である事。
警察官になりたいという夢はあるが、不法移民のため諦めている。
そんな話を聞いたあと、最後に言われたこの言葉が、僕の人生を変えました。

『じゃあ今から仕事に行ってくるね』

その後の事はよく覚えていません。
ただ覚えているのは、無力感に襲われ、ただただ涙を流すことしかできなかった感情くらい。
そしてこの翌日、彼らのために生きようと、この問題を解決できるのであれば、自分の残りの人生を捧げよう、と決心しました。

約420万人 ・・・これはUNHCRが公表している世界の無国籍者の推定の数
世界の5歳未満の4人に1人・・・これはUNICEFが公表した、今も発生している無国籍問題の現状

世界には、社会の複雑な仕組みが原因で人生の選択肢がない人たちがいます。
彼らの人生が少しでも良くなればいい。そのために僕は今、アノサポの事業に取り組んでいます。

アノサポ河内と少年

2. 起業することが、無国籍問題解決の近道

8歳の男の子に出会った翌日、僕はマレーシアに住むことを決めました。
それは海外に住みたいとか、そんな綺麗な理由ではなく、この複雑な不法移民(無国籍)問題の原因を突き止めて、解決したいからでした。

僕は帰国後すぐに親に頭を下げ、大学には1年間の休学届を提出し、すぐにマレーシアへ旅立ちました。
そのあとは学校に通っていない無国籍の子ども達のために、ボランティアの先生として勉強を教えると同時に、親達に会いに行き「なぜ不法移民としてマレーシアに滞在しているのか」「なぜ子どもが無国籍となってしまっているのか」と村の中で聞いて回りました。

その時聞こえてきた声は、
「フィリピンで仕事が得られず、家族で生活するお金もなく、マレーシアへ避難してきた」
ということ。

マレーシアには仕事がある。
ただ、避難してきたとはいえ、正規のルートで入国していない彼らは不法移民として扱われ、不法労働となっています。
また、子どもが産まれても不法移民のため行政に出生届を提出できず、結果子どもが無国籍となるという悪循環も起こっていました。

そしてそんな彼らが口を揃えて言っていたのは、
「子どものことを思うと、フィリピンに帰って学校に通わせてあげたい。」
「ただ帰っても仕事がないから、生きるためにはここにいるしかない」
という不条理な現実。

この社会問題を知ったとき、僕はフィリピンで彼らのために仕事をつくり、そして家族で一緒に帰国してもらうことが必要だと。
そしてそれを僕がやるしかないと覚悟しました。

この時、僕は起業家になることが決まりました。

アノサポ河内のボランティアの様子

3. 自信を持って、彼らを迎え入れたい

8歳の男の子に人生を変えられてしまった僕。

「警察官になるために、今学校で勉強を頑張っているんだ!」

他の人から見たら、なんて普通のことなんだろうと思われるかもしれないけれど、こんな言葉を子ども達が当たり前に言える社会を実現するために、昨年8月に起業しました。

起業はそんなに簡単ではありません。
創業5年の企業の生存確率は約40%。

だからこそ、起業してから1日たりとも事業のことを考えなかったことはありません。休みの日も一日中仕事のことを考えるし、本やネットで情報を仕入れては、どう事業に活かせるかをつい考えてしまいます。

苦手だった売上収支の数字分析や、難しい契約書に関する法務のやりとりもBUS(バックアップオフィス)のメンバーに手伝ってもらいながら、悪戦苦闘しながら理解するためにもがく毎日・・・。

そんな僕の日々は、他の人から見たら、なんて大変な生活なんだろうと思われるかもしれません。

それでも、この事業を通じて、彼らの母国フィリピンで、
笑顔になれる大人達がいて、国籍を取得し元気に学校に通える子ども達がひと家族でも多くなると信じているから。
だから続けていられるんだと思います。

現在マレーシアにて彼らの受け入れ拠点を準備しており、今年度中には3世帯の家族が帰国できる見込みです。
これからも無国籍問題解決に取り組むアノサポを、何卒よろしくお願いいたします。

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アノサポ 代表 河内将弘のメディア掲載情報

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▼SDGsジャーナル(2022年4月8日)
「無国籍問題」に終止符を!~その方法は「AI」にあり!?~