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アパレルの大量廃棄を減らすには? 人や環境に配慮した服が当たり前の社会をつくるEnter the E

こんにちは。Enter the E代表の植月です。

現在私は「人や環境に配慮した洋服だけを扱うエシカルファッションのセレクトショップ」の運営をオンライン中心に行っています。
無駄が出ないよう、注文を受けてから仕入を行う受注仕入でゆっくりじっくり待つスローファッションを提唱しています。

私自身はいまセレクトショップ事業をしていますが、国内での循環型ファッション実践の準備を進めています。
その理由は「アパレルの大量廃棄」の問題があるからです。今回はその問題の大きさや課題、原因、解決策についてお話しします。

アパレルの大量廃棄問題とは?

悲しいことにファッション産業は生産から廃棄の過程において「持続不可能」な状態が多数見られます。

その過程でおこる環境破壊や人権問題は未だ解決されていません。またこれは近年、急に発生したものではなく、SDGsの採択よりはるか前の90年代から進んでいたものです。そしておもな要因は、全世界で行われている衣類の大量生産・大量消費・大量廃棄です。

中でも生産時、加工時、消費後にでる廃棄は、日本だけではなく世界が直面している問題です。

ファッション業界の廃棄の現状

アパレル産業には大きく4つの廃棄があります。

1.原料生産時の廃棄

紡績や織編などの際に出る糸くず、生機、生地などで最近では集めて再度紡績するリサイクルヤーンなどもありますが、すべて再利用できているわけでありません。

2.縫製時の廃棄

縫製時には裁断されて残った木畠、残反、端切れなどがでます。洋服にする前に25-35%は無駄が出ており、ある調査によると世界で500万トンあると算出されています。

3.販売時の廃棄

販売時には、生産した量の半分あまりが捨てられるといわれています。日本では29億着生産して約半分の15億着が売れ残り、焼却または埋め立て処分されています。
生産量を2倍にする理由は、売り逃しによる機会ロスの低減と、安い価格を実現するために必要量以上を生産しコストを下げるためです。

4.使用後の廃棄

3番目の「販売時の廃棄」を含めて、世界で1年間に捨てられてしまう衣類の量は9,200万トン。着数にして約3,000億着が捨てられ、最終的に焼却・埋め立てされています。

2030年に世界人口が 85 億人となると、そのうちの 54 億人が中所得層のライフスタイルになることから、衣料の年間消費量は 2015 年の 6,200 万トンから、 2030 年には 1 億 200 万トンに上昇するといわれています。

それに合わせて、生産も13%増、廃棄に至っては現状の9,200万トンから1億3400万トンと今よりも45%も増加する傾向にあります。

各国の現状 -排気量とリサイクル率-

主な国での年間の廃棄量とリサイクル率をまとめました。
中国、アメリカ、日本、オーストラリア、それからEU、イギリスといった国を比較すると、アメリカで年間1,300万トン(世界の14%)、中国に至っては2,600万トン(なんと世界の30%の量)の廃棄があります。

特に、アメリカは1人あたりが1年間に捨てる洋服の量が39㎏、約130枚という計算になります。日本でも年間に1人当たり20着もの量を捨てていることになります。
リサイクル率も、ペットボトルや古紙に比較すると世界的にも圧倒的に低く12%程度です。

なぜ多い?アパレル大量廃棄の原因とは?

何故、廃棄が増えたのか?廃棄が増えた原因として大きく4つのことが挙げられます。

大量廃棄の原因1.ファストファッションの台頭による過剰な「トレンド サイクル」

ここ数年で急速にファッションのサイクルが短くなりました。華やかなファッション産業は毎年 2 年前から準備が行われ、トレンドカラー、トレンドテーマを設定し、 1 年半〜 1 年ほど前に素材の方向を決定し、それぞれのファッションブランドが 次回のコレクションを発表します。そして、このトレンドのサイクルは近年過剰になってきています。

たとえば各都市で行われているコレクションの回数は、20 年の間に年約 2 回だったところ が 5 回に増え、大手のファストファッションは年に 12 〜 16 回、多いところは年 24 回と 新商品を発表します。このサイクルはファッションの鮮度を強調させると同時に「流行遅れ」を生みます。

出展:Mckinsey Sustainability『Style that’s sustainable: A new fast-fashion formula』

大量廃棄の原因2.売れ残りを破棄する前提の大量生産

各ブランドは 1 枚当たりの単価を抑えるためや、売り逃しという損失を防ぐため、 必要量の 2 倍の生産をするのが主流となりました。しかし過剰発注を行うと、 過剰在庫を生じて、結果余らせてしまいます。

しかし倉庫コストよりも捨てる方が安くつくため、余ったら捨てるというサイクルができあがっているのです。その結果、 生産された服の半分が捨てられています。

作る側も低価格やトレンドのニーズに応えようとした結果かもしれませんが、その背景には様々な環境的な代償と人的な被害があるということです。

大量廃棄の原因3:価格重視のものづくり

ファストファッションの台頭で、アメリカでは被服費が 1950 年代には年収の10% だったのに対し、現在は3%まで低下しました。

日本でも「衣服 1 枚あたりの価格」が、1990 年の6,846 円から年々下落し、2019 年は3,202 円にまで下がりました。この数字には、安い服を重視してきた私たちの生活が表れているといえます。

世界中で同時多発的にファストファッションは広がり、私たちは流行の服を安い値段で買えるファストファッションに恩恵を受けてきました。

服の生産量は 20 年前より400% 多く、 1 人あたりが 1 年に購入する服も約 18 枚と増加の一途を辿っています。

服が安くなってきているなかで、化学繊維が使用されている服は品質も落ち長く持たないため、平均的な衣服は 7, 8 回しか着用されずに捨てられています。米国で毎年廃棄される衣類の量は 700 万トンから 1400 万トンに倍増し、日本でもわずか 5 年で22 億から33 億着に膨れ上がりました。

低価格の実現のために伴う環境コストは膨大で、地球規模の環境破壊を生み、人権問題は増え、劣悪な労働環境で月7,000円の賃金も払われない方もいます。行き過ぎた価格優先のものづくりが使い捨て社会をつくってしまったんだと思います。

出展:U.S. Bureau of Labor Statistics『100 Years of U.S. Consumer Spending』(2006)
『Consumer Expenditures』(2020) 総務省『家計調査』 環境庁『SUSTAINABLE FASHION』

大量廃棄の原因4:長くもたない合成繊維や再生不可能な原材料

価格やトレンドを優先するあまり 90年以降安い材料を使うことが普通になってきてしまいました。

合成繊維は、お洗濯のしやすさや、着ているときの機能性など私たちの暮らしを便利や快適さを与えてくれましたが、いわゆる混ぜ物をつかう繊維・アパレル部門の再生不可能な原材料の使用量は3億トンに達し、組成自体が長くもたないものが多く、2次流通でも売れない現状があります。

大量廃棄された服による環境破壊

世界中で最終的に売れない服はどこへ行くのか。
古着輸入国である、ガーナ、ナイジェリア、コートジボワール、ウガンダ、ケニアなどのアフリカ、またはチリなど南米です。

例えば有名なのはチリ北部のアタカマ砂漠で、北米を辿ってきた使い捨てファッションの衣類は2次流通でも質が悪いため売れ残り、最終着地となるチリの砂漠では違法投棄が問題になっています。

安い合成材料では分解するようには設計されておらず、地下水や周囲の土壌に有毒物質を放出する可能性があり有毒な墓地になっています。
月間およそ59,000トンの衣類が運ばれ、メタンとCO2を大気中に放出する可能性があります。

85%の人が古着を着用したことがあり、古着に対してポジティブな印象を抱いているアフリカでさえ、例えばガーナの「ファストファッションの山」といった恐ろしい現実が存在します。おもにガーナの古着輸入国はアメリカとイギリスですが、古着を受け取り、市場で転売されます。

ファストファッションは品質が非常に悪いため、再販価値がなく、埋め立て地に捨てられます。腐敗した服の山が積み重なって海に洗い流され、汚染を引き起こしています。

アパレルの大量廃棄の背景にある大量生産で苦しむ人々

大量廃棄の背景には、大量生産が存在します。大量生産は、製造工程で多くのエネルギーや水、資源が使用されることで大量なCO2を排出します。

さらに、様々な化学物質を使用する結果、環境汚染や生態系への影響、生産者の健康被害などさまざまな問題を引き起こしています。

また、大量生産を行う工場で徹底的なコストカットの追求により、劣悪な環境下での低賃金の労働を強いられている人々がいます。

この問題が浮き彫りになったのが、2013年バングラデシュで発生した「ラナプラザ崩壊事故」です。4300名以上の犠牲者を出した、ファッション業界最悪の事故でした。

このように、大量廃棄・大量生産によって、地球環境や発展途上国の多くの人々が苦しんでいる現状があります。

なぜ世界的にリサイクルが進まないのか?

洋服のリサイクル率は古紙などと比較しても圧倒的に低く12%にとどまっています。

大きな理由は、洋服に使われる素材にあります。回収される衣服の65%が2種類以上の繊維を含む混紡素材により作られています。

混紡素材をリサイクルする場合には、元の製品の品質には戻らず、品質低下を伴うカスケードリサイクルを行います。服をリサイクルしても服や繊維に戻ることはほとんどなく、服から服へのリサイクルは1%未満にとどまっています。

結果的に、リサイクルよりも捨てる方がコストがかからないため、大量廃棄につながっています。

服から服へのリサイクルを可能にする「TEN」プロジェクト発足

服のリサイクルの困難さから大量廃棄につながっているという問題を解決するために立ち上がったのが、Enter the Eが主催する「TEN」プロジェクトです。

このプロジェクトは、ラナプラザの崩壊事故から10年を迎える2023年、大量消費、大量生産以外の選択肢になる新しい10年後のファッションをつくるという目的で発足しました。

TENでは、リサイクルの妨げとなる混紡素材を使用しない「脱」混紡素材の洋服をつくり、服から服への「水平リサイクル」を実現します。

また、着古したTENのアイテムは、使用後回収されてリサイクルコットンとして再生し、新たなプロダクトに生まれ変わります。

他にも「10年使えるデザイン、耐久性」「着る人の骨格に合わせたパターンを展開」など大量消費、大量生産の逆を行く、次の10年の新しいファッションスタイルを創出します。

人や環境に配慮した服が当たり前の社会をつくるEnter the E

大量生産・大量廃棄の根本的な原因は、効率の追求にあります。ビジネスにおける利益を追い求めるために、徹底的に効率を追求した結果、大量生産・大量廃棄が行われ、人々や地球環境といった最も大切なものが蔑ろにされています。

こういった現状を変えていくために、立ち上げたのがEnter the Eというアパレル事業です。

人や環境に配慮した洋服だけを集めたセレクトショップ

人や環境に配慮しながらもデザイン・品質・経済性を兼ねた35のエシカルブランドをセレクトし、EC販売しています。

サステナブルな素材やトレーサビリティ、ブランドファウンダーの熱い思い、フェアなどレクとの基準を明確に示し、納得感のある選択ができるようにしています。

また、日本の人々に合った商品やテイスト、価格帯の服を取り揃えることで、これまで関心があったけれど選択のハードルが高いと感じていた人にも選びやすくしています。

スローファッションの提唱

商品はその場で購入できるものと、受注を受けてから仕入れをする受注商品で構成しています。在庫をもたないアパレル事業で衣類ロスに取り組んでいます。

Youtubeライブで、ブランドや洋服がもつ物語、素材へのこだわり、エシカルなポイントなどをご紹介するオンライン受注会も行っています。

アパレルの大量廃棄・大量生産の問題を解決するためにできること

「人や環境に配慮したエシカルな洋服を身に着けたい」という思いはあっても、全ての服をエシカルなものにすることは、難しいと思います。

そこで、私たちは「10着のうち1着でもエシカルなものに」という提案を行っています。

1着でもエシカルな服を着ることで、誰がどんな想いでつくったものなのか、それぞれの洋服たちが作られた背景や想いを知ってひとつひとつの物語に思いを馳せることができます。

そうして、洋服にスローに丁寧に向き合う人が増えていくことが、大量廃棄・大量生産の問題解決につながっていきます

社会問題を解決するための第一歩を踏み出しませんか?

ボーダレス・カンパニオでは、様々な社会問題の解決に向けた「第一歩」になるようなステップを準備しています。

人や環境に配慮したサステイナブルなものを暮らしに取り入れる「個人向けサービス
ソーシャルビジネスを深く知る 書籍「9割の社会問題はビジネスで解決できる
社会起業家をみんなで応援する仕組み「アライになる

ぜひご自分にあったステップを見つけて、第一歩を踏み出してみてください。

社会問題をビジネスで解決する仲間を募集しています

社会起業家

ボーダレス・カンパニオでは、社会問題をビジネスで解決したい人を募集しています。難民の問題や貧困、差別偏見、環境問題など、あなたが解決したい問題を解決する事業をビジネスで解決していきませんか?

ソーシャルビジネスで社会問題を解決し、社会変革を起こそうとする仲間を待っています。

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