今回取り上げるのは、生理用品です。日本語には、生理と月経という二つの言葉がありますが、生理は月経の婉曲表現とのことなので、ここでは「生理」に統一します。

世界中で忌み嫌われる生理

生理周期は、hCGやエストロゲンといわれる女性ホルモンの急激な変動を伴い、PMSや更年期障害などにも関与するといわれ、女性の体調に大きく関与します。

生理は出血を伴うため、世界各地で忌み嫌われる傾向にあります。伝統や習慣が比較的強く残っているアジア・アフリカの農村部などでは、生理期間の女性は料理を作れない/他の人に触れることができないなどのタブーや、ひどい場合は山奥に隔離されるという慣習がある地域もあるほどです。

日本においても、生理用品のCMはあれども、生理が話題になることはほとんどありません。また、購入した際は中身が見えないような袋に入れられ、家でも目に付くところにおかれることはまずないのではないでしょうか。

ナプキンおじさん03

生理による損失

今回は、これらの慣習の良し悪しはおいておくとして、日本ではたいていの人が生理用ナプキンなどを購入し、時期に合わせて使用することができます。

しかし、インドなどの発展途上国では状況が異なります。インドでは、生理のある女性の90%、3億人以上が清潔な生理用ナプキンを使用することができず、ぼろ布やひどい場合は葉っぱや泥を利用して凌いでいるといわれています。

これでは不衛生で、深刻な感染症などの原因になりうるとともに、そのようなものを装着する不快感、また経血が漏れ、衣服を汚すなど機能性にも大きな問題が生じます。

生理は、ケニアでは学齢期の女子が学校を休む理由の20%を占めるとも言われているなど、仕事や学業に大きな影響を与えます。これが毎月あると考えると、生理用品が使えないことによって女性が被る損失は少なくありません。

ナプキンおじさん

なぜ生理用のナプキンが手に入らないのでしょうか?その理由はシンプルで、高いためです。特に農村部は輸送コストもかさむために割高になってしまいます。ナプキンを買うことで、食事を抜くなどの犠牲が伴います。

インドのArunachalam Muruganantham(アルナシャラム・ムルガナンサム)氏は、妻が生理用ナプキンではなくぼろ布を使っていることに気づきました。

ナプキンを買って、解体してみるとそこにはコットンがあるだけ。それなのに子どものミルク代と同じくらいの値付けがなされている。ここからムルガナンサム氏の研究がスタートしました。

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ムルガナンサム氏、JAYAASHREE INDUSTRIESのホームページより引用

不屈の魂

ムルガナンサム氏は、生理用ナプキンに適した素材を発見するまでに2年4ヶ月を費やしました。その間、タブーともいえる生理に男性が真っ向から突っ込んでいくということで、協力者はなかなか現れず、妻には逃げられ、村からは危険人物と見られるなど、さまざまな苦労をしています。

そして苦労の末に、ムルガナンサム氏は、自ら開発したナプキンの量産体制を確立します。

各村に製造工場を作る

ムルガナンサム氏の確立した体制では、各村に製造機械がおかれます。製造機械自体は75,000ルピー(約135,000円)で、組み立て式です。
村では、女性自助組織が運営し、女性の雇用が生まれます。また生産されたナプキンは、ローカルな市場で格安にて販売され、購入されていきます。

このように、各村に小さな工場をいくつも作る利点は、大規模な工場を1か所作るよりもコストカットが可能になる点です。それは主に輸送費です。ナプキンはかさばるため、輸送費が高くつきます。また1か所での大規模な生産であれば、ナプキンが届かない地域が出てきます。ローカルに生産・消費することで確実に流通させられる上に、コストを下げることが可能になります。

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ムルガナンサム氏の所有する工場、JAYAASHREE INDUSTRIESのホームページより引用

教育も兼ねる

ローカルで完結した循環を形成する利点はもう一つあります。それは、「教育」です。地方では教育が不十分で、伝統的なタブーなども根強いため、生理に関する誤った認識が広がっていることもあります。さらに、生理用ナプキンに関して使ったことがない、また存在すら知らない地域も多くあります。女性自助組織に任せることで、販売の際に生理に関する知識の啓発や正しい使い方を教えることができます。

その地域にとって新しいものを導入していく際には、教育も必須になってきます。それを販売時に一緒にできてしまう点で、コストを抑えられますね。

女性の、女性による、女性のためのビジネス

ムルガナンサム氏の目指すは、100%の女性が衛生的な状況で生理期間を過ごせることです。

現在では、Jayaashree Industriesを設立し、インドの27州で1,300台以上の機械が稼働しています。3,000人以上の地方に住む女性の雇用が創出されるとともに、350万人の女性へナプキンを届けることができるようになったとされています。

またインドにとどまらず、同様に生理に関する問題を抱えているアジア・アフリカ諸国など7か国にも進出をしています。

生理用品をきちんと使えるようになることで、学校や仕事を休まずに済み、また生産性も向上します。さらに、各村に女性の雇用を創出できるという点で、「女性の、女性による、女性のための」ビジネスであるといえます。