こんにちは、JOGGO久米川工場長のいちかです。

JOGGOの国内工場が始まって、約半年が経ちました。

JOGGOでは、精神疾患のあるメンバーと一緒に工場を立ち上げていく中で、精神保健福祉士の石井和子さんにご協力いただき、仕事や生活面での面談をしていただいています。

石井さんから見たJOGGOの工場のこと、メンバーのことを今回から数回に渡って紹介していただきたいと思います。工場で働く彼らから学んだことや感じたことを少しずつ発信して、同じ疾患を持つ方やサポートしている方の参考になればと思います。

それでは石井さん、よろしくお願いいたします!

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JOGGOの人事アドバイザー(精神保健福祉士)の石井です。

私は、10年間医療機関で就労支援をしてきた経験を活かして、週に1回、久米川工場で障害を持った職人の皆さんの相談を受けたり、採用面接に同席したりしています
 
久米川工場が稼働して約半年が経ちます。半年前に採用された精神疾患をもった職人4人もパートから正社員になり、次の職人候補2名が入ってきました。最近、職人4人を見て、相談の仕方がうまくなってきたなぁと思います。

精神保健福祉士の前で患者になっていた職人


(工場作業風景。はじめは「仕事」で悩めないメンバーがほとんどでした。)

半年前、彼らは8倍以上の応募者の中から選ばれ、採用されました。障害は持っているけれど健常者と同じように働きたいという熱い想いと、そのために自分の病気をよく知り、対処を考えられると思われる4人でした。

しかし、工場が稼働を始め、精神保健福祉士の私が出勤すると、「睡眠がうまく取れないんです」「不安の気持ちが浮き出てくるのをどうしたらいいのでしょう」と、職人の皆さんの表情が面接の時と違っていました。

精神保健福祉士という専門職が出勤してきた時にしかできない相談をしているのかもしれませんが、本当に必要で相談・質問しているのか、聞いていてモヤモヤしていました。

病気を持っている人が普段は普通に生活しているのに、病院にいった時だけ患者の顔になる、それと似た感じを受けました。この職業の人にはこういった話をするものと無意識に思っているのかもしれないと思ったり、週に1回しか来ない私に気を遣って、私が話しやすい話を振ってくれているのかも…と思ったりしましたが、いずれにしても、それはいい傾向ではないと思っていました。

職人として技術を身に着ける・・・それも、健常者に見劣りしない職人を目指している段階で、障害者に戻る瞬間を作っている気がしていました。

一方で、本当は何かに困っているはずなのになかなか相談をしてくれないメンバーもいました。困ってもなかなか人に打ち明けられない、人に弱みを見せられない人です。

JOGGOに精神保健福祉士がいる意味

JOGGOになぜ精神保健福祉士の私がいるのか?――私は、職人の皆さんが前を向いて歩くためだと思っています。

私がいない日は病気のことを考えない(考えていたとしてもそんなに大きく捉えていない)のに、私が出勤すると病気を持っていることを思い出させるようではいけないと思っています。

「精神保健福祉士が来ているから何か相談することはないか」と困りごとを探すようになってしまうのはいけない。1週間に1回しか会えないから慎重になるのはわかるのだけれど・・・。

私のいない普段の日から症状や障害について気になっていること(仕事に支障が出ているなら尚更)を、私が出勤している日に解決するために使ってほしい。私がいない日に自分なりに対処してみたけれどうまくいかなかった、もしくはこれでいいのか迷っている、それを考えるお手伝いが私の仕事なのかなと思っています。

週1回という回数も本人が自分で考える時間が持てるちょうどいい回数だと思っています。精神障害の専門家が週1回しかいないと、不安がる応募者さんや支援機関さんもありますが、解決は自分が主体です。

本当に専門家が判断しなければいけないような緊急な事態であれば、高橋さんも市川さんも、勤務日でなくても私に連絡してくると思いますし。

あと、一人で抱え込んで自分でどうにかしよう・・・と無駄に長い時間かけて悩むんだったら、多くの患者さんの経験のデータを持っている人間に相談して早めに解決策を見つけ、本来時間を費やすべきことに専念する・・・そのために私を利用すればいい。

私は、私自身を職人の皆さんが夢を実現するためのツールの一つだと思っています

真剣だけど深刻にはならない


(工場で初めての出荷の写真!心を込めて作りました。)

ところで、私と面談をした職人は初め肩透かしを食らった気分になったと思います。時には「それって、敢えて解決しなくてもいいのでは?」とか、ひどい時には「あなた、悩むのが好きでしょ?」とか、こっちはまじめに相談しているのにぃ~・・・と思うような反応。

どうしても人は困ったことを解決しようと思いがちですが、全てを解決しなければ前に進めないわけではないのです。高い険しい壁が目の前に立ちはだかっている時、周囲を見渡したらすぐ近くに回り道があることがある。直線距離では壁を登ったほうが近くても、回り道のほうが早くてその方がいいこともあるのです。

常に、何のための相談なのかを考えて、話は真剣に聞いていても、相談者と一緒に深刻になって一緒に煮詰まるのではなく、一緒に前に進める方法を探せるよう、1つか2つは視野の全く違うアドバイスができるよう心がけてきました

あまりに突飛すぎるアドバイスに職人さんが面食らっているということもありますが・・・。

前に進むための面談

現在、彼らは私が作業をしているそばに寄っていっても『無理に』疾患の話になるということはありません。作業を見ている私に「これが○○で難しくて…」と作業の話をしてくれます。そして本当に必要な時に「面談してくれますか?」と声をかけてくれます。

以前は、面談をすることで患者に戻っていた人も、上手に人に頼れず一人抱えがちだった人も、前に進むためにうまく私を使えるようになって来たかな、と思います。まだまだうまくいかない日もありますけど、それも成長には必要な一過程ですね。

(JOGGO人事アドバイザー/精神保健福祉士 石井)

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