世界中では、25億人が安全な衛生状態にないといわれています。ケニアPeepoopleでご紹介したように、国や地域によってはフランス革命前後のヨーロッパよろしく排泄物がそこら中に落ちている、飛び交っている地域も少なくありません。

またIkotoiletでも紹介しましたように、年間では80万人近くの5歳以下の幼児が下痢で死亡しています。

発展途上国の多くの地域では、このような汚物・汚泥の類は回収されても近くの川や砂浜、海に垂れ流されてしまいます。この汚物が下痢や蚊・蠅など害虫の発生する原因となり、人々の健康を脅かしています。

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Janicki Bioenergy社ホームページより。

一石三鳥の汚物処理施設

今回ご紹介するのは、この排泄物を処理し、水と電気を作り出す“Omniprocessor”です。浄水は本当に飲むことができるレベルまで浄化されています。排泄物の処理と、水、さらに発電でまさに一石三鳥の処理装置ですね。

これを開発したのは、アメリカに本部をおくJanicki Bioenergy社です。慈善事業に力を入れているBill & Melinda財団の支援を受け、Omniprocessorを開発しました。

プロセス

運び込まれた人糞や汚泥は、まず乾燥され、水分と固形物が分離されます。そして水蒸気は高温・高圧状態に保たれ、タービンを回して発電を行います。固形物も高温で熱せられることで電気を作り出し、Omniprocessorの稼働に利用されています。水蒸気は処理されて冷却され、水となります。

初めに高温高圧の水蒸気状にするため、病原体はすべて取り除かれます。それに加えてフィルターなどを通すことでWHOなどの基準で安全と判断されるレベルに浄化されます。

しかも、そのスピードは水の浄化は排泄物を入れてから数分程度です。

固形物は灰となり、肥料などにも転用が可能です。そして得られた電気や浄水、また灰を販売することで、継続性を持ったビジネスモデルにもなります。このOmniprocessorは、ビル・ゲイツ氏が実際に飲むというパフォーマンスも話題となっていました。

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Janicki Bioenergy社ホームページより。

処理能力

現在、Omniprocessorは西アフリカの国、セネガルの首都ダカールに本格的な導入を行う計画が進んでいます。そちらでは排泄物以外のバイオマスも利用が可能で、処理能力は92.3㎥、86,000Lの水、最大250kWの発電量を誇っています。これは10万人分の下水に匹敵するといわれています。

しばらくはJanicki Bioenergyのエンジニアが管理などを行いますが、いずれは地元の起業家へと売却される予定だそうです。

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Janicki Bioenergy社ホームページより。

無価値なものを価値のあるものへ

バングラデシュのEBIも、使うものは牛糞で、発電をする点でよく似た例だといえます。

これらのビジネスが優れているのは、汚物を処理して飲み水を作り出すことができるというだけでなく、汚く無価値な排泄物を、電気や水などの価値のあるものへ変えることができる点です。ビル・ゲイツは氏自身のブログで、これを"one man’s trash is another man’s treasure."(捨てる神あれば、拾う神あり)と表現しています。

途上国では、排泄物などを収集する仕組みが不十分なところが多いため、それを収集するシステムを整える必要があります。また現地の起業家に買い手がいるのか、売却後の維持管理はどうするのかなどの課題が残っています。しかし、Bill & Melinda財団では長い目で支援をしていく予定だということです。