先日紹介した、Uncharted Playは、遊びを通じて社会問題の解決を目指しており、蹴ることで発電できるサッカーボール”SOCCKET”や、跳んで発電できる縄跳び”PULSE”などを開発しています。

このように一見すると発電には全く関係のなさそうな人間の活動を通じて、エネルギーを取り出し発電するという形は少しずつ増えてきています。

西アフリカのギニア湾沿岸に位置し、かつてはゴールドコーストとも呼ばれたガーナ。近年は油田の開発なども進み、経済も成長を続けています。しかし農村部は他のアフリカ諸国同様にインフラが脆弱で、電力化も進んでいません。

電力と教育格差

ガーナの農村部の子どもは、朝学校に行き、放課後は家の手伝いをします。そして自由な時間ができるのは日没後です。しかし日が沈んでしまうと、明かりとなるものは頼りない石油ランプやバッテリーなどで、勉強をするのは難しい状況です。

先生たちもこのことは知っているので、宿題を出すこともあまりありません。その先生たちは電気のない農村部にはとどまりたがらず、人材も不足しがちです。

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こうして都市部との間で学習の到達度に差が生じ、高等教育に進む際などに不利となります。電力不足は教育格差にもつながります。このような構図は、他の途上国にも普遍的にみられることです。

遊ぶことの重要性

さらには、子どもたちはあまり遊ぶ時間も、場所もありません。農村部では、仮に援助団体の支援があってもインフラなどが優先され、遊具を設置することはほとんどありません。

一方で、遊ぶことは子どもの成長・発達には欠かすことができないとされています。そこで出てきたものが、電力のニーズと遊びを融合させた「発電もできるメリーゴーランド」です。

発電できるメリーゴーランド

このメリーゴーランドは、アメリカの企業Empower Playgrounds Inc.が開発し、ガーナへと導入を進めています。

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Empower Playgrounds Inc.のホームページより引用

発電方法は”SOCCKET”と同様にいたってシンプルで、メリーゴーランドに乗って遊ぶ(遊具を回す)時に生じる力で発電され、バッテリーへと充電されます。一つのバッテリーで12以上のLEDランタンが充電可能です。

LEDはパートナー企業が開発し、充電なしで40時間もちます。1日5時間使うとしても、一週間以上充電が不要になります。

ランタン以外の充電も

ガーナでは、安定的に電気を得ることができない公立小学校が実に1万を超えるといわれています。

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Empower Playgrounds Inc.のホームページより引用

メリーゴーランドで生まれたエネルギーは、バッテリーに充電されるのでランタン以外、パソコンや携帯電話など、学校として必要な備品にも使用可能です。そのためメリーゴーランドは学校設備の充実にも貢献が可能です。

Empower Playgrounds Inc.は現在、40の小学校にメリーゴーランドを設置しており、他にもソーラーパネルの設置など、学校設備や児童の学習効率の改善に努めています。

イメージを覆す

発電、と聞くとやはり石油や原子力などを使い、大規模な施設で膨大なエネルギーを使って生み出すイメージがあるのではないでしょうか?
しかし、SALtGravity LightSOCCKETなどで見てきたように、ランプ一つや家1世帯などの小さな規模であれば、化石燃料や自然のエネルギーに頼らなくても、何か物が動くときなどに生じるエネルギーをうまく利用することで十分に賄うことができます。

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Empower Playgrounds Inc.のホームページより引用

このようなイメージを覆し、ややもすれば見落としがちなところに目を付けることこそ、環境問題の改善には必要なことなのかもしれません。