
近年、ジェンダー平等や貧困問題と関連し話題となっている「生理」の問題。今でこそ、メディアを通じて報じられることが多くなりましたが、世界各地ではいまだに生理を忌み嫌う習慣が根強く残っています。
生理の問題を解決するために立ち上がったのが、映画「パッドマン」のモデルとなったArunachalam Muruganantham(アルナシャラム・ムルガナンサム)氏です。
世界中で忌み嫌われる生理
生理は出血を伴うため、世界各地で忌み嫌われる傾向にあります。伝統や習慣が比較的強く残っているアジア・アフリカの農村部などでは、生理期間の女性は料理を作れない/他の人に触れることができないなどのタブーや、ひどい場合は山奥に隔離されるという慣習がある地域もあるほどです。
日本においても、生理用品のCMはあるものの購入した際は中身が見えないような袋に入れられ、家でも目に付くところにおかれることはありません。このように、生理は世界中で習慣的にタブー視されてきました。
生理による損失
日本でも、近年貧困や虐待など様々な原因からナプキンを買うことができない「生理の貧困」が問題視されています。生理の貧困を解決するため、動き始めている自治体も存在します。
また、発展途上国では、生理用品普及率が数%の国もあり、古い布やひどい場合は葉っぱなどを利用して凌いでいるといわれています。こうした手段は、不衛生で、深刻な感染症などの原因になりうるとともに、装着する不快感、また経血が漏れ、衣服を汚すなど機能性にも大きな問題が生じます。
ケニアでは、生理が学齢期の女子が学校を休む理由の20%を占めるとも言われているなど、仕事や学業に大きな影響を与えます。これが毎月あると考えると、生理用品が使えないことによって女性が被る損失は少なくありません。
インドの生理用品に革命をもたらしたナプキンおじさん
生理用ナプキンが手に入らない理由は、価格が高いからです。特に農村部は輸送コストもかさむために割高になり、ナプキンを買うために、食事を抜くなどの犠牲が伴うこともあります。
ムルガナンサム氏は、妻が生理用ナプキンではなく、ぼろ布を使っていることに気づきました。
ナプキンを買って、解体してみるとそこにはコットンがあるだけ。それなのに子どものミルク代と同じくらいの値付けがなされている。ここからムルガナンサム氏の研究がスタートしました。
ムルガナンサム氏、JAYAASHREE INDUSTRIESのホームページより引用
不屈の魂で生理用ナプキンを開発
ムルガナンサム氏は、生理用ナプキンに適した素材を発見するまでに2年4ヶ月を費やしました。その間、タブーともいえる生理に男性が真っ向から突っ込んでいくということで、協力者はなかなか現れず、妻には逃げられ、村からは危険人物と見られるなど、さまざまな苦労をしています。
そして苦労の末に、ムルガナンサム氏は、自ら開発したナプキンの量産体制を確立します。
インドの各村に製造工場を作る
ムルガナンサム氏の確立した体制では、各村に製造機械がおかれます。製造機械自体は75,000ルピー(約135,000円)で、組み立て式です。
村では、女性自助組織が運営し、女性の雇用が生まれます。また生産されたナプキンは、ローカルな市場で格安にて販売され、購入されていきます。
このように、各村に小さな工場をいくつも作る利点は、大規模な工場を1か所作るよりも輸送費をコストカットできる点です。
また1か所での大規模な生産であれば、ナプキンが届かない地域が出てきます。ローカルに生産・消費することで確実に流通させられる上に、コストを下げることが可能になります。
ムルガナンサム氏の所有する工場、JAYAASHREE INDUSTRIESのホームページより引用
ローカルで完結した循環を形成する利点はもう一つあります。それは、「教育」です。
地方では教育が不十分で、伝統的なタブーなども根強いため、生理への誤った認識が広がっていることもあります。さらに、生理用ナプキンを使ったことがない、また存在すら知らない地域も多くあります。
女性自助組織に任せることで、販売の際に生理に関する知識の啓発や正しい使い方を教えることができます。
その地域にとって、新しいものを導入していく際には、教育も必須になってきます。生理用品の販売時に、生理の教育が一緒にできることで正しい理解とコストの削減につながります。
女性の、女性による、女性のためのビジネス
ムルガナンサム氏の目指すは、100%の女性が衛生的な状況で生理期間を過ごせることです。
現在では、Jayaashree Industriesを設立し、インドの27州で1,300台以上の機械が稼働しています。3,000人以上の地方に住む女性の雇用が創出されるとともに、350万人の女性へナプキンを届けることができるようになったとされています。
またインドにとどまらず、同様に生理に関する問題を抱えているアジア・アフリカ諸国など7か国にも進出をしています。
生理用品をきちんと使えるようになることで、学校や仕事を休まずに済み、また生産性も向上します。さらに、各村に女性の雇用を創出できるという点で、「女性の、女性による、女性のための」ビジネスであるといえます。
タンザニアのシングルマザーを救う生理用品事業「LUNA sanitary products」
生理の教育と同様に、発展途上国では性教育が行き届いていない地域が多いのが現状です、
タンザニアでは、性教育が浸透していないがゆえに、避妊の方法が分からず若年妊娠に至ってしまう女の子が多く存在します。タンザニアでは、妊娠により強制退学させられる制度があり、妊娠した女の子たちは教育の機会が奪われてしまいます。
また、予期せぬ妊娠でも法律で中絶が認められず、学生を妊娠させた男性は懲役30年という重い罰があるため逃げてしまい、シングルマザーになるケースがほとんどです。
そうして、貧困状態に置かれたシングルマザーを雇用し生理用品を製造する事業がLUNA sanitary productsです。インドの例と同様に、生理用品の製造だけでなく、生理や性教育の機会も提供することで、啓発にも取り組んでいます。
LUNA sanitary productsについて、詳しくはこちら。
「生理の貧困問題を解決したい」というあなたの思いを形に。
ボーダレスグループは、社会問題を解決するソーシャルビジネスしかやらない会社です。貧困、差別偏見、環境問題など、あなたが解決したい問題を解決する事業を、立ち上げてみませんか?
ボーダレス・ジャパンでは、ソーシャルビジネスで社会問題を解決し、社会変革を起こそうとする仲間を募集しています。
▶社会起業家としてソーシャルビジネスを立ち上げたい方→社会起業家募集
▶自分のプロフェッショナル領域を活かして社会問題に取り組みたい方→採用情報
▶ソーシャルビジネスで社会問題に取り組みたい新卒の方→新卒で新規事業立ち上げ