今回はソーシャルプロダクト特集第3弾として、身近なものを使って発電するアイデアをご紹介します。
優れたデザインやビジネスのアイデアは、大企業が編み出すよりも、地元の環境や、ビジネスの対象をよく知った、ローカルな人々の中から生まれてくることの方が多いのかもしれません。

インド発のエネルギー利用

今回ご紹介するのは、インドです。そのインドの農村部でも、85%もの人が近代的なエネルギーを利用できないといわれています。

またインドといえば熱帯で、年中暑いイメージを持つ人も多いかもしれませんが、北部はヒマラヤ山脈に連なる、緑豊かな、美しい丘陵地帯が広がっています。

インドの松葉で発電01

インド北部に住むジェイン夫妻の家の周りにも、美しい松林が広がっていました。
夫妻の悩みは、落ちた松葉が引き起こす毎年の山火事でした。電気も通っていない農村地域のため、自家発電用にソーラーパネルを設置しましたが、山火事に遭うせっかくのパネルがだめになってしまいます。

このように、山火事は、落雷や落葉による摩擦・発酵が原因となって起こる自然現象でもあります。山火事はすぐに燃え広がるため大規模化し、消火も難しいため、周辺の住民の住居や生活に対する重大な脅威の一つです。

インドの松葉で発電02

松葉を利用する

そこで夫妻が思いついたのが、松葉を利用した発電方法です。松からは松脂が取れるように、樹脂を多く含みます。また、松明の原料としても利用されてきたように、燃えやすい素材として知られています。

夫妻は、松葉を燃やして生じるエネルギーで発電することで、100キロワット、20世帯を照らすのには十分な電気が確保できることに気づきました。

そこで、落ちた松葉を村人に集めてもらい、買い取ります。買い取ったものを原料として発電します。こうすることで、松葉を拾った村人にも収入をもたらすことができます。また電気によって仕事の効率は飛躍的に向上します。地域特産の絹織物の生産は、機械化することで生産量が向上し、現在では15人の生活を支えているようです。

インドの松葉で発電03
国連広報センター(https://www.facebook.com/UN.Japan/videos/878615162216326/)より引用

更に、落ちた松葉を回収することは、山火事のリスクも防ぐことになりますし、燃料費がゼロなので電力の生産コストも低く抑えることができます。

松葉はどのくらい集まるのか、発電量はどのくらいか、そもそもインドのどこなのか、など不明な情報も多いですが、普通の村人の気づきが村に小さなイノベーションをもたらしたいい事例ではないでしょうか。

小さなイノベーションを重ねる

社会問題を考えるとき、私たちはいかに社会的インパクトを大きくするかということに目が行きがちです。しかし、このジェイン夫妻のような小規模な技術革新こそ、地元の住民のニーズに密着しており、生活を改善させるのに必要なものだといえます。

電力と貧困

世界銀行の推計では、世界全体で15億人が電気のない生活をしており、25億人が伝統的なバイオマス燃料(薪、炭、牛糞)を使用しているとされています。電気のない生活は生産性を下げる原因となり、また伝統的なバイオマス燃料の煤煙は呼吸器系などの健康被害を引き起こす原因になります。総じて近代的なエネルギーを利用できないことは、貧困の状態を悪化させる可能性があるといえます。

インドの松葉で発電04

また、サブサハラアフリカ地域では、電力不足のコストがGDPの2%にも及ぶといわれています。2009年時点では6億人弱が電力を利用できないといわれていますが、2030年にはその数が7億人に増加する可能性があると推計されています。

各地の取り組み

電力不足を解決するための取り組みは世界各地で行われており、ソーシャルビジネス総合研究所でも紹介してきました。バングラデシュのEBIは家畜の糞を使った発電方法を実用化していますし、フィリピンのSALtは海水をエネルギーとしたランプを開発しています。またブラジルのTSSFAはソーラー発電のレンタルという方法を考案しました。

世界では、今回の例のような小さなイノベーションが今日も起きているかもしれません。ソーシャルビジネス総合研究所では、このような小さな取り組みもどんどん紹介していきます。