
今回取り上げる国は、ザンビアです。ザンビアはタンザニアとコンゴ民主共和国の南に位置します。ザンビア南部、ジンバブエとの国境には、世界三大瀑布であるヴィクトリア滝が有名ですね。
ザンビアは隣国ボツワナと並んで手つかずの自然が多く、アフリカの中でも平和な国といわれています。銅の一大生産地帯カッパーベルトに位置していますが、経済的には銅の輸出に依存するモノカルチャー的な構造でもあるといわれ、最貧国に位置づけられています。
蜂蜜をとる
そんなザンビアで蜂蜜を生産しているのが、Bee Sweet Ltd,です。農家と協力して100%オーガニックの蜂蜜を栽培し、イギリスの小売などを行っています。2014年には、いい味のブランドとして表彰を受けているようです。
蜂蜜はどこでも作れる
蜂蜜は、砂糖の代わりの甘味料としても使え、お酒にもなり、美容・健康にもよいとされているなど、用途の幅が広い商品です。さらに蜂蜜は、極端にいえば蜂と花があればほぼ世界中どこでも収穫が可能です。
こういう点で、蜂蜜は非常に優れた商材です。それではBee Sweetはどのようなビジネスを展開しようとしているのでしょうか?
農家との契約
農家と契約する際、まず地域の長と交渉し、巣箱を置くことに同意をもらいます。その際に、長の家に5箱を置き、収穫の10%を渡すという条件付きです。養蜂を行う地域は、農薬や化学肥料を使う地域などを避けながら選定されます。
そして許可がもらえると、地域から1人アドバイザーを選出してもらいます。アドバイザーはBee Sweet本社で数週間研修を受け、巣箱の作り方や管理の仕方、置く場所の選び方などを学びます。このアドバイザーの報酬は固定給ではなく、出来高制で、回収した巣箱の数やできた蜂蜜の量によります。
そして巣箱を置く農家たちは、巣箱を「置き」ます。世話をし、収穫するのではなく、文字通りただ「置く」だけ、盗まれないように管理するだけです。
蜂蜜がとれるまで
まずは5つの巣箱を、20~30フィート(1メートル弱)の高さにつるします。エサを置いておくことで、自然と蜂が集まってくる仕組みです。仮に巣箱が捨てられてもきれいにしてエサを置いて戻します。収穫は年2回、5月と9月に行い、Bee Sweetが回収します。そこで重さなどに基づき、報酬も払われます。
農家に対しては、1kgで1ドル、アドバイザーや収穫の手伝い人には1kあたり1.3ドルが支払です。巣箱1つ、一回の収穫で平均15㎏の蜂蜜が取れ、農家は初め5つの巣箱をもっているので、30kg×1×5=150ドルの収入になります。年間では平均で300ドルになります。農家にしてみればほとんど「ただ」で300ドルが得られます。
現在、巣箱は51,000個ほどあるということです。
この収穫された蜂蜜は、ザンビア国内や欧米へと輸出されています。小売も、卸も可能です。
環境にも優しく
Bee Sweetの巣箱は、従来ザンビアで使用されてきたものとは違い、収穫の効率も高く、きれいで質の良い蜂蜜が取れるようになっているようです。
さらに、ザンビアの農家は、副業として薪や炭売るために切り倒すことが多いといわれています。しかし、この蜂蜜による収入を得ることで切り倒す必要もなくなります。また、蜂自体は自然に存在しているものを利用しており、森林伐採は数の減少に直結するため、伐採の抑止力にもなるという仕組みです。
伝統に逆らわない
Bee Sweetは、現在のビジネスモデルを確立するのに8年間試行錯誤を繰り返してきました。そして至った結論が、「伝統に逆らわない」ことだといいます。
農家は、よっぽど困ったことがない限りは、昔から(何代化にわたって)続けてきたことを、やすやすとやめたりはしません。いくらインセンティブが期待できても、農作業をやめて蜂蜜を作ってくれという願いは聞かれないということです。そこで思い至ったのが、ご紹介したように、リスクは0で巣箱を「置いてもらう」という形をとります。
これなら、従来のやり方を変えずに、新しく収入を上乗せすることが可能になります。
懸念点
資料を見る限り、買い取り価格は1kgあたり1ドル、そしてアドバイザーなどに払うお金も1kgあたり1.3ドルであるのに対し、販売価格は1㎏あたり4.5ドルとなっています。これで本当に収益が成り立つのか、という点は不明です。また、実際にどのくらい売れているのかという販売実績も不明です、
しかし、農家にほとんどリスクを負わせず収入を作れる点、また蜂蜜という汎用性の高い商材を使っている点で非常に興味深いビジネスですね。事業自体の収益性、継続性やコストがきちんと判明するか、結果が待たれます。