
ソーシャルプロダクト特集、今回のキーワードは、「ホームレス」です。ニューヨークのホームレス政策に革新をもたらした、Common Groundについても取り上げていますので、併せてご覧ください。今回は、Common Groundとはまた別のアプローチで、キーワードは、「テント」です。
アメリカのホームレス事情
アメリカ合衆国住宅都市開発省によると、ホームレスは、全米各地に60万人近くいるといわれており、少なくともその三分の一がシェルターではなく路上で夜を過ごしているといわれています。
またホームレスの44%が独身男性、13%が独身女性ですが、実に36%が子どもを連れているといわれています(子ども連れのホームレス問題については、機会あれば取り上げます)。
広告をテントに
今回取り上げるGreen Residence projectは、2015年初頭ごろにカーネギーメロン大学で行われた”Impact-a-thon”というハッカソンイベントで1位をとったアイデアです。
そのアイデアの中心は、一見広告に見えるボードが、夜はホームレスのベッドになるというものです。
昼間はただの広告ですが、夜になると板を倒すことで、テントが出来上がります。両面にあるので二つです。しかも、テントの中にはファンやヒーターがついており、街灯用のコンセントにつなげると使うことができます。
低コストのテント
テントの屋根は二重のポリ乳酸繊維(バイオ繊維)製で断熱性に優れています。また、床にあたる部分に電熱線のようなものがあり、ヒーターの役割を果たしてくれるようです。他、広告用のラミネートシート、骨格のスチール、ファンなどを含めても、一つのコストは135ドルで済みます。
現在は試験的な段階ですが、160のテントを作り、320人が利用しているようです。
社会復帰も支援できる
広告は月100ドルで、メンテナンスなどに使われます。
そして、この広告兼テントは公園におかれ、普段ロックされています。解除するには、事前に登録したIDカードが必要です。ホームレスの人々がIDカードを登録することで、行政が数や動向を把握することもできるようになります。また、IDカードに基づいた職業訓練などの機会も可能になります。
ホームレス用のシェルターは数に限りがあり、入所できないケースもままあるようですが、このテントであれば、公園という広い共有スペースを有効に活用して、ホームレスの方々が安心して寝られる場所を提供することができます。
厳しい寒さの地域でも耐えられるのか、IDカードの登録がうまくいくのか、などの課題が残りますが、ホームレスの社会復帰の支援も可能になるというモデルは、非常に画期的ですね。