
ソーシャルビジネス総合研究所は、社会問題やそれを解決するソーシャルビジネスの事例紹介がメインです。しかし、ソーシャルビジネスの事例にとどまらず、画期的なソーシャルプロダクトもどんどんご紹介していきたいと思います。
今回のキーワードは、「風」「地雷」です。
地雷問題
地雷探知ネズミのお話をしたときに少し出てきたと思いますが、世界には未だに7,000万~1億個も埋められているといわれています。アフガニスタン、パキスタンなど政情不安定、もしくは紛争が続いている地域の他、カンボジア、コロンビアなど最近まで混乱が続いた国に多いのが特徴です。
2012年では、1,066人が死亡し、2,552人が負傷をしたとされていて、79%が一般の市民、その中で46%が子どもであるといわれています。
地雷探知ネズミは、それでかなり画期的な取り組みだといえます。しかし、仮にネズミが見逃した場合、後ろについてくる人が踏んで爆発する、というリスクは拭いきれません。また、ネズミのトレーニングやエサ代などもかかってしまいます。
風に乗って地雷除去
デザイナーのMassoud Hassaniはアフガニスタン出身、実家の近くに地雷原のある生活をしていました。なんとか地雷を簡単に、安価に除去する手段はないものかと考えていた時に着想を得たのが、子ども時代に遊んでいた、風に乗って転がるボールです。
そして生まれたのがMine Kafonです。鉄製の核に、竹製の脚をたくさんつけたボール状のオブジェクトで、風の力で転がります。そして対人地雷が感知する重さがあります。しかし爆発しても、失うのは足数本で、その後も転がり続けることができる優れものです。核にGPSを搭載することで、どこのルートを通ったかも確認することができます。
さらにMine Kafonが優れている点は、コストが劇的に低下する点です。対人地雷の除去は、人が行うと1つの除去に1200ユーロ(164,000円)ほどかかるといわれており、大変なリスクとコストがかかります。
しかし、Mine Kafonであれば、つまるところ転がすだけで地雷除去ができる上に、鉄製の核以外は竹やプラスチックなど安価な材料を使うため、コストが40ユーロ(5,470円)程度で済みます。つまり30分の1になる上に、地雷除去人の命というリスクもなくなるというわけです。
現在では、Kickstarterでの資金調達も完了し、実践への準備が進められていると同時に、大型化や円筒状にするなどの改良版の開発もなされているようです。
今後は、終了したMine Kafonをどう回収するのか、また風の力だけで地雷原をすべて埋めるのにどのくらいの日数がかかるのか、はみ出したものはどうするのか、などといった課題があります。しかし、地雷被害者を減らし、地雷除去人の命のリスクも抑える可能性があるという点が、非常に魅力的ですね。