食品ロスと聞くと、先進国の問題だとイメージを抱きがちですが、実は発展途上国でも深刻な問題になっています。一方で、世界には発展途上国を中心におよそ8億人以上の人が飢餓に苦しんでいる現状※1があります。

そこで、今回は発展途上国における食品ロスに取り組む穀物保管袋 Vestergaard社のZerofly®についてご紹介します。

飢餓と飽食

世界ではおよそ8億人以上、つまり10人に1人は飢餓状態にある※2といわれています。中でもアフリカは特に深刻な状況にあることが明らかです。
ハンガーマップ

引用:国連WFP「世界の飢餓

一方で、世界において年間13億トンの食料が廃棄されている※2ということも事実です。これは総生産の1/3にも及ぶと言われています。サハラ以南アフリカと 南・東南アジアではたった6-11kg/年ですが、ヨーロッパと北アメリカで消費者によって捨てられる1人当たりの食料は95-115kg/年にも及ぶといわれています。

先進国の消費者段階での食料ロス(2億2,200万トン)は、サハラ以南アフリカの食料の純総生産量(2億3,000万トン)とほぼ同じです。

発展途上国の食品ロスによる貧困問題

発展途上国でも、一人当たり30%の食品ロスが生じている※3といわれています。食品ロスは、食糧供給に対してはもちろんのこと、市場に出回る前に廃棄するため、出荷量も減ることになり、農家の収入にも深い悪影響を及ぼしています。

世界各地域の食品ロス/生産小売・消費段階別
図1 各地域における消費および消費前の段階での1人当たり食料のロスと廃棄量
(国際農林業協働協会(JAICAF)「世界の食料ロスと食料廃棄 」より作成)

その食品ロスの40%以上は収穫後と加工段階で発生しているといわれています。収穫技術や、保存方法の問題が大きいです。きちんと乾燥していなかったために、真菌(カビ)に侵されてしまう、また衛生的なところに保管していない、何度も同じ保存袋を使うなどで、ネズミなどのげっ歯類や、害虫に食べられてしまうなどが原因のようです。

穀物は流通前のロスも大きく、これが貧困問題の一因になっているとも言えます。また、殺虫剤の不適切・過剰な使用によって、残留農薬や環境汚染などの心配も近年では持ち上がってきています。

穀物は流通前のロスも大きく、これが貧困問題の一因になっているとも言えます。

食品ロスを減らし、貧困問題を解決する穀物保管袋 Zerofly®

流通前の食品ロスの問題を解決し、農家に収入を、世界に穀物をもたらそうとしている企業が、Vestergaard社です。

Vestergaard社が、収穫後段階の食糧廃棄を減らすために考え出したのが、Zerofly® storage bagsで、簡単にいうと、殺虫剤がしみこませてあるポリプロピレン製の穀物保管袋です。

Vestergaard社のZerofly®

ポリプロピレンは、強度が高く、吸湿性がない上、酸・アルカリなどの侵食にも強い素材といわれています。入れる前にきちんと乾燥させれば、カビの心配も少なくなります。

殺虫剤は、FAOやWHOでも安全とされた農薬を基準以下で使用しています。再び殺虫剤をしみこませる必要もなく、2年間は使用可能です。

Zerofly®により、「虫」と「カビ」の心配がなくなることで、農家が市場に出せる量も増え、収入の安定化につながります。さらには、この袋が流通することで食糧の生産量向上も見込むことができます。

深刻な衛生環境に置かれる人々のためのソリューションを生み出すVestergaard社

Vestergaard社は、衛生環境が整っていない状況にある人たちの健康問題を解決することにフォーカスした企業です。Zerofly®だけでなく、殺虫剤をしみこませた蚊帳でマラリア蚊などを防ぐPermanet®などを開発しています。

どのプロダクトにも共通することは、シンプルな発想に基づいて開発された商品であり、かつ問題の解決につながる明確な道筋が描けていることです。確固たるミッションと、それを達成するための巧みなビジネスモデルがあるビジネスの好例だといえます。

殺虫剤を染み込ませた蚊帳Permanet®濁った水も瞬時に浄化できるLifestraw®

健康や環境への配慮したデザインも重要

最後に、農薬や殺虫剤と聞いて、抵抗を感じる方も少なからずいらっしゃると思います。このような製品を使うときには、いつも二つのパラドックスが付きまといます。一つは、「健康被害」、もう一つは「環境問題」です。しかし、これらの問題は企業がきちんと社会的な責任を果たすことで解決することができます。

健康被害

Zerofly®などを使う際に、必ず問題となってくるのが、殺虫剤の使用による健康被害です。WHOやFAOが認可しているとはいえ、健康被害が生じる可能性はゼロとは言い切れません。

Zerofly®でも、手袋の使用や使用後の手洗いを奨励している通り、正しく使用されるための努力や健康被害の可能性については責任をもって公開しておく必要があります。

環境問題

あらゆる商品は、きちんと廃棄されないとごみになるだけでなく、周辺の土壌や水源を汚染する可能性が考えられます。また、不適切な使用(例えば、蚊帳を漁業用の網として使う、など)によっても同様の可能性があります。

廃棄後までの流れをデザインした環境に配慮したプロダクトを開発することが重要です。また、企業の責任の下で適正な使用法を広めることも必要です

この二つはとても難しい問題ですが、商品に対して責任をもった情報の公開と、問題を解決するためのより良い方法を研究・開発し続けることが重要です。


従来のビジネスでは、利益のためにほかのものを犠牲にする、というトレードオフの形が多く存在しました。しかし、社会問題の解決を起点としながら、ビジネスを通して収益を上げることで持続可能な形をつくり、また環境問題にも対処できるような三方よしのモデルを構築することがソーシャルビジネスを立ち上げるうえでは重要です。

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(写真は断りのない限り、http://www.vestergaard.com/ より引用しました)
※1 ユニセフ 「食料安全保障 最新報告書 世界で8億2,800万人が飢餓に直面 新型コロナ流行以来、1億5,000万人増加
※2 JAICAF「世界の食料ロスと食料廃棄
※3 WFP「考えよう、飢餓と食品ロスのこと。