こんにちは、ボーダレス・ジャパンの採用担当、石川です。

先日、「理念経営塾」に東京オフィスのメンバーと参加してきました!

今回登壇したのはSilent Voiceの代表、尾中さん。聴覚障がい・難聴児童から社会のトップリーダーを育てることを目的としたデフアカデミー事業や、無音かつ声や文字を使えないという非日常空間でコミュニケーションの「気づき」を得る場を提供するDIVE事業を展開しています。

聴覚障害者の雇用の現状―日本の場合


©Silen Voice「COMMUNICATION ART “DIVE”
尾中さんによると、日本に聴覚障害を持つ人は600万人以上いますが、その多くが高齢者です。

就業している聴覚障害者のうち、月収30万円以下の仕事に就いている人が9割。さらに、就業している人の4割は、人間関係が上手くいかないなどの理由で転職を繰り返しているとのこと。

そして彼らの仕事の多くは、工場での作業や事務作業など、いずれ人工知能に取って代わられてしまう可能性が高い単純労働。国は障害者雇用を増やすために法定雇用率の引き上げを行っていますが、障害者のスキルを伸ばすような教育の場が増えているわけではなく、企業は聴覚障害者が「できないこと」を鑑みて仕事を任せているような状態です。

「得意なこと」にフォーカスした事業を創る


(講演中は手話通訳の方が登壇者の話を同時通訳していました!)

「聴覚障害者の両親を持つきこえる子ども」だった尾中さんは、このような現状を変えるために広告代理店を辞め、25歳で起業しました。Silent Voiceでは聴覚障害者の強みや得意なことにフォーカスした事業を創出しています。

ちなみに、尾中さんの母・尾中幸恵さんは「コーヒーハウスCODA」の経営者。訪れるお客様1人ひとりの表情を見ながら、その人の気持ちに合わせたおもてなしをする接客スタイルが評判となり、なんと、開店からずっと黒字経営。幸恵さんが聴覚障害を持っていると知らずに訪れる人もいますが、そんな時は、常連のお客様が幸恵さんのお手伝いをしてくださるそうです。(ものづくりや行動に想いを込める:尾中幸恵さん

自らの強みを生かしながらお店を軌道に乗せた幸恵さんの姿をみて、尾中さんは「聴覚障害者はもっと社会で活躍できる」という確信を持ち、聴覚障害者の強みを活かしたワークショップ事業を立ち上げました。

喋ってコミュニケーションを取れる人は、知らず知らずのうちに言葉に頼りきり、感情や概念を伝えることが不得意になりやすいそうです。一方、聴覚障害者は言葉に頼らずに生活しているからこそ、表情が豊かで、相手の立場に立って伝え方を考え、伝わるまで諦めずにコミュニケーションを取ることが得意

この特長を活かして、企業の組織づくりやコミュニケーションマインドの研修を作り上げています。ナビゲーターを務める聴覚障害者の方は、これまでの人生経験で得た視覚的な表現や観察眼を駆使して様々なコミュニケーション方法とその本質を伝え、導入企業の組織の活性化に貢献しています。

今秋から始まったデフアカデミー事業では、聴覚障害者の強みである「視覚」の力を開発する聴覚障害・難聴児専門の放課後デイサービス「DEAF ACADEMY」を展開。聴覚障害を持つ子どもたちが教育を通してできることを増やし、自信をもってもらうことが狙いです。

「強みにフォーカスした事業を創る」という考え方は、今年8月に精神障害者を雇用する革製品製造工場を設立したJOGGOとも通じる部分があります。

得意なことや好きなことを活かして仕事ができれば、その人が仕事を楽しめるだけではなく、活躍の場をつくることにも繋がります。「これができないからあの仕事を渡す」という考え方ではなく「これが得意だからその仕事をつくる」という発想が障害者雇用の常識になれば、今はまだ存在しない仕事さえも生まれてくるのではないでしょうか。

聴覚障害者が働きやすい職場づくり

現在、サイレントボイスのメンバーは11人。そのうち6人が聴覚障害者です。聞こえる人・聞こえない人が一緒になって仕事をするため、オフィスや仕事の進め方にも様々な工夫をこらしています。

例えば、オフィスの壁は全面ホワイトボードになっているそう。ポストイットを貼り付け、あらゆる情報を共有しています。情報の抜け漏れが防げるだけではなく、やるべきことが一見できて効率アップにも繋がっているとのこと。また、営業でもらった名刺はそのままホワイトボードに貼り、営業進捗の管理に活用しているそうです。

「強みを生かす」ことが持つ可能性

社会問題を解決するために、雇用を創出するソリューションが多いボーダレスグループ。得意なこと・できることにフォーカスした仕事を生み出すことは、その人が心から楽しんで続けられる仕事にもなるし、唯一無二の、価値が高い仕事にもなる可能性を秘めています。

「あれがない」「これができない」「それは難しい」という制約条件は社会問題の解決につきものですが、それを逆手に取った発想ができれば、私たちの事業の幅をさらに広げることができそうです。

◆あわせて読みたい記事
JOGGO国内工場始動!!
「ろう者のアイデンティティを持つ私が解決したい、ベトナムの社会問題」2018年新卒内定者インタビュー/那須 映里さん
年商30億円越えの社長が語るソーシャルビジネスの定義、起業家の役割とは?