はじめまして、なこすけ(川北奈生子)と申します。
私が代表を務めるBORDERLESS FARM は今年で創業から5年。これまで、ミャンマーリンレイ村の超小規模農家さんと無農薬でハーブを育て、AMOMA(ボーダレスグループ企業)に卸してきました。

一緒に頑張ってくれる農家さんは私たちの家族です。
でも、そこにたどり着くまでには長い時間が必要でした。

リンレイ村は標高1,500m近く、電気や水、ガスも通っていない、山間の村です。用水路やため池も当然なく、農業はすべて雨季の雨頼み。十分な農業用水が得られず、農家さんたちは“タナペ”という葉巻たばこの原料栽培に依存した生活を送っていました。

タナペには未来がない⁉

農家さんたちの命綱であったタナペ。でも、実態はひどいものでした。
数十年にわたって栽培した結果、乾燥につかうための薪を切りすぎて森林破壊。殺虫剤と化学肥料は、年々強いものを使用しないと効果が得られず。

どんどん上昇する栽培コストに、安定しない市場価格。栽培してもコスト分さえ回収できない赤字の年が増えていたのです。


乾燥し、出荷前のタナペ。

「タナペはやめたい。でも、ほかに栽培できるものなんて知らない…。」

希望が見えない未来、農家さんはみんな暗い表情でした。

救世主FARMあらわる!!

そこにあらわれたのが、私たちBORDERLESS FARM。
リンレイ村でも栽培のできるハーブを無農薬で農家さんに育ててもらい、高価格で買い取ることを保証しました。はじめての作物に最初は戸惑った農家さんたちも、栽培方法をつきっきりで伝え、約束通りに買い取ってくれる会社を徐々に信頼してくれるようになっていったのです。


栽培を実践してみせるスタッフ。丁寧な指導が信頼につながっていきます。

タナペとは違って、確実に収入につながる作物。当時のFARMは農家さんにとっての救世主・ヒーローのような存在だと、また、そうでなくてはならないと思っていました。

ヒーローにはなれない

でも、続かなかった。いや、続けられませんでした。

品質に基準もなく、だれでも参加してOK。高く買い取ることに必死になった結果、徐々にうちは“農家さんにとって都合のいい会社”になっていました。農家さんたちの中でも「高く買ってもらえて当然」という意識がいつの間にか生まれていたのです。

結果として、資金は尽き、存続の危機に陥ったのでした。

ヒーロースーツを脱ぎ捨てて

そこからはじまった、ラストチャンスの1年。
(チャンスをくださったボーダレスグループの皆様にかぎりない感謝を。)

信じてくれた農家さんのために、私たちは絶対につぶれるわけにはいかない。
農家さんたちと会社は一心同体なんだ、という当たり前のことにようやく気がついた私たちは、会社の内情をすべて農家さんに話しました。


真剣な表情で話しをきいてくれる農家さんたち

お金がないんだ。
このままだと、会社はつぶれる。ハーブ栽培を続けることもできなくなる。

農家さんたちのことを大切に思っている。だからこそ、力を貸してほしい。

あまりにもひどい会社の経営状況に農家さんも唖然としたと思います。腹も立ったし、不安になったはず。それでも、必死に頭を下げるスタッフを見て「高く買い取ってくれて当然」という農家さんの態度が変わりはじめました。


スタッフや農家さん、AMOMAもみんなで楽しむ収穫感謝祭の様子

私たちは、お互いを支えあって生きていく家族のような存在。
どちらかが無理をして助けるんじゃなくて、お互いがもっているものを分け合って、補い合って生きていく。

すべてをさらけ出して、ヒーローではなくなったけれど、今の関係が一番良いと思っています。どんどん任せる仕事も増え、今年はついに、買い取り時の検品なども農家さんリーダーが担うようにしてみました。リーダーは10家族をひとチームとして束ね、栽培や品質管理・買取のタイミング決めなど、今までスタッフが担っていた重要な仕事を行います。

それどころか、今年挑戦する新しい村での栽培の技術指導に同行したり、そこの村長さんに説明するのについてきてくれたり(同じパオ族同士、体験談はものすごい説得力でした)と、活躍の幅がどんどん広がる農家さんたち。

きっとこれは、私たちが農家さんを守るヒーローであろうとしていた時には見られなかった景色。一緒に笑って、泣いて、ときに家族のようにケンカもしながら、私たちはこれからも農家さんの家族として生きていこうと思うのです。