「日本の食料自給率が4割を切った」
「食品廃棄量をなんとかしなければ…」
「ゲノム食品の届け出が始まる」

ニュースで日々取り上げられる、日本の食を巡るさまざまなトピック。そのほとんどが問題点として取り上げられています。

しかしこの記事を書いている私は、ニュースで見た内容が問題なのかどうかも、いまいちピンときていません。それはきっと私が、一日三食しっかり食べられて、スーパーに行けば手ごろな価格で食材が買えて、たまに外食でプチ贅沢もできて……と、食べることに満足しているからです。

しかしニュースでも多く取り上げられている、食糧問題。知らないままではダメな気がしたので、まずは日本を取り巻く食の問題について調べてみました。

他人事ではない、食糧問題

そもそも今の日本を取り巻く食糧問題には、どんなものがあるのでしょうか。食糧問題について関心が薄い私なりに調べてみました。

1.食の安全性

食の問題として「安全性」を思い浮かべる人は多いと思います。

食の安全性で思い浮かぶのは、農薬、食品添加物、食品偽造などのワード。2019年10月から届け出の受付が始まったばかりの「ゲノム編集食品」も、今その安全性に疑問を持つ人がいるトピックです。

ゲノム編集食品とは、遺伝子のある部分を編集することで、効率よく農産物の生産量を増やしたり丈夫に育てたりすることが期待される品種改良技術の1つ。大豆食品などでよく見かける遺伝子組み換えと違うのは、切断部分に別の遺伝子情報を組み込まず切断したり繋げたりするだけという点。自然界でも起こりえる遺伝子の突然変異と変わらないため、安全だといわれています。

 

ゲノム編集食品 安全性 届け出※出典:ゲノム編集技術応用食品の表示に関する情報「ゲノム編集技術応用食品の表示に係る考え方」 消費者庁

 

ただしゲノム編集食品は、遺伝子組み換え食品とちがい安全性審査の必要がなく、その表示も義務付けされていません。だからゲノム編集食品だと知らずに口にすることもありえるのです。

また表示を義務付けてはいないものの、国はメーカー側にゲノム編集食品であることの表示を推奨しています。つまり、ゲノム編集食品の安全性に不安を持つ意見があることも承知の上で義務付けていないとも言えるのです。

ゲノム編集食品に限らず、「食べておいしいなら」と安全性を気にしない人もいるでしょう。しかし不安を持つ人もいると思います。食の安全性を吟味し選択するのは消費者なのに、その情報すら提供してもらえない可能性があるのです。

2.食料自給率の低下・先行きの見えない農産物輸入

国内において国産食材での食料消費がどれくらいまかなわれているかを指す食料自給率。平成30年度の日本の食料自給率は、食べ物の熱量を使って計算するカロリーベース※1では37%、食べ物の価格を使って食料自給率を計算する生産額ベースでは66%というデータが出ています。

食料自給率※出典:『知ってる?日本の食料事情』食料自給率とは 農林水産省

 

経済的な側面から見ると、生産額ベースで半分以上は国内で生産できているからいいようにも見えますが、日本人の食生活の変化を加味するとカロリーベースの数値も無視できません。

日本人は主食として、米だけではなく小麦を使った麺類やパンなども食べるようになりました。この小麦の食料自給率はなんと14%。また穀物は人間の食用としてだけではなく、畜産業で使う飼料にも大量に使われます。つまり日本で生産される穀物だけでは国内の需要に応えられないため、輸入に頼らざるをえないのです。

しかもその輸入先は特定の国に依存しているため、もしその国で農産物が不作になったり、国際関係が悪くなったりしたら、輸出してもらえなくなる可能性もあります。

穀物需給 グラフ
※出典:『平成30年度 食料・農業・農村白書』第1部 第1章 第3節「世界の食料需給と食料安全保障の確立」 農林水産省

 

さらに日本は人口減少が続いていますが、世界的にみると人口は増加しています。ここで懸念されているのも、穀物。さまざまな国で主食として親しまれ、家畜の飼料としても必要とされる穀物の需要は世界的にも高まると予測されています。しかし世界全体の穀物需給の現状は、生産量が消費量を下回っているのです。

加えて地球温暖化や水不足など、農業とは切っても切れない問題が山積しています。つまり、いつ穀物をはじめとする農産物を輸入できなくなってもおかしくない状況なのです。

3.農業人口、農地面積の減少

なぜ国内食料自給率を上げられないのか。それは農業人口と農地面積の減少が影響しています。そしてこれらの現状も、食料問題の1つだと言えるでしょう。

農業人口の減少は特に顕著で、2018年の農業のみに従事もしくは農業を主な仕事としている基幹的農業従事者数は、前年に比べ3.8%減の145万1千人というデータが出ています。しかも農業従事者の平均年齢は67歳と、高齢化が進んでいるのです。

農業 高齢化※画像はイメージです Photo by HiC on 写真AC

 

近年では49歳以下の新規就農者が4年連続で2万人を超えるなど、一見すると若者の農業への関心が高まっているようにも見えますが、新規就農者全体で見ると2018年は前年比で7.4%減の5万5,670人というデータが出ています。

農地面積も緩やかに減少を続けていて、2018年の日本の農地面積は、前年比較で2万4千ha減の442万ha。作物栽培が難しい荒廃農地の再生などによる増加はあったものの、耕地の荒廃、宅地への転用、自然災害などで、農地面積は減っています。

日本 農地面積※出典『平成30年度 食料・農業・農村白書』第1部 第2章 第2節「農業の構造改革の推進」 農林水産省

国内の作り手も作る場所も減り生産量の確保がますます難しくなっているため、食料自給率を上げるのもそう簡単にできることではないようです。

4.食品ロス

国内での農産物生産が需要を十分にまかなえないため、輸入に頼らざるを得ない日本。しかし食品ロス大国だと言われているのも、日本なのです。

平成28年度の推計では、年間2,759万トンの食品廃棄物の中でまだ食べられるのに廃棄される食品、いわゆる「食品ロス」は643万トンでした。この廃棄量は、世界中で飢餓に苦しむ人々に向けた世界の食糧援助量(平成29年で年間約380万トン)の1.7倍に相当するといいます。

食品ロス
※出典:食品廃棄物等の発生量(平成28年度推計) 農林水産省

 

しかも食品ロスとしてカウントされている食品には、畑や港でとれる野菜や魚などの一次生産品や、災害用に備蓄していた賞味期限切れの食品の廃棄はカウントから除外されているのです。だから、日本で食べられるのに捨てられている食品の量は、見えている数字以上にもっとあるでしょう。

そもそもなぜ、まだ食べられる食品が捨てられているのでしょうか。それは、企業が設定する賞味期限が短いことや、消費者が食品の新鮮さを重視する傾向があることなどが理由として挙げられています。

自分の意志で選べない日本の食環境

takeshita

調べれば調べるほど、日本が抱える食料問題が身近なものだと分かった今。自分にも何かできることがないか、フードロス問題解決に取り組む『タベモノガタリ』の竹下友里絵さんに聞いたところ、「消費者にできることは、まず知ること」と回答が返ってきました。加えて竹下さんはこう語ります。

 

普段食材を買う場所として、多くの人がスーパーを挙げると思います。直売所などもありますが、そういう選択肢があること自体を知らない、知っていても利用できていない人は結構いるのではないでしょうか。

また多少食材の形が悪くても安全なら食べたいという人もいると思うんですが、日本の農業は市場流通がメインなので、形や大きさなどの規格に該当しないものが出荷されないようになっています。だから消費者のもとに規格外の食材が届きにくいのです。

今の世の中は、市場で選び抜かれ売り場に並んでいる食材を買うという仕組みになっているので、食材を自分の意志で選ぼうにも選べないんですよね。自分が口にするものを自分の意志で選べない現状が、消費者の知る機会を奪っていると思うんです。

 

スーパー※画像はイメージです Photo by 羽鳥 on 写真AC

 

確かに私も、車でちょっとの距離にある激安スーパーか徒歩圏内のスーパーでしかほとんど買い物をしないうえ、特に吟味もせず価格といたんでいないかだけをみて食材を選んでいます。竹下さんの話を聞いて、並んでいるものの中から「これならいいか」という感覚で食材を選んでいたことに気付かされました。

 

農業に携わる人も少なければ作る場所も減っている今の日本の農業は、効率重視なんです。効率よくたくさん収穫できるものを作らなければ、日本の農業は成り立たなくなるので……。だから、農薬や品種改良などの技術が発展してきた部分もあるとは思います。

しかし、一次生産品の段階で農産物が捨てられているのも事実です。思ったよりも多くとれた農産物は、それをそのまま市場に出してしまうと価格が安くなりすぎる可能性があるため、価格調整のために廃棄されることも珍しくありません。

もったいないと分かっているのに過剰につくって捨ててしまっているという矛盾を知るためにはやはり、いろんな形や重さ、大きさの食材に自分の意志で触れる必要があると思います。

 

 

消費者の手元どころか、売り場にすら並ばず、さらには市場にも出回らないまま廃棄される食材がある……。安くて新鮮な食材の裏側にある事実に私は、衝撃を受けました。

竹下さんに話を聞かなければ、これから知りも考えもしなかった食の問題があったと思います。

非効率も包括した農業の仕組みと作り手の大変さを知る機会づくりを

では、食材を自分の意志で選ぶ機会を作るために、竹下さんはどんな行動をおこしているのでしょうか。

タベモノガタリ

『タベモノガタリ』では少量多品目の農家から野菜を仕入れ、「形はワルいが、味はイイ」をコンセプトに駅の中などで移動販売をしていました。店舗を持たないので、人がたくさん集まるところでも規格外の野菜を手に取ってもらえますよね。

また今後は幼稚園や企業で共同購入のような形での販売も考えていて、これから営業をかけるところです。消費者に野菜を購入できる場所は自分で選択できることを、タベモノガタリが行動で示していきたいなと。

農業では、農家はもちろん間に入る卸売の方々も薄利多売の世界で生きています。だから効率を求めてしまうのも無理はありませんし、そこを強引に変えようとは思っていません。

タベモノガタリでは、規格外のものも仕入れて販売している独自の市場外流通をとっている会社があると知り利用してもらうことで、一次生産品段階での食品ロスを減らし、生産された農産物全てが近隣地域の消費者に届けられるような仕組みを実現したいと思っています。一見非効率な取り組みにも見えますが、非効率をも包括した農業の新たな仕組みを提案していけたらと。

 

さらに竹下さんは、作り手や売り手だけでなく食べ手への教育も必要だと語ります。

農業 体験※画像はイメージです Photo by みっく― on 写真AC

 

子どものころから、その食材がどのように作られて自分の口に入っているのかについて考える機会をつくることも必要だと思っています。ただ、子どものころの食環境は親の影響を強く受けるものなので、問いかけたり教えたりするだけではなく、実際に農業を体験する場を用意したいです。

そして体験というと「楽しい」時間を届ける印象が強いと思いますが、私はきちんと「大変さ」を実感してもらうことが重要だと思っていて。というのも私が学生のころに、実際農業を体験して「こんなに大変な思いをして作られたものが、捨てられていいはずがない!」と実感したことが、今この事業を立ち上げるきっかけとなったので。

自分たちが口にするもの裏側への関心を高めるための取り組みにも挑戦していきたいですね。

 

タベモノガタリ

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生きるために欠かせない“食”。今回、その食がこんなにも危機的な状況を迎えている事実を知らなかったことを恥じました。

効率性を求めなければ成り立たない、日本の食料事情。しかし効率を重視すぎる現状が、食べ物の過剰生産や安全性への不安につながっているのも事実でしょう。

食糧問題を調べ、『タベモノガタリ』の竹下さんに話を聞いてから私は、自分が食べるものとの向き合い方をできることから変えてみることにしました。

〇食材を無駄なく使うため、買いだめを極力減らした
〇すぐに食べるものは賞味期限が短いものを選ぶようになった
〇冷凍できるものは冷凍して、積極的に保存するようになった

まだ安全性を正しく判断したり、市場価格の調整のために捨てられている食べ物をどうこうしたりすることは、今の私にはできません。ただ、今回の調査をきっかけに、一番身近な食品ロス解決ならできるかもと行動に移せたのです。

このように、ただ“知る”だけでも行動は変わるものです。もしこの記事を読んで何か思うことがあった人はぜひ、自分にできることを考え実践してみませんか?

 

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また、食糧問題を知る方法は自分で調べたり聞くだけではありません。『0円キッチン』『ありあまるごちそう』『フード・インク』など、食糧問題を題材にしたさまざまなドキュメンタリー映画で知る方法もあります。

ボーダレス・ジャパンでは、ドキュメンタリー映画上映会+トークショー「BORDERLESS NIGHT」を毎月開催中。東京・大阪・福岡の3会場で『フード・インク』の上映が予定されています。ぜひこの機会に参加してみませんか?

※上映作品は変更されることもあります。最新情報をご確認ください。

 

■BORDERLESS NIGHT最新情報はこちら
https://www.borderless-japan.com/borderless-night/

■『フード・インク』予告編

タベモノガタリ事業紹介

■竹下友里絵さんTwitter

 


【参考】

・ゲノム編集技術応用食品の表示に関する情報(2019.9)/消費者庁
・『知ってる?日本の食料事情』 食料自給率・食料自給力について (2019.8.6)/農林水産省
・『ジブン農業』日本の「食料自給率」を解説(2019.6.14)/第一次産業ネット 株式会社 Life Lab
・『平成30年度 食料・農業・農村白書』(2019.5.28)/農林水産省
・食品ロス量(平成28年度推計値)の公表について(2019.4.12)/農林水産省
・日経ビジネス食品ロス記事に補いたい食品業界視点とミクロ目線 食品ロスは実験室で起こっている訳ではない(2019.10.10)/井出留美 YAHOO!JAPANニュース


インタビュー・執筆 / クリス
福岡在住のフリーライター。ボーダレス・ジャパンを4ヶ月で退職し、いまはパートナーとしてインタビューや執筆を手掛ける。愛猫“雛”をおなかに乗せソファに寝っ転がってアニメを見たりマンガを読んだりする時間が至福。仕事よりもこちらに時間を割きすぎる傾向があるが、やるべきことはやる。企業の採用コンテンツやブライダル、アニメなどのメディアでも執筆。