今回もソーシャルプロダクトをご紹介します。テーマは引き続きバリアフリーです。そのなかでも今回は「車いす」です。高齢社会が進む日本では、今後も車いすを必要とする人口は増え続けると考えられます。


今回は、車いすの概念を変えていける興味深い車いすを二つご紹介します。どちらも日本発、障害のある方の生活の質を向上させうるものです。

wheelchair-01

リハビリもできる、足漕ぎ車いす

一つ目は、株式会社TESSが開発した、”Profhand” です。

一般的な車いすに乗った時、最も使う体の部位はどこでしょうか?――手ですね。

しかしこのProfhandは、「足」を使う、足漕ぎ式です。足は手よりも力が強いので、手でこぐよりも楽にすすめます。

ペダルはこぎやすいように設計されており、片足がすこしでも動かせるのであればこの車いすを使える可能性があります。

このメカニズムを簡単に説明すると、歩行などの「運動」は、脳神経→脊髄神経→運動神経と伝わります。脳の病気では、例えば右半球を障害されたとすると、右側脳神経→脊髄神経の部位が伝達されなくなりますが、左半球の経路や、脊髄神経は生きています。また脊髄損傷では、損傷部分以下の神経伝達は障害されますが、損傷部分以外の脊髄は生きているため、生きている部分の脊髄反射は可能です。つまり、腰のあたりの脊髄内にある歩行中枢が生きていれば、片足を動かすことで、もう片方の足も反射的に動く、という反射を利用しています。

またペダルをこぐことで歩行に似た運動の効果も得られるため、リハビリの一環としての筋力の維持や向上も期待され、いくつかの病院で導入されています。

wheelchair-02
TESSホームページより引用

自分の力で出かけること

平成18年の医療法改正で、脳梗塞などのリハビリは、保健機関が180日以内に限定されました。しかし脳梗塞などのリハビリは、それ以上に長い時間がかかります。そのため、患者さんたちは180日を過ぎると自宅に戻り、自分の意志で出かけることもできずに寝たきりになってしまう方も多いといわれています。

そのような人にとっても、Profhandによって自分の力で出かけられるという目的ができることは心強いことですね。

Profhandは、まさに脳の病気や、脊髄損傷などによって車いすが必要となってしまった人が、もう一度自分の「足」で目的地に行けるように。と製作されました。

人体の特徴にうまく着目しており、高齢社会、老老介護が進む日本では必須の道具になるかもしれません。

すべてがそろって、安心できる車いす

次にご紹介するのは、車いすの欠点を克服しようと取り組んでいるWhillです。

歩道の段差や、建物の入り口にある階段などは、普段意識することもなく乗り越えていますが、車いすを利用するときには大きな障害になります。また、砂利道やぬかるみなども転倒するリスクが大きくなるため、避けられるといわれています。こうした事情から、車いすを利用する人は自然と出かけることが少なくなるといわれています。

wheelchair-03
Whillのホームページより引用

実際、Whillの開発は、「100メートル先のコンビニに行くこともためらう。」という話を聞いたことから始まったようです。
また、「車いす=障害者」という世間の目を嫌う人も少なからずいらっしゃいます。

Whillはこのような問題を解決し、だれでも乗りたくなるような、かなりスタイリッシュなデザインの電動車いすです。

アームにあるコントローラを少し傾けるだけで、行きたい方向へと進むことができます。また、四輪駆動で、さらに独自開発の前輪は、小さなタイヤを組み合わせており、10度までの傾斜、7.5cmの段差までであれば悠々超えることが可能、砂利道や凸凹道もしっかりと進むことができます。更には、BluetoothによってiPhoneと連動させることができ、iPhoneからの操作も可能です。

現在、Whillは車いすという範疇を超え、セグウェイなどと同じ「パーソナルモビリティ」としての立ち位置を確立しようとしています。

心に余裕を

Whillを利用することで、行動範囲は格段に広がります。また、スタイリッシュなデザインなので、「障害者」という周囲の目をそれほど気にする必要もありません。さらには「漕ぐ」という動作が不要なため、周囲の景色を楽しむ、といったことも可能となるなど、心の「余裕」が生まれてきます。

wheelchair-04

生活の質を上げる

バリアフリー化が義務付けられて10年以上が経過しており、障害のある人用のトイレを見かけることは非常に多くなってきました。

しかし、歩道の段差のように健常者が意識することのないような何気ないことが、実は大きな障害になっている場所もまだ残っています。

更に高齢化問題に関しては、老老介護という言葉が出てきているように、介護をする側の年齢も上がってきています。今回ご紹介した車いすは、力が必要なことも多く重労働の介護を、少し楽にしてくれるかもしれません。