
難民という背景を持つ人たちがパソコン再生のエンジニアとして活躍するエシカルパソコン事業「ZERO PC」、利用者が増え続ける理由はその徹底したサービスにありました。世界情勢の影響もあり、日本でも注目度が高まる難民問題の今とこれからを、代表の青山明弘に聞きました。
複雑なパソコン購入 購入後まで徹底的にサポート
――まずは、ZERO PCの事業について教えてください。
ZERO PCは、環境負荷ゼロ、難民ゼロを目指す再生パソコン事業です。企業や個人から不要となったパソコンを回収し、中身を入れ替えてエシカルパソコンとして販売しています。
日本では、年間約300万台、重量にして約6,000tものパソコンが捨てられています。また、紛争鉱物の使用、製造時に排出されるCO2の量は約300kgと、環境負荷の高い製品です。廃棄されたパソコンを再利用することで、環境への負荷ゼロを目指しています。
このパソコン再生の仕事を、母国での紛争や迫害などを理由に日本に逃れてきた難民申請者が担っており、日本人と同水準の給料と社会保障で直接雇用しています。難民認定の申請中は、職が不安定で社会的に孤立しがちですが、どんな状態にある人でも安心して働ける仕組みづくりをしています。
ZERO PCのビジネスモデル
――ZERO PCの利用者がどんどん増えてきているとお聞きしました!選ばれる理由はどんなところにありますか?
パソコンは身近な商品だと思いますが、多くの方にとってパソコンを”買う”のは実は難しいことだと思うんです。スペックは記号みたいでよく分からないし、家電量販店では新しい機能ばかり説明されて、より一層どれにしようか分からなくなったり。
使わない機能があったとしても、自分に合う機種が分からないから、とりあえず高いやつを買っておけば安心という具合に、10万円以上する商品の購入に一か八かの要素が入っていたりします。
ZERO PCは、書類作成や動画編集というように使いたい機能から機種を選べるのが特徴です。全てのメーカー品を取り扱っているので、中立的な立場でそれぞれの良さをご案内できます。ECサイトでの販売がメインですが、LINEを使って自分に合ったものに出合えるように個別サポートをしています。
企業などから回収されたパソコンは型ごとに整理している
――たしかに、よく分からないから「とりあえずオススメ品でいいか…」とスペックも検討せずに買ってしまいがちですよね。ZERO PCではお試しもできるんですよね!
はい、購入前に1週間お試しできるサービスを行っています。実際に使ってみて良ければ購入できますし、満足できなければ送料無料で返送いただけます。
自分がやりたい作業ができるかどうかを知るには、実際に使ってみるのが一番なんです。
購入前に、商品を自由に試せる1週間無料お試しサービスを行っているのは、ZERO PCだけです。
また購入後の、例えば、ネットの繋ぎ方が分からないとか、エラー表示が出たといったご相談にもお応えしています。購入前はもちろん、購入後までお客さまに寄り添ったサポートを行っているのがZERO PCの一番の強みかもしれませんね。
――高齢だったりパソコン不得意な家族に、サービス付きでパソコンを贈るというのも良さそうです!ZERO PCを購入されたお客様からは、どんな声が届いていますか?
再生パソコンを買ったことがないお客様がほとんどなので、動作を心配される方も多いのですが、実際は「こんなにサクサク動くんだ!」と驚く声が多いですね。あとは「難民問題に貢献できてよかったです」という声が多いことも嬉しく思っています。
難民の問題をお話すると「自分も何かしたい」と感じてくださる方が結構いるんですよね。もちろん寄付も大切な活動ですが、自分が必要なものを買うことが難民問題解決につながるプロダクトがある。分かりやすく、環境保護にも貢献できる。これがZERO PCの唯一無二な点だと思います。
注目度が高まる難民問題 市民運動がカギ
――1年前のインタビューからこれまで、日本における難民問題の意識や注目度はだいぶ変わってきたんじゃないでしょうか。
昨年5月には、外国人の収容と送還のルールを厳格化する入管法改正案が市民運動により廃案となっています。この改正案は「改悪」と言われ、国内外問わず各方面から批判を浴びました。ウクライナ情勢によって「難民」に対する意識は驚くほど変わっています。
また、今まさに日本で初めてトルコ国籍クルド人の難民認定が出そうなんです。クルド人は「国を持たない最大の民族」と呼ばれ、そのほとんどがトルコにいると言われています。しかしトルコではクルド人が迫害されていて、日本では埼玉県に約2000人が避難しにきています。
トルコの友好国である日本では、これまでクルド人に難民認定が出ることはほぼありませんでしたが、ここが今変わろうとしています。
日本に暮らすクルド人難民を描いた映画『マイスモールランド』ごく普通の高校生活を送っていた17歳のクルド人サーリャが、ある日突然在留資格を失い…。日本の入管法を巡る状況をリアルに描く。
――日本における難民認定の状況はいかがですか。
2021年の難民認定者は74人、2020年の47人からは増加しました。しかし、日本の難民の認定率は0.5%と先進国の中で極端に低い状況に変わりはありません。人道的な配慮を理由に在留許可が出た方も、ミャンマーやアフガニスタンの出身者を中心に、580人と過去最多になりました。(2020年は54人)
入管で起きた悲しい事件もあり、日本の難民認定の制度についてどんどん世間に知られるようになりました。特にこの1年で、社会の声として「改善するべき」という流れが強くなってきていると感じています。
――この1年でのZERO PC内での変化や気付きなどを教えてください。
実はZERO PCではたらくメンバーの一人に、つい最近、難民認定が下りたんです。日本の認定率からすれば奇跡のような話で、当日はオフィスのみんなでお祝いしました。メンバーの喜びと安堵が入り混ざったあの顔は今でも忘れられません。
難民認定によって得られる権利がとても多いことに、あらためて気づかされました。経済的に自立して、家族と安心して暮らせる、そんな当たり前の権利を多くの人が手にできるようにと、願ってやみません。
また今後、難民の方を受け入れる企業に対して、ZERO PCが取り組んできたことを伝える役割を果たせるんじゃないかとも思っています。難民と言っても、国やルーツは様々。日本人のコミュニティに受け入れるというスタンスではなく、お互いに歩み寄ることが組織にもたらすメリットの大きさを実感しているからです。
共に働くメンバー
これまでいただいたお客様の声によって、問題意識は持っているけど行動が出来ていないと感じている人達に対して、1つのアクションの取り方を提案できていることは、ZERO PCの役割として確立できていると感じています。
みなさんが「何かおかしい」と思ったり、「支援したいけど何をしていいか分からない」と迷った時に、ZERO PCを選択肢の一つとして選んでいただけたら嬉しいです。
ボーダレスの起業家のオススメ書籍をご紹介!
Enter the E代表 植月友美
オールドスクールかもしれませんが、地球を「村」と置き換えることで、遠く離れた国のことが身近にそして、世界のことを自分事にさせてくれる本です。20年たった今でも手にとってみると世界の状況を俯瞰することができ、私たちの中にある解決したいこと、大切なことを数値とともに思い出させてくれる本です。
最後までお読みいただきありがとうございました。
今回のインタビューは、ボーダレス・ジャパンが月に2回発信しているボーダレスマガジンのコンテンツです。
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