学生時代にマレーシアで教育ボランティアを行った河内白石。2人が立ち上げた「アノサポ(アノテーションサポート株式会社)」は、AI(人工知能)の開発に不可欠な”アノテーション”分野のサービス展開で、世界中の無国籍問題の解決に挑戦中。馴染みの薄い「アノテーション」について、事業への想い、そして今後の展望について聞きました。

世界の無国籍問題を解決する アノテーション事業とは?

――はじめに、アノサポの事業内容を教えてください。

河内:アノサポは『世界の無国籍問題を解決する』というビジョンのもと、2021年8月に立ち上げた事業です。「アノテーション」という、AIの開発に重要なデータ作成業務を代行するサービスを展開しています。

またこのアノテーション業務を、貧困が原因で無国籍となった子を持つ親たちとともに行い、彼らの経済的自立と子どもへの国籍取得サポートを通じて、無国籍問題の解決を目指しています。そしてまずは私たちが無国籍問題を知ったきっかけのマレーシアから始める形で動いています。

――マレーシアの無国籍問題というのは、現在どういう状態なのでしょう。

河内:実はこの問題、フィリピンの貧困が関係しています。
フィリピンの南の地域では、内戦やインフラの未発達が原因で地域の仕事がない状態でした。家族で生活するための収入と仕事を求め、フィリピンからより物価の高いマレーシアに不法入国して働いています。


不法移民の集落

河内:「不法就労だけど、仕事はあるから家族で生活できる。」
そんな状況で新たに子どもが生まれた時、在留資格の問題から、親は子どもの出生証明書を行政に出せず、結果的に子どもが無国籍状態になってしまう
これが、今現在マレーシアで起こっている無国籍問題の原因です。

そのため、私たちはフィリピンでの雇用と子どもの国籍取得サポートを約束した上で、家族全員でマレーシアからフィリピンへ帰国してもらい、アノテーション作業を通じて私たちと一緒に働いてもらうことを事業としています。

このビジネススキームを活かして世界中の無国籍問題を解決したいと考えています。

――「アノテーション」は、あまり聞きなれない言葉ですが、詳しく教えてもらえますか。

白石:私たちの生活で最も身近に「アノテーション」技術を感じられるのは、飲食店や商業施設に設置されている顔を検知し体温を測るサーマルカメラです。あのカメラにもAI、つまり人工知能が搭載されていて、無数の人の顔や輪郭データをAIに覚えこませてあるんです。

その、データ一つひとつに『これは”顔”です』と意味づけする作業を「アノテーション」といいます。AIはそれを学習することで、皆さんの顔を検知して、体温を測ってくれるという訳です。


出典:https://robotstart.info/2020/05/22/qbit-ai-thermal-camera.html

――なぜアノテーションを選んだのでしょうか。

白石:私たちが知っている地域だけでも、無国籍の子を抱える世帯は数百世帯存在します。またその親たちの教育レベルやスキルはバラバラの状態です。

そんな状態でも、アノテーションであれば、作業がシンプルなので基礎的な技能習得で早くから作業を任せられること。また、パソコンで行う作業なので場所を選ばずできることや、画像領域に特化することで言語の制約がなくなることが、無国籍問題の解決にアノテーション事業を選んだ理由です。

また、多くの社員を雇えるだけの市場規模があることも決め手となりました。

3年後には世界市場へ 進出できる仕組み作りを


アノサポのWebサイトイメージ

――アノサポのサービスの特徴はどこにあるのでしょうか。

白石:アノサポはアノテーションの専門サービスです。その上で、AI開発に携わる方のメリットとなる、3つの特徴があります。

まず1つ目は「低価格」です。アノサポの目的は無国籍の子を持つフィリピン人の親たちの雇用創出であるため、現地の物価に合わせた価格設定が可能であり、国内の競合他社と比べてもコストメリットが実現できます。

2つ目は「作業開始のスピード」です。AI市場は急成長を遂げている中、多くのアノテーション企業はいくつものサービスの一つとしてアノテーション作業を行っています。一方私たちアノサポは、アノテーションに特化した生産体制を組んでいるため、ご依頼を受けた後すぐに作業に取り掛かれる体制です。

3つ目は「高品質保証」です。AIにはアノテーションデータが必要ですが、もしそのデータにミスがあった場合、それが自動運転のAIだったら大問題になってしまいます。
アノサポでは、全データダブルチェックを基本とし、品質管理を徹底しています。またAI開発会社と相談の上、事前に少量のデータトライアルをして、品質をご確認いただいてから、実際の作業に入る場合もあります。そうすることで、高品質なデータ納品を実現しています。


業界でのデータのダブルチェックの割合(アノサポ調べ)

――そしてなにより、アノサポに依頼することでマレーシアの無国籍問題を解決する一助になるということですよね。

河内:はい。皆さんからのアノテーションのご依頼が、無国籍問題解決に繋がります。アノサポでは「国籍が取得できた子どもの数」を皆さんに公表していこうと考えています。

――アノサポの今後の展望について教えてください。

河内:まずはアノサポとして、国内でアノテーションサービスの地位を確立できるよう、どのような機能がAI開発に携わる方に喜ばれるのか、仮説検証しながらサービスを展開していきます。

また、サービスとしての地盤を固めた3年後からは、より無国籍問題解決のためのソーシャルインパクトを出せるよう、フィリピンの方々が自分たちでアノテーション事業を回し、自走できるように体制を整え、海外市場も含めてサービスを展開していく予定です。

――世界の無国籍問題の解決を目指すアツい2人とアノサポの将来が楽しみです!

白石:AIの開発に携わっている方、ぜひお声がけください。
またそんなご友人がいる方、ぜひアノサポをご紹介ください!
アノサポの事業を通して、一緒に無国籍問題の解決につなげていきましょう。

子どもたちが悲しみを 抱かない世界をつくりたい


ボランティア時代の河内

――二人は同じ大学の国際ボランティアサークルに在籍していたんですよね。白石さんは先輩の河内さんにはどんなイメージを持っていたんですか。

白石:私がサークルに参加した際に、先輩で、休学してマレーシアで1年間無国籍の子ども達へ授業をしている人がいると聞いて。河内さんはそのサークルではマレーシアの無国籍問題に1人で立ち向かった「レジェンド」のような存在でした。

――付き合いも長いと思いますが、普段はどんな会話をしているんですか。

河内:もっぱら事業の話しかしていませんね(笑)。

白石:本当にそうですね(笑)。大学生の学内のラウンジでもずっとマレーシアの無国籍問題について語り合っていました。あの頃と今と変わっていませんね。


ボランティア時代の白石

――二人からは無国籍問題の解決への並々ならぬ熱意を感じます。二人が無国籍問題に本格的に取り組もうと思ったきっかけは何ですか。

河内:きっかけは大学時代のマレーシアでのボランティアで、8歳の子どもが「僕は将来警察官になりたい。でも、無国籍だからなれないんだ」と僕に語った経験でした。

当時無国籍問題という巨大な社会問題に私は何もできない「無力感」と、生まれた時から「無国籍」となり将来を制限されるという不平等が起こることへの「怒り」。これらがアノサポを立ち上げる原動力になっています。
「努力をすれば、夢を追いかけられる」僕はそんな普通の社会を実現したいです。

白石:僕も現地で1年間ボランティアの先生をしていた時、多くの時間を16-17歳の無国籍の生徒たちと共に過ごしていました。自分と歳が近いからこそ、学校にも行けず、警察の目を恐れて暮らす彼らの将来が心配でした。

無国籍の彼らは大人になれば不法移民として生きていかなければなりません。彼らの将来について考えると今でも、不安と共に悲しくなるんですよね。

ソーシャルビジネスの世界に入って時間が経っても、あの時抱いた「彼らの将来を少しでもよくしたい」という想いが変わらず、今の自分を動かしています。
「悲しみを子供たちが抱えなくて済む世界をつくる」これが僕の実現したい社会です。


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代表 伊藤 綾
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