
社会課題に関心を持ち、行動をする人を増やしたい。そんな未来を目指すSNSメディア「RICE MEDIA 1分間で社会を知るメディア 」が、2021年12月にオープンしました。毎週2回更新される1分動画を見るだけで、世界が変化するかも?! 代表の廣瀬智之さんに聞きました。
ソーシャルグッドなアイデアを 1分間動画で紹介!
――2021年12月、知られざる社会課題を分かりやすい1分動画にまとめて各種SNSで発信する新サービス「RICE MEDIA」がスタートしましたね。「RICE MEDIA」が解決したい社会問題とは何ですか?
「RICE MEDIA」は、国連が掲げる「持続可能な開発目標(SDGs)」達成に向けたさまざまな動きや、ソーシャルグッドなアイデア、社会課題などを1分間の動画にまとめ、YouTubeなど各種SNSで無料配信する新しいSNSメディアで、毎週2本の動画を配信しています。社会に必要な情報を多くの方に届け、「未認知の打破」を目指しています。
「日本は平和」と思われる方が多いかもしれませんが、社会問題で苦しむ人たちは沢山存在します。例えば、選択的夫婦別姓制度。これは世界的に見ても少数派で、米国では1970年代には法改正されています。
その他にも実は7人に1人の子どもが貧困状態にあると言われていたり、日本で難民認定される割合は0.4%と国際的に圧倒的に低かったりと、非当事者からは見えづらいものの、色んな問題に溢れています。
社会問題に関心を持つことで日本の現状を知り、実はもっと幸せになれることを知っていただきたいです。
また、LGBTや鬱、ヤングケアラーなどの問題は、実は身近な人が当事者かもしれないのに、自分の未認知で気付かないうちに傷付けたり、苦しめりしている可能性があります。
知ることは、周囲の人を大切にすることにも繋がります。
――多くを知り、考え、行動できたら素敵ですよね。
個人的な話で恐縮ですが、私は大きな組織の中で格差に苦しみながら働いた経験があります。その時感じたことは、差別している側の人間には悪気がなく、差別されている側に対して無関心なこと。そして差別されている側は立場が弱いため声を挙げられない。正直なところ日本人の多くは「平和ぼけ」していて、見たくないことには蓋をし、「今がよければそれで良し」としている人が多いように感じます。
その傾向は、選挙結果にもあらわれています。昨年10月の衆議院議員選挙の投票率は55.9%と、戦後3番目に低い結果。社会や政治への参加意識は低迷しています。こうした状況を変えるためには、「多くの人が社会的な情報を知り続けること」が重要です。
ちなみに、全世界で最新の情報を配信している「ヤフーニュース」。トップニュースのカテゴリーの割合を、日米で比較すると、アメリカでは「自国のニュース」に多くの人が関心を示し、「芸能ニュース」への関心はごく少数。その一方で、日本は「自国のニュース」と「芸能ニュース」への関心度が同程度です。
(ネットメディア「NEUT MEDIA」の記事より※データはリンク先の記事のライターの独自リサーチによるもの。2016年2月、3月の約2カ月間、毎日各国のYahoo!のトップページからニュースのタイプの統計をとってまとめたもの)
そもそも日本人の社会や政治に対する意識は世界の中で圧倒的に低く、このままでは日本は自国が抱えるさまざまな問題を解決できないと感じています。
「国の行く末や政治、社会問題に意識が向かないのは何故なのか…」。
原因は、日常の中で社会に関する重要な情報が十分に届く環境がないため、触れる機会が少なく、当事者意識を持つことが難しいからと考えました。
だからこそ「未認知の打破」をテーマに掲げ、「RICE MEDIA」の立ち上げに至りました。
RICE MEDIAを共に立ち上げた廣瀬(左)と藤田(右)
――大手を中心に、社会的な情報を届けるメディアは多数あります。それらと「RICE MEDIA」との違いは?
大手メディアの発信では届かない人たちがいることに問題意識を持っており、「RICE MEDIA」はそんな人たちを含めより多くの人々に情報を届けていく挑戦です。「じゃあ従来のメディアと何が違うの?」というポイントが3点あります。
まず一つ目は「1分のショート動画コンテンツの制作と発信」。ニュースは見ない人もSNSは見るため、SNSでの行動導線に合わせたコンテンツ設計で情報を届けていきます。
二つ目は「拡散にインセンティブをつける」こと。我々が発信した情報をリツイートしたり、シェアしてりしていただくことで、植林ができるシステムを構築しました。拡散にインセンティブをつけることで、従来のメディアよりも高い情報拡散力を目指しています。
三つ目は「インフルエンサーが拡散に参加」。我々は社会的な発信に取り組むインフルエンサーのプラットフォーム「RICE PEOPLE」(※RICE PEOPLEの詳細はこちらをご覧ください)も展開しています。インフルエンサーが拡散へ参加することで情報をより幅広くリーチさせられると考えています。
知られざる社会問題やベンチャー企業の新たな取り組みを紹介
――週2回1分の動画を見ることで、未来を変えられたら素敵ですね。フォローして動画を拝見したくなりました。「RICE MEDIA」の特徴や動画の具体的な内容について教えてください。
動画は、社会インパクトを生むソーシャルグッドなアイデアや、解決すべき事案なのに意外と知られていない社会課題をピックアップし、1分間に編集。できるだけ興味を持ってもらえるように、タイトル、コピーなどの言葉選びを大切にしたり、飽きさせないテンポ感を意識し、質の高いコンテンツを作成しています。
1分にこだわった理由は、まずは見てほしいから。盛り込みたい情報はたくさんあるのですが「1分ならば」と、手を止めてくれる人が増えると嬉しいです。
週に2回、YouTube、Instagram、TikTok、Twitter、Facebookで配信中。全て同じ内容なので、よく使うSNSで是非フォローしてください。
ただ、事業を収益化するため、YouTubeの登録者1000人を目指しています。取り組みに賛同していただけたら、まずはYouTubeのチャンネル登録をお願いしたいです。
また、このメディアの特徴は、動画をTwitterでリツイートしたり、Facebookでシェアしたりしていただくと、その数に応じて植林できる仕組みです。植林の費用は、社会貢献度の高い商品サービスを展開する企業とのタイアップ動画やYouTube広告で発生した広告収益から捻出します。
植林は、和歌山県田辺市を拠点に、伐採された山に植栽する「造林業」などを展開する林業ベンチャー「株式会社中川」さんと連携して実施しています。
「自分の大切な人や知人に教えたい!」と思われたら、是非拡散してください。
――これまでに取り上げた動画の内容をいくつか教えていただけますか?
現在の時点で、Twitterで最も多くの反響があった動画は『「余った資材はすべてゴミに」建築資材ロスとは』です。廃棄される食品や衣服などの問題に着目した「ロス問題」が注目を浴びる中、まだ認知が低い建築資材ロスにスポットを当てました。
建材のレスキューと販売に取り組む「HUB&STOCK」の代表・豊田訓平さんを取材し、業界の慣習を見直し、勿体無い材料を無くす取り組みを紹介しています。
また、『【秀逸なアイデア】難民を救うパソコンブランド「ZERO PC」が話題に』では、環境負荷ゼロ、難民ゼロを目指すエシカルパソコン『ZERO PC』について紹介。ブランド立ち上げの背景に迫りました。
今後も社会課題を広く取り上げていきたいと思っています。
また、どうすれば社会が良くなるかを伝えることも重要だと考えているため、問題提起に限らず、その解決策も取り上げる予定です。政治的なイシューや国会中継の切り取りなど、政治的なテーマにもチャレンジするのでご期待ください!
知ることで世界は変わる たった1分で社会が分かる情報発信に邁進!
――「人々の社会に対する意識を変える」という大きな課題に挑まれています。廣瀬さんが現在に至るまでの経緯を教えていただけますか?
原点まで振り返ると、幼い頃から「困っている人がいたら、何かしたい」と思う性格でした。親の育て方がよかったのかな(笑)。
今に至る大きな要因としては、高校時代に国際教育支援NPO「e-Education」創業者である税所篤快(さいしょあつよし)さんの講演を聞く機会に恵まれたことかもしれません。
高校時代まで落ちこぼれだった税所さんが、19歳でバングラデシュへ渡り、映像教育・e-Educationプロジェクトを立ち上げ、最貧の村に教育できる環境を作り、さらには国内最高峰ダッカ大学に10年連続で合格者を出す取り組みを行った話を聞き「特別な人ではなくても、行動することで世界を変えることができる。ならば自分も挑戦したい」と、強く思いました。
大学時代は、学校に通いながら報道写真家を志し、アルバイトでお金を貯めては東南アジアやアフリカ、大洋州の国々を取材。現地の様子や社会問題を発信し続けました。
しかし、太平洋に浮かぶ小さな島国キリバスの取材時に、自分一人で伝えるだけでは解決できない社会問題に打ちのめされました。キリバスは平均海抜は2メートルほどしかない島々からなる国で、人口は11万人ほど。地球温暖化で高潮被害や海岸浸食が頻発し、2050年までに島の5~8割が海面上昇で浸水する恐れがあるといわれています。
「どうしたらこのような問題の解決に取り組めるのだろうか…」。考えた結果選んだ道が社会起業家でした。
――入社後、Tomoshi Bito株式会社を立ち上げ、さまざまな事業を展開されていますね。
2018年3月の大学卒業後、ボーダレス・ジャパンに社会起業家として入社。4月には「社会問題への無関心をなんとかしたい」という思いから、Tomoshi Bitoを起業しました。
19年2月には若い世代をメインターゲットにしたニュースアプリを立ち上げるなど活動しましたが、意識が高い人に届くだけで問題解決に繋がらないことに気づき、同年11月に撤退。
次に教育事業に参入し、ボーダレスグループの企業と学生がタイアップして社会問題に取り組みました。この事業は現在も進行中です。
さらに、「無関心にならない社会を作るためには、社会的な情報に触れ続けることが必要」と捉え、20年7月に「RICE PEOPLE」を立ち上げ、社会的な発信に取り組むインフルエンサーのプラットフォームを構築。
誰もが発信者になれる「シビック(市民)インフルエンサー」を募集し、現在までに集まった千人以上の方たちと共に、環境に良い商品や世の中をよくするサービスをSNSで拡散。「RICE MEDIA」のコンテンツも、RICEのメンバーが拡散に参加してくれることで、より多くの人に届けられると考えています。
我々は情報を届けることをミッションとし、全力で邁進します!
――廣瀬さんの事業が成功した先の、理想とする未来とは?
誰もが幸せであり続けられる社会です。
そのためには、まず社会で起こっていること、そしてそれらを解決する方法を知ること、そして知り続けることが重要です。「RICE MEDIA」を通して、より良い社会に必要な情報を広く行き渡らせていきたいと思っています。
社会問題を解決するための第一歩を踏み出しませんか?
ボーダレス・ジャパンでは、様々な社会問題の解決に向けた「第一歩」になるようなステップを準備しています。
人や環境に配慮したサステイナブルなものを暮らしに取り入れる:「START:今日からはじめる」
ソーシャルビジネスを深く知る:書籍「9割の社会問題はビジネスで解決できる」
起業家や事業を支援する:「サポーターになる」
ソーシャルビジネスの作り方を学ぶ:社会起業家養成「ボーダレスアカデミー」
ぜひご自分にあったステップを見つけて、第一歩を踏み出してみてください。
ボーダレスの起業家のオススメ書籍をご紹介!
ボーダレスハウス
代表 李 成一
メディア、ジェンダー、人種差別などエッジの効いたテーマを「社会学」の視点から読み解いた一冊。無意識の思い込みにより様々な問題が引き起こされていることを再認識させてくれた一冊。社会学の観点から、社会問題の「向こう側」にある当事者の感情を想像してみる。そんな考え方に気づかされる一冊です。
最後までお読みいただきありがとうございました。
今回のインタビューは、ボーダレス・ジャパンが月に2回発信しているボーダレスマガジンのコンテンツです。
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