
2020年-2021年にかけて、コロナ禍によって生活やビジネススタイルが転換し、環境や人権に対する考え方も大きく変わりました。SDGsやESGという言葉もあちこちで聞かれるようになった今、ボーダレスの田口と鈴木はこの時代の変化をどう捉えているのか、2022年はどんな一歩を踏み出そうとしているのか、話を聞きました。
ソーシャルとビジネスが 近づいた2021年
――2021年はこれまで以上にソーシャルとビジネスが同じ文脈で語られているように感じます。実感はいかがでしたか?
田口:ビジネス本流の人達が、「ソーシャル」をおのずから語り始めた。これは2021年に顕著にみられた変化だと思います。
ボーダレスを創業した2007年ごろは、「ソーシャル」というと非営利活動や慈善活動と認識されていたり、ビジネス界では敬遠されていたように思います。経済を成長させることが最優先で、「ソーシャルは稼ぐ力のない人達がやるもの」なんて見下すような雰囲気さえありました。
この背景には、時代の要請があると考えています。
全てのステークホルダーが、経済性と社会性の両立について問いはじめた。これはトレンドではなく、みんなの意識の面で転換が起こったと言っていいし、とても良い変化だと感じます。
――持続的な社会を実現するためSDGsやESG(環境・社会・ガバナンス)という言葉もよく聞かれますね。鈴木さんはどう感じていますか?
鈴木:ESGのE:環境については技術開発も進んで選択肢も増えてきました。G:ガバナンス(企業統治)はルール作りなのでやることは明確です。
一方で、S:ソーシャルだけが具体的に何をやればいいか分からないという声を多く聞きます。
それでも最近は、これまで対象ではなかった人への商品やサービスが生まれてきていますよね。例えば、LGBTQの当事者のために30cmのパンプスを取り揃えたり、メンタルに不調を感じている方へのサービスができたり。
困りごとを抱えている人たち、これまで取り残されていた人たちに対する商品やサービスが出てきたことは、一歩進んだかたちだと思います。
鈴木:でも、これは従来のビジネスの延長ともいえます。取り残された人たちを巻き込んでビジネスをつくるというやり方は、まだまだ広がっていない。
ビジネスの分野では、効率性の追及によって取り残された人たちと出会う機会はとても少ない。だからこそ、想像もつかない。本当は自分の近くにもいるはずの、取り残されている人に気付けないことが、理由の一つだと考えています。
SDGsの飢餓や貧困といったテーマでは、社会問題を地球規模で大きく見すぎてしまい、何から始めていいかわからなくなっている。
ここが変わることで、ソーシャルとビジネスはもっと近づくことができる、その余地があると思っています。
「ソーシャルビジネス」とは あらためて何か
――そうした社会の変化の中で、ボーダレスグループがソーシャルビジネスに取り組む意義は何でしょうか。
鈴木:僕は、ソーシャルビジネスの本質を「チャンスの共有」と表現しています。”チャンスがない”という言葉は、資本がないとか、病気や障害があることと言い換えられるかもしれない。
どんな背景があっても、誰もがチャレンジできるということ。ビジネスの輪の中で、共に働き、価値を生み出していくことで、みんなが自立した人生を送って幸せになっていける。この状態を作っていくことですよね。
ケニアで小規模農家の貧困解決に取り組むアルファジリ
田口:少し概念的な話になりますが、一般には経済的合理性を超えてビジネスを展開するのはなかなか難しいですよね。
ソーシャルビジネスを標榜するボーダレスとしては、あえて経済性優先ではカバーできない、手を付けられない領域に取り組み、経済性も担保する。そこにこだわってやっていきます。
今後はここがビジネスのど真ん中になっていくと、僕は思っているんです。
難民状態の方を雇用しパソコン再生・販売を行うピープルポート
田口:「社会的な事業といえば?」と問われた時に、「これぞ!」という実例が、今はまだない。だから、企業活動としての「ソーシャル」が分からないと言われているのだと思います。
ボーダレスグループとしては、そうしたロールモデルになれていないことに素直に襟を正したい心境です。
そのため、来年からは僕も事業づくりに再び軸足を戻します。
田口:これまではボーダレスグループの全体設計や仕組みづくりに取り組んできましたが、やはり自らが先頭を切って、1人の事業家として奮闘していきます。
世間に広く商品・サービスが認知されていて、社会的なインパクトも出し、経済性も担保されている。
社会的な事業とはこういうもの、事業づくりとはこんなふうにやるのだという実例をたくさん作ることで、ソーシャルビジネスという形を示して行けたらと思っています。
気力に対して体力が持つかどうかが、今の一番の心配ですが(笑)。
――聞いていて、ワクワクします。
田口:2021年は書籍を通して、これまでボーダレスを知らなかった人達とつながることができたという実感があります。
またサポーターの方たちとの交流から、ボーダレスへの期待の声や応援の気持ちをじかに受け取りました。
そんな応援や期待を超えられるようにと、力がみなぎっています。来年も、ボーダレスグループを応援してもらえると嬉しいです。
ボーダレスグループが目指すもの
――来年の具体的な取り組みについて、もう少し詳しく聞かせてください。
田口:いま大企業では、既存事業をソーシャルな方向へ転換するのは難しいので、ソーシャルな新規事業を作ろうという流れがあり、よく相談を受けます。
「社会的な事業を作りたいけど、始め方がわからない」という方や、「社会的な事業開発ができる人材を育てたい」という企業の社員を、ボーダレスに受け入れて社会的な事業のつくり方を学んでもらえる機会づくりも計画しています。
ボーダレスだけでなく、より多くの会社がソーシャルな事業をつくっていくことに貢献できるんじゃないかな、と。
準備ができたらお知らせするので、ぜひ楽しみにしてほしいです。
鈴木:ボーダレスの環境やリソースを開いていくことで、グループの仕組みや事業の作り方、ビジネスの実例をヒントにしてもらいたいし、それをどんどん真似してもらって、新たな事業が増えていったらいいなと思っています。
たくさんのソリューションが社会実装されて、きちんとインパクトを残す。それを見て、自分もやりたい!という人達がもっと出てくる。そんな循環をイメージしています。
――本当に社会を変えていくための、新たな一歩ですね。
鈴木:グループの社長たちとも、「インパクトにこだわって、社会を変えていく本気の集団になろう」と再度確認しあいました。
ボーダレスグループは天才たちの集まりではない。だからこそ、本当に社会を変えていくには、「1つ1つにこだわりぬいて結果を出すということをベースに持ちつつ、大きな構想を持って動いていくこと」が大切なんです。1つのことをやり抜くというのは、「自分が設定した目標に対し結果が出るかどうか」なんです。
社会ソリューションは数とそれが見える化されていることが大事です。それが真似されて、様々な取り組みが広がり、もっと良いものが生まれていきます。
社会を変えるためには、やはりボーダレスはもっと真似される存在にならなきゃいけない。
そのために今一度、自分たちの足元を引き締めてやっていくつもりです。
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