
ボーダレス・ジャパンが手がけた最初のソーシャルビジネスである「ボーダレスハウス」。コロナ禍という未だかつてない大きなピンチを機に、改めて見つめ直した『ボーダレスハウスの本当の存在価値』とは?そこから生まれた新プログラムについて、代表の李にお話を聞きました。
私たちの資産は不動産ではなく
そこに住む人たちにある
――ボーダレスハウスは今年で13年目。ボーダレスグループの記念すべき最初のソーシャルビジネスですが、改めてどんな社会問題を解決する事業なのか教えてください。
ボーダレスハウスは人種・国籍・宗教・バックグラウンドなどの違いが原因で起こってしまう偏見や差別行為をなくして、お互いを認め合える「多文化共生」を目指したシェアハウス事業です。
当初は「日本に来る外国の方への支援」という発想でしたが、「日本人と関わりたい」と思っている外国の方と日本人が一緒に住んだら「お互いにいい経験になった!」という声が多数寄せられ、そこから事業の方向性が「多文化共生」へと少しずつシフトしていきました。
ボーダレスハウスが始まった2008年頃は「留学生30万人計画」や「インバウンド」という政府の施策がどんどん打ち出されていました。外国からたくさんの人を日本に呼ぼう、日本を世界に開かれた国にしよう、という意識が強まり外国人の受け入れが加速していた時期でもあります。そこに英語教育の見直しや、少子高齢化で人手不足という課題も加わり、世間にも「多文化共生」という言葉が一気に広がっていったように思います。
――そんな時代の流れにも後押しされ事業が進んできたんですね。ボーダレスハウスが、他のシェアハウスと違う部分はどこですか?
基本的に”コミュニティ重視”という原則が一番にあります。そのため入居希望者には
必ず「交流の意欲」を確認しています。
ボーダレスハウスのシェアハウスの価値は、不動産自体ではなく住んでいる人にあります。「外国の方と交流したい・友達になりたい」という気持ちが入居者全員にあるので、初日から友達ができるんです。
シェアハウスというのは、どこに住むかではなく”誰と住むか”が一番大切なことだと考えています。
異文化交流に対する意欲が強い入居者さんに住んでもらうことで、不安な気持ちで留学にきても、初日からローカルな友達ができ、ローカルな体験ができます。各ハウスの紹介ページには、どんな国の人が何人住んでいるのかも詳しく掲載していますよ。こうした運営は、他ではあまりないかもしれませんね。
コロナ禍で見つめ直した
ボーダレスハウスの価値
――2020年春から現在に至るまで、コロナ禍によって様々な業界が大打撃を受けました。ボーダレスハウスも厳しい局面だったかと思いますが、そのあたりのお話を聞かせてください。
入国制限や渡航制限が厳しくなったことで、日本に来る留学生がピタッと止まってしまったことが、かなり影響しました。
海外から来日してそのままボーダレスハウスに住むという流れが確立していたのですが、それがなくなり、外国からの入居者が集まらないことで、ボーダレスハウスらしさが発揮できないという苦しい時期が続きました。また、集団生活における感染リスク対策にも、運営者として気を張り続けてきました。創業以来、ボーダレスハウスに訪れた最大のピンチでした。
ボーダレスハウスには2~3ヶ月の短期滞在で住む外国人が多く、長く住む日本人にとってはたくさんの外国人と出会えるというところに大きな価値がありました。ところがコロナ禍によってその価値が揺らぎ、「ボーダレスハウスの存在価値って何だろう?」と根底から考え直すきっかけにもなりました。
そんな日々のなかで「気軽に外に出ることができない」「家で過ごすことが多い」からこそシェアハウスという形態に救われた人がいるということに、気付きました。リモートワーク中の息抜きにリビングで誰かと話しながら休憩できたり、飲食店のバイトがなくなってしまった外国籍の入居者に次の仕事の面接準備を手伝ってあげたり。
「大変な出来事や気持ちを共有できた」「孤独に感じることがなかった」という声を聞いて、コロナ禍においてシェアハウスは必ずしもリスクだけではないという事実に救われました。
遠くに行かずとも、生活の中で新しい体験はできる。ボーダレスハウスを通して何を体験させてあげられるだろう?という考えを突き詰めていった結果、『BH CAMP』という入居型インターンシッププログラムが生まれました。
本来なら、多くの人と出会い色々な経験ができるはずの大学生たちが今、「友達ができない」「留学もできない」という制限された状況にあります。そういった学生たちにフォーカスし、自分の将来について考える機会を提供するのが『BH CAMP』です。
――『BH CAMP』とはどんなプログラムなのか、詳しく聞かせてください。
『BH CAMP』は大学生がシェアハウスに住みながら、ソーシャルビジネスのインターンシップをオンラインベースで受けられる2ヶ月間のプログラムです。シェアハウスに住むことで新しい仲間や価値観と出会い、自己を高めていく機会を提供すること。社会人になる前の職業体験、それもソーシャルグッドの観点が入るビジネスの体験やそこで働く人たちとの接点をもてること。この2つの価値を提供することで、大学生に対しどういう価値観でどういう仕事人になりたいのかを考えてもらいたいと思っています。
おかげさまで定員を大きく上回る応募があり、1期生には21人、2期生には40人が参加しました。集まってくる学生さんたちは、社会貢献やソーシャルビジネスに関心があり、ボーダレスハウスの家賃分を支出してでも学生時代に行動を起こしたいと考えるアクティブな人が多い印象です。
現在11月からの3期生を募集しています。気になる方はぜひ説明会にお越しください。
暮らしの中で変化を起こせる
シェアハウスの可能性
――留学ができない今、ボーダレスハウスが担う役割はとても大きいですね。『BH CAMP』の手ごたえを経て、新たにスタートしたのが『English Only Policy! EOPハウス』ということですが、こちらのプログラムについても教えてください。
入居者がボーダレスハウスを選ぶ動機の一つに、「英語」を上達させたいというニーズがあります。これまでも、ハウスの中に外国からの入居者が複数人いたため、英語を自然と話す環境がありました。
そんななか、昨年からは、海外留学に行けなくなった代わりとしてボーダレスハウスを選ぶ大学生が増えています。そこで、彼らのニーズにもっと答えられるよう、英語学習に特化した『English Only Policy! EOPハウス』をスタートさせました。
EOPハウスでの会話は、原則英語。さらに英語話者との英会話レッスンも用意しています。そんな英語漬けの環境、まさに留学している感覚で英語力を向上していってもらえばと思います。
留学に行けなくても、英語にどっぷり浸れる環境はある!
学生の皆さんが今後世界に羽ばたいていく後押しになれば嬉しいです。
今まさに入居者募集をし始めたところです。留学やワーキングホリデーの機会が失われてしまった人たちの、旅の準備期間となるよう全力でサポートしていきます。
――コロナ禍で自分たちが提供できる価値をとことん探究し、辿り着いた『EOPハウス』という新たなチャレンジ。どんな人に門戸を叩いてほしいですか?
『コロナによって留学がキャンセルになってしまった。』
これを「仕方ないよね」と聞き流してしまうくらい、今は行動の制限が当たり前になってしまいましたよね。
でも、当事者の心境はどうでしょうか。
一生に一度、夢みた留学が絶たれてしまった学生たちの悲しみや悔しさは計り知れません。
だからこそ、国内でも今できる選択肢があるということを伝えたい。
そしてコロナ禍で薄れてしまった「人との関り」がもたらしてくれる新しい刺激や日々の彩りが、シェアハウスでなら体験できます。
留学自体はキャンセルになってしまったけど、英語をもっと学びたい!違う文化と触れたい!何かを変えたい!そんな人たちに、「まずは1ヶ月から」「環境を変えてチャレンジしてみよう」と一歩踏み出す勇気を持ってもらえたら嬉しいです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
今回のインタビューは、ボーダレス・ジャパンが月に2回発信しているボーダレスマガジンのコンテンツです。
マガジンでは、ボーダレスグループの最新イベント情報や限定コンテンツ・クーポンの発信などがありますので、ぜひご登録くださいね。
▶ボーダレスマガジン登録はこちら。
▶バックナンバーはこちらから。