難民認定率が世界でも目立って低い日本。こうした難民問題の認知度を高め、当事者である難民メンバーに居場所をつくるためのビジネス「ZERO PC」。この事業を行うピープルポート株式会社の青山社長に、難民を取り巻く現状と今後のビジネス展望について聞いてきました。
今回話を聞いたのは・・・

photo ピープルポート株式会社 代表取締役 青山明弘
1990年生まれ。祖父母の話から戦争・紛争に課題意識を持つ。カンボジアで、内戦経験者へのインタビューをきっかけに、ソーシャルビジネスでの戦争・紛争解決、および被害者の支援を志す。
ピープルポート株式会社を創業し、環境負荷ゼロ、難民ゼロを目指すエシカルパソコン事業「ZERO PC」を展開中。

photo 聞き手ライターほっしー
コピーライターとして取材や広告制作、企業研修講師をしつつ、奄美大島で塾を経営。
デンマーク留学帰りの妻から、サステナブルな子育てを仕込まれ中。人まず株式会社代表

難民問題にも、環境問題にも貢献できるZERO PC事業


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ほっしー 来たる6月20日は「世界難民の日」(World Refugee Day)なんですね。
青山 国連総会で2000年に決議されたんですよ。元々は「アフリカ難民の日」だったんですが、難民問題への世界的な関心を高めるために、「世界難民の日」として制定されたようです。
ほっしー 少し調べてみたんですが、日本では難民認定者数が2020年は47人、認定率1.7%。とても狭き門なんですね。
青山 はい、ここ数年は1年に1万人程の申請者がいますが、他の国であれば難民として認められるであろう状況の方々が多くいると言われており、とても厳しい結果です。
その上、先日は出入国管理法が難民により不利な内容に強行採決されそうになり、大きな話題にもなりました。
ほっしー 難民の方々に対してもう少し配慮のある状況にするためには、どうすればいいんでしょう。


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青山 難民問題については制度上の課題もありますが、もっと多くの方がこの問題に目を向けてもらうことが大切だと考えています。ある程度まとまった民意が生まれてくれば。
ほっしー なるほど、そういう狙いもあり、ZERO PC事業を始められたんですね。
青山 難民問題に関する認知を高めることはZERO PC事業の一つの目的です。
現在、私たちのサイトには月間1万~1.5万のPVがありますので、徐々に認知は広げられていると思います。また、難民申請中の方々の職場として居場所をつくれないかという想いもあるんです。
ほっしー 居場所としての職場づくりですか。
青山 難民の方々も、たとえば一ヶ月前までは母国で普通に仕事をして、家族と暮らして、彼らなりの日常があったはずなんです。
それが、予期せぬ事態から今や日本で保護対象になってしまっている。
この無力感はキツいと思うんです。だからこそ、彼らが求められ、感謝される状況をつくれないかな、と考えていたんです。


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ほっしー PC再生に目を付けた理由は、環境負荷を減らすことだけが目的ではなかったんですね。
青山 はい、PCは知識差が大きく出る商材ですから、少しでも勉強して知識をつければ、色々な方から頼られるポジションがつくれる。仕事を通して社会に貢献し「ありがとう」を集められれば、彼らの居場所ができていくのではないかと考えました。
ほっしー 改めて、ZERO PCのビジネスについて教えていただけますか?
青山 企業や個人から不要になったPCをお引き取りし、中身を整備します。
心臓部品は新しいものに入れ替え、使える部品は再利用し、再生PCとして販売しています。
事務所の電力も実質100%自然エネルギーを使用しており、新品のパソコン製造時と比べ排出されるCO2を90%削減できる、環境に配慮した商品であることが特徴です。
価格も、新品と比較すると半額以下です。


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青山 また、購入の過程で、難民問題について知っていただけるようにコミュニケーション設計をしています。
販売は、Webサイトのほか、ショッピングモールの展示会でも行っています。
ほっしー お手頃に高機能PCが手に入るだけでなく、環境負荷も減らせる。
そして難民の方々への支援にもなる。
環境に配慮されたPCってあまり見ないので、大きな特徴ですね。

難民の方々はどんなお仕事をされているんですか?
青山 彼らにはパソコンを整備する工程を任せています。
この工程の知識・技術がつけば、世界のどこでも活躍できるようになりますから。
現在難民メンバーは2名、これまで累計で4名の難民申請中の方が入社しています 。

難民ではなく、一人の人間として当たり前の居場所をつくりたい


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ほっしー 御社の中にはどんな方々がいらっしゃるんですか?
青山 難民メンバーを含め、総勢10名ほどで動いています。
ほかのメンバーも、難民を取り巻く状況につよい問題意識を持っており、難民問題の現場を見るために、パレスチナに訪問した者も3名います。
ほっしー すると日常的にも真剣な議論が生まれていそうですね。
青山 そうですね。ランチタイムは皆で一緒に過ごすようにしているんですが、政治に関する話題は多い気がします。
ただ、他愛もない普通の会話もしますよ。難民メンバーが日本語の試験を受けるというので、皆で一緒に問題を解いてみたり。
また、月に一回は何かしらのイベントを企画しています。
先日は、ジブリの映画を皆で見よう、と「もののけ姫」上映会をしました。


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ほっしー オフタイムの交流機会もつくられているんですね。
青山 文化的背景が違うことで、ミスコミュニケーションが起きやすいんです。そこを超えるために、お互い率直に想いを伝えあうための土壌づくりは大切ですからね。
ほっしー やはりそうした衝突はあるんですね。
青山 彼らの母国語は英語やフランス語であることが多いのですが、私たちは英語を使ってコミュニケーションを取っているんです。
お互い母国語以外でのやり取りなので、伝えきれない部分がどうしても出てきますからね。
とはいえ、この多様性のおかげで学びの機会は増えましたし、率直な意見交流が増えオープンな雰囲気が生まれました。組織としても嬉しいことです。
ほっしー 難民の方々のイメージが少し変わってきますね。


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青山 私もこれまで数十名の難民とお会いしてきましたが、日本にくる方々は、母国でもモチベーション高く活動されていた方が多い印象があります。
企業経営者、獣医、デザイナーなど職種は様々ですが、概してポジティブなエネルギーを持った方々。ただ、日本語という言語の壁は大きいので、ZERO PCではたらくメンバーには週1で日本語を学ぶ機会を提供しています。
ほっしー 実際、仕事を通しての交流はできているんでしょうか?
青山 私たちも街の方々に彼らをもっと見てほしいと思っているんです。
たとえば、お客様の所へ一緒に納品に行き「このPCは彼が全部整備しました」と紹介したり、オフィスに来た修理希望の方の目の前で整備をしてもらったり。


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青山 難民だから、という視点ではなく、身につけたスキルに対して「ありがとう」と言っていただけるシーンをどうつくれるか意識しています。
ほっしー それはご本人も嬉しいでしょうね。
青山 ええ、その時は目がキラキラと輝きますね。
難民と聞くと、周囲の目はネガティブな面に向いてしまうんです。
そんな立場では居心地が悪いじゃないですか。
だからこそ、ポジティブなことを発信できるようにしたいと思っています。

学校の講演に呼んでいただく機会もあるのですが、約300名の前に立って自分の国の魅力や自分の仕事について、彼らの口から前向きに伝えてもらっています。

先に見据える新事業の可能性ビジネスだからこその道を探る


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ほっしー すると今後は事業を拡大して、難民メンバーの雇用を増やすことが目的ですね。
青山 目標は100名採用です。難民であってもビジネスパーソンとして通用するスキルを身につけられる環境を広く用意したい。同時に、彼らにとっても自分を出せる場であり続けることも大事にしたいです。
幸い今のメンバーも「この職場で、このメンバーでよかった」と言ってくれています。
ほっしー 売上が上がるほど、難民問題の認知度も、実際に雇用できる人数も増やせる。そして大きな民意も形成していける。それが一つの方向性ですね。
青山 はい、ただ、難民申請認定が今後劇的に向上することは見込みづらい。なので、地域や社会に貢献できる他の新事業を立ち上げることも検討しています。


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青山 プログラミングやシステム開発など、言語の障壁を超えやすいものや、介護、農業など社会問題に直結するものなど。
また、難民認定に固執するのではなく、ビジネスパーソンとしてのビザ取得を目指していってもいい。
ほっしー 技術・人文知識・国際業務としての在留資格の取得を目指す、ということですね。
青山 はい。母国で大学を出ている方々も多いので、簡単ではないですが、不可能でもないと考えています。
さらに言えば、日本という環境を飛び越えてしまってもいい。
ビジネスとして取り組んでいるからこそ、在留資格も発行でき、国境に縛られずに活動することもできます。


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ほっしー それができれば、さらに多様な人材を受け入れていけるでしょうね。
青山 今はZERO PC事業をコツコツと展開していくことが重要ですが、将来的には、様々な手段が検討できます。
難民問題というソーシャルコンセプトはずらさず、そこに向かうための手法はいくらでも試すべき、という考え方です。
ちなみに、個人的には環境に100%配慮したPC開発を行うことが理想で、これも実現したいと考えています。
ほっしー ZERO PCを超えたエシカルパソコンですね。実現されるのが楽しみです


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青山 ところで、私たちも日々様々な方とお話をするんですが、難民問題の様な社会問題って、自分とは遠い印象があるじゃないですか。
ほっしー はい、その感覚はよくわかります。問題が大きすぎて、自分の力では何も変えられないと思ってしまいます。
青山 やるからにはフルコミットしないといけない、みたいな意識もありますよね。
でも、そういう考え方は捨ててしまったらいいと思うんです。
ほんのちょっとの配慮、たった一回の選択、個人としてはそんなレベルでいい。その選択の積み重ねが社会をつくっていく訳ですから。


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ほっしー そう考えると、アクションにも前向きになれそうです。
青山 ええ、「何かしたいけど、複雑すぎて何をしていいかわからない」と考えている方も少なくありません。
難しく考えず、まずはこの問題を知ってもらうだけでも私たちとしては嬉しいんです。
世界難民の日(6月20日)に、海外で難民支援活動をされている方をお招きし、オンライントークイベント「難民支援の現場に聞くリアルな話」を行う予定です。
ほっしー リアルなお話が聞けるのは、貴重な機会ですね!
青山 また、日常の無理のない選択が社会問題解決をすすめる、そんな選択肢をつくることも我々の役目なんだと思っています。新しくPCを購入する際に、低価格でお手軽なZERO PCを選ぶだけで、難民や環境問題にアプローチできる。そんな選択が広がっていくといいなと思います。

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