若者の見えないホームレス問題に取り組むRelightは、
寮付きの仕事を紹介する「いえとしごと」に加え、
保証人や身分証がない方向けの賃貸サービス「コシツ」を3月より開始。
その「コシツ」について、同社代表の市川加奈さんに話を聞きました。
今回話を聞いたのは・・・

photo Relight株式会社 代表取締役社長 市川加奈
ホームレス問題に興味を持ち、2016年ボーダレス・ジャパンに新卒入社。同グループ会社で経験を積み、2019年2月にRelightを創業。同年4月に自社サービス「いえとしごと」、2021年3月には2つ目のサービスとなる「コシツ」をスタート。

photo 聞き手 ライター 佐々木恵美
フリーライター&エディターとして数千人を取材。ボーダレスの理念や活動に感銘を受け、客観的な視点で情報を発信している。

「いえとしごと」には2年間で
約4,000人がエントリー!


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えみ ホームレス状態の方向けに寮付きの仕事を紹介する「いえとしごと」を始められて、約2年が経ちましたね。
昨年3月のメルマガで、750人のエントリー(相談お問い合せ)があったと言われていましたが、その後はどうですか?
いっちー エントリーが続々と増えて、この2年で累計4,000人ほどになりました。
しかしながら、「今は困っていないけど、何かあった時のお守りとして登録した」という方や、対象エリア(関東圏)以外の方などもいらっしゃって、実際にお仕事につながったのは250人ちょっとです。
中には過酷な生活が続き体調が悪すぎて仕事どころではない方もいらっしゃり、そうした場合は行政の窓口や支援団体さんを紹介することもあります。


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えみ お仕事紹介以外にも、その方の状況に合わせたサポートをされているんですね。それにしても、4,000人とはすごい!
いっちー そうなんです、私も驚きました。事業が認知されたことに加えて、コロナの影響で失業者が増えたこともあり、現在は月200人前後のエントリーがあります。
約20年前から、ネットカフェや違法シェアハウスに寝泊まりしている「見えないホームレス状態の人」が出てきて、東京都では2018年の調査で約4,000人がネットカフェで生活しているという推計があります。
その人数以上の方にサービスを届けることができました。
えみ 必要とされているサービスだったんですね。どんな方がエントリーされていますか?
いっちー 20・30代の方が約6割です。
当初は就職氷河期の30代後半から40代をメインに想定していましたが、ウェブから気軽にエントリーできる仕組みが、
「いきなり役所にいくのはハードルが高い、まずはウェブで情報収集してみる」という若い方の行動パターンにはまったようです。

自分で家を借りられない人に
個室を提供して生活を立て直す


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えみ 3月1日にスタートされた「コシツ」は、どんな事業ですか?
いっちー 自分で家を借りられない方向けに個室を提供するサービスです。生活を立て直してもらうことを目的としています。
えみ なぜ「コシツ」を始めたのですか?
いっちー 「いえとしごと」をやっていると、「仕事は自分でどうにかなるから、家だけ探している」という相談が結構あったんです。
なので、家に関わる事業もしたいという思いが募りました。
それに、どんな状況下でもやりたい仕事にこだわる方が多い、という実感もあって。
「そんな状況なのに仕事を選ぶから生活を立て直せないんだ」という意見もあると思いますが、無理して就職しても続けられなかったら意味がないので、本人の「やりたい」を尊重したいと思うようになりました。
しかし、住み込みのお仕事だと業種が限られてしまうため、他の切り口でサービスを展開していく必要がありました。
えみ なるほど、だから家だけ切り出して事業をしようと。


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えみ 自分で家を借りられないというのは、具体的にどんなケースがありますか?
いっちー 身分証・保証人・緊急連絡先・携帯がなく、入居審査自体を受けられないことを想定しています。
例えば、先日面談に来てくれた方は、貯金はあるけど、1年ほど病気で仕事を休んでいたので収入証明が出せず、保証人もいないので入居審査を通らないということでした。
他には、友人とルームシェアをしていたけど相手の引越により解消して、とりあえず別の友人宅に居候して職場に通っていると、居候先に住民票を移せないから住所不定扱いで身分証が発行できず、次の家を借りられないとか。
えみ 保証人として、実家や親戚は頼れないのでしょうか?
いっちー そうなんです、親との関係がうまくいかずに家を飛び出したので親には頼れないという方も多くて、身分証や保証人の壁にぶつかってしまうんです…。

相手に寄り添いながら
入居後もしっかりサポート


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えみ 「コシツ」は、どんなシステムになっていますか?
いっちー 弊社と入居希望者さんで部屋を探し、弊社が物件を借り上げて入居希望者さんに貸します。そして、家を借りる前から入居後も生活の立て直しをサポートしていきます。
えみ えっ、Relightで物件を借り上げて、入居者さんから家賃を回収しつつ、生活をサポートしていくのですか!
もし入居者さんが家賃を払えなかったら…会社としてはリスクがありますよね。
いっちー はい、いろんな方に「本当にやるの!?」と驚かれました(笑)。
しかし、入居前にリスクばかり考えてしまうと審査が厳しくなってしまい、既存の賃貸物件と同じになってしまうので、まずは入居していただいて、そこから今後のことを一緒に考えていきます。
そして入居後に住民票などの書類を揃えて、しっかり家賃を払えるような生活ができるように、私たちが全力でサポートします。
えみ では、入居者さんがそこに住んでいる間は、ずっと関わることになるのですね。
いっちー その長い関わりこそ、私たちの願いなんです。
Relightが目指しているのは「何度でもやり直せる社会をつくる」こと。いえとしごとでは、求職者さんに寮付きの仕事を紹介して就職できれば、その方にとって私たちとの関係は終わりかもしれない。
だけど、私たちは「あの方はどうしてるかな」とずっと気になるんです。就職しても仕事になじめなかったり、お金の管理ができなかったりして、辞めてしまう方もいますから。


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えみ 人材紹介会社なら人の紹介、不動産屋なら物件の紹介によって仲介料をもらうことがゴールというところが多い中、Relightはスタンスが違いますね。
いっちー そうですね、相談に来られる方の生活を立て直すことがゴールですからね。
えみ 相手に寄り添い続けているんですね。いっちーさんは陽気だから、明るいセーフティネットという感じがします。
いっちー いろんなケースがあって、毎日予想外のことが起こって、楽しいですよ。
えみ 予想外のことも楽しめる、というのはすごいなあ。いっちーさんが落ち込んでしまうことはないですか?
いっちー だいたい寝たらすぐ忘れちゃう性格なんです(笑)。
でも、最初は赤字の中で、求職者さんの紹介に自分たちの人生もかかっていると思うとお腹が痛い日々が続きましたが、それでも利益のために無理やり就職させないと決めてました。
紹介した方がある日突然いなくなって取引先の担当さんやNPOさんに迷惑をかけて謝って…人生で一番謝ってたと思います。それでも、私たちに出会って生活を立て直していく方が増えてきてからは、自分たちの事業に自信を持てるようになりました。
えみ 広い心で皆さんを受け入れているんですね。
いっちー 人にはそれぞれタイミングがあるんだなと思います。面談の約束をしていたのに来なかった方が、1年後に突然来たりして。
こっちのペースに合わせようとすること自体に無理があり、皆さんのタイミングで来られたときに応えられるように、私たちはしっかり整えておきたいですね。


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市ヶ谷のオフィスに来た求職者さんと

えみ いっちーさんになら相談しやすそう。
いっちー あえて、ゆるい感じにしてます。役所とかは堅苦しいから苦手という方や、上から物を言われるのがすごい嫌という方もいますからね。
話しにくいことでも何でも話してもらえるような雰囲気を心がけています。
とはいえ、もともとの私の性格も大きいかもしれません。
私はよくしゃべるタイプですが、ちゃんと話を聞いてくれる落ち着いた男性スタッフもいるので、ご安心を(笑)。

個室をお持ちのオーナーさんと
より良い社会をつくりたい


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えみ 今は「コシツ」を利用される方はもちろん、部屋を貸してくだる方を大募集されているとか。
いっちー はい、「コシツ」は、私たちに物件を貸してくださる方がいらっしゃらないと成り立ちません。事業を始めたばかりなので、連携してもらえるオーナーさんを探しているところです。
えみ 物件はRelightの借り上げなので、オーナーさんは家賃回収の心配がないというのは大きいですね。物件の条件はありますか?
いっちー 完全個室のお部屋で、当面は1都3県エリアを想定しています。まずは私たちが会いに行ける距離から始めて、しっかり仕組みを作り、将来的には全国に広げていくことを目標にしています。


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えみ 今は審査が厳しくて物件を借りにくくなっているけど、少子高齢化や物件間の競争によって、これから空き家は増えそうです。
いっちー そうなんです、借り手が減っていく中で「コシツ」のモデルをいち早く確立することは、家を借りたいのに借りられない方にとっても、オーナーさんにとっても、社会にとってもいいことだと考えています。
部屋を貸してくださることが、本当に困っている方の人生を立て直すことに役立ち、部屋を借りにくいという社会問題の解決にもつながります。
ぜひ私たちと一緒により良い社会をつくっていきませんか。少しでも興味を持ってくださった方は、ぜひこちらから気軽にご連絡いただけるととてもうれしいです。

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