2017年にSunday Morning Factory株式会社(以下、サンモニ)と
自社ブランドHaruulalaを立ち上げ、バングラデシュの自社工場で作ったベビー服を日本と台湾向けに販売している中村将人さん。
環境問題など様々な課題に直面しながらも、コロナ禍に社員を増やして、次なるチャレンジを狙っています。その詳細を聞きました。

今回話を聞いたのは・・・

photo サンデーモーニングファクトリー代表取締役社長 中村将人
1986年、茨城県生まれ。2010年、ボーダレス・ジャパンに初の新卒社員として入社。2017年3月にSunday Morning Factoryを創業してベビー服ブランド「Haruulala」を軌道に乗せ、さらなる展開を計画中。

photo 聞き手 ライター 佐々木恵美
フリーライター&エディターとして数千人を取材。ボーダレスの理念や活動に感銘を受け、客観的な視点で情報を発信している。

この1年3か月で
現地社員が60人→160人に


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えみ 中村さんは2019年9月のメルマガで、自分を“ドM”と言われていましたね(笑)。改めてサンモニの事業を簡単に教えてください。
中村 バングラデシュの児童労働をなくすために、ベビー服Haruulalaの製造・販売を行っています。日雇いで収入が安定しない親のかわりに、子どもたちがうつろな目で働いている姿に衝撃を受けたのがきっかけで2017年に立ち上げました。
えみ 新卒で入社されて、7つ目の事業で初めて軌道に乗ったとか。
中村 バングラデシュの児童労働をテーマに、蜂蜜やおもちゃ、旅行などいろいろ模索して、ようやく立ち上げることができました(泣)。


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バングラデシュでココナッツ事業の市場調査中の写真

えみ 前回、現地の工場で働いている社員は60人と言われていましたが、1年3か月経った今は?
中村 160人以上に増えました。
えみ おー、急増ですね!なぜ?
中村 OEM(他社ブランドのアイテムの製造)を始めたんです。自分たちの商品をうまく作れるようになったので、お客様の分も作れると思って。
えみ コロナが流行っても、現地の工場は動いているのですか?
中村 ロックダウンした3月末から1か月半は閉めましたが、今はしっかり感染対策して動いています。
えみ ちなみにロックダウン中のお給料は?
中村 もちろん払ってます、雇用を創るために作った工場ですから。
えみ 素晴らしい。昨年9月には台湾向けの販売も始められたそうで、厳しい中でもチャレンジをされているのですね。
中村 でも、昨年はチャレンジが少なかったと反省しています。つぶれないよう守りに入ってしまい、コロナのピンチをチャンスに変えられなかったのは経営者として失格だなと…。
えみ 私からすると十分攻めてる感じですが、さすがドMですね(笑)。

おさがりタグ、素材、包装まで
環境への負荷を減らす


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えみ サンモニでは環境に配慮した取り組みを進めているそうですね。おさがりネームタグ」は、シンプルだけど画期的なアイデアで、SNSやニュースでも話題になりました。アイデアはどこから?
中村 社内のお母さんたちから「おさがりをあげたりもらったりするとき、子どもの名前を書いていると困る」と聞き、3人分の名前が書けるタグを開発しました。特にベビー服は短期間しか着ないから、おさがりを活用する機会も多いんですよね。
えみ 身近なところから生まれた企画なんですね。
中村 はい、大手ブランドから「マネしたい」と問い合わせいただき、「ぜひどうぞ」とお応えしたこともあるんですよ。


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えみ オーガニックコットンもこだわりの一つですね。
中村 創業して間もなくオーガニックにしました。農家さんの健康や土壌を害さず、かつ普通のコットンを作るよりCO2を46%削減できて、地球温暖化の防止にも役立つんです。
えみ 創業時は違ったのですか?
中村 オーガニックだとロットがとんでもなく大量で、立ち上げ期は資金が乏しく在庫を抱えるリスクも怖くて、できなかったんです。半年ほどで事業の見通しが立ったので、次の発注からオーガニックに切り替えました。
えみ ちなみにオーガニックだと原価が上がりますよね?
中村 そうなんです、でも、大切なところですから。


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中村 あと昨年10月、工場にソーラーパネルをつけたのと、包装にも気を配っています
えみ 包装ですか。
中村 ギフトボックスでプチプチを使っていたのですが、段ボール自体に工夫してプチプチを使わないようにしました。それからOPP(二軸延伸ポリプロピレン)をバイオに切り替えたり、バングラから日本に送るときのOPPを減らしたり。
えみ 少しずつ積み重ねていますね。
中村 どれもネックは量で、少量だと取引できないんです。だから、売れるようになるとできることが増えていきます。一方で、想いを持ってチャレンジする人が最初から使えないというのは大きな課題だと思っていて、いつか少量でも対応できる資材の事業を作りたいという思いもあります。
えみ やっていくうちに課題が見えてくるんですね。

子どもの未来を守るため
環境と母親にアプローチ


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えみ なぜ環境への取り組みに力を入れるのでしょうか?
中村 アパレルをやってみると、いろんなことが見えてきました。実は、アパレルは“世界第2位の環境汚染産業”と言われるくらい、大量の水を使い、水や土壌を汚染し、CO2排出量は全業界の約10%を占めています。
えみ 衝撃の事実!
中村 近年、地球温暖化への警鐘が強まっています。僕らはバングラの児童労働の問題を解決し、子どもたちが夢を描ける希望に満ちた未来を作りたいと思って事業をしているけれど、このまま地球温暖化が進むと、彼らはもちろん全人類にとって希望が持てない状況になってしまいます。
えみ うーむ、そうですね。


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インドネシアでの植林活動

中村 だから環境を守ることもすごく大切だと思い、会社の軸にしています
えみ そんな気づきって、どんなタイミングで?
中村 ボーダレスグループにいると、いろんな社会問題を知り、自分の事業を見直す機会がたくさんあるんです。それに渦中に入ると見えてくる問題も多く、いろんな刺激を受けて、その都度考えるという感じです。


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ボーダレス・ジャパンの社長たちと

レディースとメンズの
新ブランドで雇用を増やしたい


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えみ 今後の展望は?
中村 まずバングラでは、今の工場でもっと雇用を増やしたいです。
えみ 工場はどんな地域にあるのですか?
中村 ダッカから車で1時間ほどの郊外です。当時はまわりに何もなくて雇用を作ろうと工場を建て、他に働き口のないシングルマザーやスキルのない人たちを雇用してきました。ただ、この数年で近くに工場が建ち始め、にぎやかになりました。
えみ それでもサンモニを選んで働きに来てくれるのですか?
中村 それが、近くに工場が増えても、働く環境はあまり良くないようで。狭いところに箱詰めで10数時間働き、給料が未払いとか…。そんな環境で働いていた人が、僕たちの工場に逃げるようにやってくることも。村長さんが「あそこはいい工場だ」と紹介してくれたらしく。
えみ 地域で評価されているのですね。


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中村 僕たちの工場に働く人が流れてくると、他の工場は自分たちの労働環境を改善するしかないでしょう。最初はただ雇用を作りたいと思っていたけど、今は地域の工場のあり方も変えていけるかもしれないと思っています。
だからHaruulalaの事業を大きくして、さらに雇用を創り出し、周りの工場へも影響を与えられるようになるのが目標の一つです。
えみ 他の地域への展開は?
中村 もちろん、雇用を必要としている地域はたくさんあるので、広げていきたいです。僕らは1ブランド1ファクトリーで考えていて、今年はレディースのブランドを立ち上げ、新たな地域で工場を作りたいと思っています。メンズも計画しています。
えみ わー、新たなブランドが楽しみです。
中村 ありがとうございます。日本ではまだまだエシカルブランドが少ないので、日本側では、できるだけ環境に負荷をかけない服を作り、その選択肢を増やしていきたいと思っています。


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えみ 児童労働の解消からスタートして、視界が広がりましたね。
中村 今は従業員160人だから、関わる子どもは300人くらいかな、まだまだインパクトはほんのわずかだけど手応えは感じています。一人の人生に携われるだけでも本当はすごいことで、子どもたちの人生を明るくしていきたいです。
えみ そうですね、ソーシャルインパクトが大事だけど、原点は一人ひとりの幸せですね。
中村 数を追いつつ、一方で目の前に今いる仲間を大切にしながら、もっともっと大きなインパクトを出せるように頑張っていきます。
えみ 現在新たな仲間として、インターンシップも募集されているとか。
中村 はい、アートディレクターとデザイナーのアシスタントとして働ける方を募集しています。
サンモニの事業に共感し一緒に情熱を持って働くことに興味がある方は、ぜひ詳細を見ていただきたいです。

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最後までお読みいただきありがとうございました。

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