2020年10月より、ボーダレスグループの37社目の事業としてスタートした#ママバラ(以下、ママバラ)。
7年間の子育ての後、産後うつと診断された自身の経験からママバラを立ち上げた、代表の上条厚子さん(以下、あつこ)にお話を聞きました。
今回話を聞いたのは・・・

photo #ママバラ代表取締役社長 社長 上条厚子
1981年生まれ。2児の母。自身の経験から、産後うつの原因が情報格差にあると実感し、2018年に市民団体を設立、翌々年にNPO法人化。産後うつや児童虐待の“予防”を目指し、ボーダレスグループに参画。
12/1放送のNHK名古屋「まるっと」に出演。

photo 聞き手 ライター 
AMOMAよみものライターを経て、ボーダレス・ジャパンに入社。裏方として様々な事業と関わる。埼玉在住、1児の母。

ふみこ 厚子さん、こんにちは!プロフィールを拝見したら同い年だったので、とても親近感が湧いてました。私も現役の子育てママなので、本日はお話しできてうれしいです、よろしくおねがいします!
あつこ こちらこそ、よろしくおねがいします!
ふみこ まずはママバラの事業目的を教えてください。
あつこ ママバラが解決したい社会問題は、産後うつと児童虐待の増加です。
私自身も7年間子育てに専念してきた結果、体調を崩し産後うつと診断をされ衝撃を受けた経験があります。
私と同じようなお母さんたちを減らしていきたいと思い、事業を立ち上げました。
ふみこ どのようにその問題を解決していくんでしょうか。
あつこ 産後うつや児童虐待予備軍のお母さんたちに直接リーチして”予防”することで、手遅れの状態に陥る人を減らしていきます。


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無自覚な産後うつ予備軍期

ふみこ 予備軍のお母さんたちへはどのようなアプローチをしますか?
あつこ まずは、ママライフバランスという概念を認識してもらうことが大切だと思っています。
現役で子育て中の皆さんに対し「ママとしての私」と「大人としての私」という二軸で意思決定をしてもいいんだよ、という考え方をママバラを通して伝えていきます。
ふみこ 実は私も完璧主義なところがあり、産後うつになる可能性は十分にありました。考え方を変えるきっかけに出会えるかどうかは、とても重要ですよね。
あつこ 本当にそうですよね。私は出産後、「大人としての私は0、ママとしての私が100、という状態が母親としての理想像だ」と思い込んで、7年間子育てに専念しました。
その結果が産後うつにつながり、「大人としての私」を0にしてはいけないということに気付かされました。
ふみこ そういった一般的な母親像に考え方が縛られる人は意外と多いと思います。


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産後うつと診断される半年前

あつこ 子育て中は「母親はこうあるべき」といった理想像により近づくため、かなり無理をしています。
外側は笑っていても、知らず知らずのうちに中身がボロボロになっているお母さんが多く、問題が見えにくいんです。
それが、産後うつや児童虐待に周りが気付いてあげられない原因だと思います。
ふみこ 子育ての悩みの共有がいまいちうまくいかないのって、子どもの成長と共にその悩みをどんどん忘れていくからっていう原因がありませんか?
あつこ その通りです。ママバラを立ち上げたのは、「辛かった私がその時一番欲しかった場所をつくりたい」と思ったからです。
色々とリサーチしていく中で、育児に関する掲示板なども覗いてみました。そこには、12年前に私が悩んでいたことを、今でも同じように悩んでいる人がいました。


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ママバラの未来に賛同するメンバーとの初回の企画会議

ふみこ 子育ての悩みって今も昔も、そんなに変わらないってことですね。
あつこ 子どもの成長と共に悩みが変わるし楽しいことも出てきて、お母さん本人は先に進んでいくけど、子育て現場には循環がなくずっと辛いままなんですよね。
そういった子育て現場の変わらない状況を見て、「専門家ではなく当事者たちの知恵袋を正しくシェアするだけで解決できるのに」と思いました。
ふみこ バラバラに共有されている知恵袋を一か所に集約するだけで、だいぶ状況が変わりそうですね。
あつこ ママバラは「いい母親になりたい」「お母さんとは普通こういうもの」と思い込んでいるお母さんたちの肩を、トントンと優しく叩いてあげる存在でありたいと思っています。

ふみこ ママバラが描く未来を教えてください。
あつこ 日本中のお母さんたちが心の底から笑える社会にしたいです。
辛くても笑顔で頑張ってしまっているお母さんが多いと思うんですが、ママバラでは「心の底から」というキーワードにこだわっています。
ふみこ どういう状態が「心の底から笑える」ということですか?
あつこ 一人の大人として納得感をもった意思決定が、行動の根底にあるかどうか、です。
「私はお母さんだから」「本当はこうしたいけど妥協する」「消去法で残った選択肢の中から選ぶ」というような意思決定では心の底から笑えません。
仕事復帰にしても内容やボリュームは自分で選択することになります。日常のありとあらゆることに、納得感を持って選択できているかということが「心の底から笑える」ことにつながると思っています。


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ふみこ 母親の笑顔って、子どもにも影響を与えますよね。
あつこ 家庭教育の中で一番身近な存在である母親(家庭教育をするのは母親だけではないが、子どもと過ごす時間が多い)が、一人の大人として主体性をもって毎日を取捨選択をする背中を子どもは見ています。
子どもたちが社会に出る頃に必要な力は、役割に沿った意思決定ではなく、主体性のある行動ができるかどうかです。
母親が生き方を変えていくことが、子どもの未来にとって最高の家庭教育になると考えています。
ふみこ 子どもって、見てないようですごく母親のことを見てるので、本当にその通りだと思います。
あつこ 一方で、ママバラは日本中の全てのお母さんに必要なサービスだとは思っていません。
結婚や出産を経てもやりたいことができていたり、キャリアが断裂しても「なにくそ!」と挽回できるような人には、「ママライフバランス」という言葉もママバラも必要ないんですよね。


ふみこ すでにママバラの活動をしていた厚子さんが、ボーダレスに参画したきっかけは何だったんですか?
あつこ 活動資金をクラウドファンディングで集めたりもしましたが、自分たちの生活のために収益を上げようとすると、売れる商品を出す必要があります。
お金を出すお母さんたちは自己成長やスキルアップを求めている人たちで、私たちが本当にリーチしたい層ではないんです。
ふみこ 「ママとしての私」が100な状態のお母さんには、届きにくいということですね。
あつこ そんなジレンマを抱えている時にカンブリア宮殿を観て、すぐに社会起業家のエントリーをしました。
事業モデルとしては厳しいとも評価されましたが、最終面接でボスに「一緒に頑張ろう」と言ってもらえました。
ボーダレスではソーシャルインパクトを出すことを1番に考えて事業作りに集中できるし、各社の様々な成功例も勉強できるので、大変ですが最高な環境だと思います。


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ふみこ ママバラの具体的な取り組みとしては、どんなものがありますか?
あつこ 主軸となる取り組みは「#ハッシュタグ会」です。例えば「#ワンオペ育児」「#発達障害かも」「#イライラが止まらない」など。
共通のキーワードにピンとくるお母さんが集まってお話する会です。
ふみこ 私はすでにピンときています(笑)
あつこ 子育てに専念していた頃の私が何を欲していたのか思い出してみると、「みんながどうしているのか」ということを単純に知りたかったんですよね。
なので、勉強会のような形で一方的にアドバイスや指導をするのはちょっと違うと思いました。
ふみこ 育児に正解はないですからね。


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あつこ #ハッシュタグ会のグランドルールは「否定をしない」「アドバイスをしない」です。
各テーマにまつわる当事者が「こうした方がいい」ではなく「こうだったよ」という経験のシェアをしますが、シェアをうけた人がそれを取り入れるのかどうかは自由なんです。
ふみこ 私も育児に悩んで色々調べたりしましたが、一つも役に立ちませんでした(笑)専門家の正論は、現場のお母さんを追い込むこともあると感じています。
あつこ そうそう!専門書を読むと、逆に腹が立ったり落ち込んだりしますよね。
「わかってるけどできない!」とますます自分を追い込んでしまいます。
「こんなときどうしてる?」「うちはこうしてるよ!」という会話を通じて不安を減らすことで、産後うつや児童虐待の問題が手遅れの状態になる前に、予備軍の段階で浮上することができます。

ふみこ 今後のママバラの展望を聞かせてください。
あつこ オンライン上に安心できる居場所がある、という状態を当たり前に。
約20年という長い子育て人生の中で、困ったときに「ママバラの人に聞いてみよう」と思ってもらえる場所にしていきます。
ふみこ 子育てに関する悩みって、付き合いの長い友人でも話が合わなかったりしますからね。
あつこ 価値観が違いすぎると、同じ年齢の子どもがいても仲良くなれませんよね。
ママバラに集まってくる人は、「ママとしての私」と「大人としての私」のどちらも大切にしたいお母さんたちなので、子どもの年齢に関係なく話が盛り上がります。
よく「子どもの年齢が違うと話すこともないでしょ?」と言われるんですが、この盛り上がりをどう表現したらいいか難しくて(笑)
ふみこ その空気感、わかります!表現が難しいですね。


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あつこ この不思議な空気感をママバラのベネフィットとして、しっかり言語化して皆さんにお伝えしていきたいと思っています。
現在は中学一年生女子のママとしての新しい悩みがあります。かといって先輩風を吹かせるようなところで教えを乞いたいとは思わない。
経験のシェアや情報の共有をフラットにできる場として#ハッシュタグ会を作ったので、まわりまわって自分のためにもなっています。
ふみこ あつこさん自身も、色々な立場からママバラを活用しているんですね。
あつこ 私がモデレーターをすることもあるし、思春期の子育てを経験済みのママの実体験を、参加者としてシェアしてもらうこともある、という状態ですね。
ママバラは横のつながりだけではなく、縦のバトンもつながる場所です。


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ふみこ ママバラではメルマガの配信もしているそうですが、どんな内容を発信しているんでしょうか。
あつこ #ハッシュタグ会の予定と、お子様の年齢にあったワークショップのご紹介をしています。
それと「100ママ100通りのストーリー」として、様々な悩みをもつママたちのインタビュー記事をお届けしています。
ふみこ お話を聞いているだけで、私もすでにハッシュタグ会に参加したくなっていますが、このメルマガはどんな人に届けたいですか?
あつこ 本当に読んでほしいのは「お母さんだから〇〇しなきゃ」と思い込んでいる人ですが、本人は自覚がないんですよね。
なので子育て中のお母さんたちにまず情報を受け取ってもらい、ピンとくる#ハッシュタグ会に参加してみたり、ママバラの考え方の共有をしていければと思います。
そして周りで育児に専念しすぎて心配なお母さんがいれば、「これ見てみて」と勧めてもらえれば嬉しいです。是非登録してくださいね!

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最後までお読みいただきありがとうございました。

今回のインタビューは、ボーダレス・ジャパンが月に2回発信しているボーダレスマガジンのコンテンツです。
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