「アフリカ諸国の貧困問題を根本的に改善したい」。そんな思いを抱き、28歳で単身でケニアに移住。
ケニアの貧困農家を救うサプライチェーン、アルファエコシステムを構築するため「アルファジリ」を立ち上げた
薬師川智子さんに、事業内容や仕事への情熱について伺いました。
今回話を聞いたのは・・・

photo MAYSOL 代表取締役社長 社長
1988年奈良県生まれ。農林中央金庫に2年務め、2014年より青年海外協力隊員としてケニア・ミゴリ郡へ赴任。2016年アルファジリを創業後。その後ボーダレスグループの存在を知り、ビジョンに共感し2017年にグループ参画。

photo 聞き手 ライター 
広島を拠点に全国各地を取材し、執筆やイラスト制作を行う。モットーは、受け取った人の未来が、現在より愛に満ち、豊かになる情報発信。

単身でケニアに移住!
アルファエコシステムを構築するべく奮闘中!


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薬師川さんは28歳の時に単身でケニアに移住し、「アルファジリ」を展開されていますね。まずはどんな会社なのか教えてください。
薬師川 一言でいうと、現地の貧困農家が自立して幸福に暮らせる農村社会=アルファエコシステムをつくっている会社です
持続可能なエコシステムを構築し、貧困問題の根本的な改善に取り組んでいます。
新たな仕組みを作っているんですね。
薬師川 そうですね。起業後3年かけてシステムの基盤となる「アルファチャマ」を組織化し、今はナイロビで「青果店アルファジリ」を運営しています。

青果店アルファジリの詳細はYouTubeを見てもらえるとより理解いただけると思います。


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ケニアの貧困農家の方々は、どんな暮らしをしているのですか?
薬師川 私たちの拠点があるミゴリ郡という地域は、生活インフラが一部しか整備されておらず、約8割の家庭が子どもの学費すら捻出できない状態です。
世界には貧困に苦しむ国が多数ありますが、その中でも薬師川さんがケニアで起業した理由は?
薬師川 十代のころから、『人は社会に貢献するために働くのだ』と考え、何に貢献するのかを探してきました
一度就職したのですが、世界の格差や不公平をどうにかできないかという漠然とした思いに押され、青年海外協力隊に申し込みました。
そこでケニア赴任になったんですね。
薬師川 農村の人びとと暮らす中で、農村の生き方の素晴らしさを知った一方、貧困の課題の根深さに愕然としました。
9カ月ほど働いた時、「協力隊として1、2年間携わった程度では何も変えられない。一生を捧げる覚悟で取り組みたい」と強く思ったんです。
青年海外協力隊をはじめ、さまざまな団体や組織が貧困地域で活動していますが、数年単位でのプロジェクトではなかなか根本的な解決に至りにくいのかもしれないですね。
薬師川 寄付金や補助金を使ったボランティアやプロジェクトではなく、地に足を着け、サステナブルな仕組み作りに取り組むべきだと感じました
青年海外協力隊として2年の任期を終えた後、一度帰国して貯金をかき集めて単身でケニアに移住。2016年2月に「アルファジリ」を起業しました。

途上国の農村に
人間の幸福な社会のあり方を見出した


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その行動力に感服します。でも、20代の女性が人生を捧げ、単身で移住するのには相当の覚悟が必要だったのでは?
薬師川さんを突き動かしたケニアの魅力は何だったのでしょうか?
薬師川 ケニアの魅力というよりは、途上国の農村に、人間の幸福な社会のあり方を見出したことが大きいです。
人間の幸福な社会のあり方、気になります。
薬師川 自然と共生しながら家族農業を営む生き方は、まさに人びとの幸福な生き方の一つだと確信しました
しかし、文化的かつ活気的な暮らしを保つには、貧困や都市部との格差の問題がつきまといます。
自然と共生といっても、何もしなくていいというわけではないと。
薬師川 はい。『幸福な農村社会の創造』というのは、人生で追究し続けるにはすばらしいテーマだと思いました


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そのテーマの実現に向け、起業されたのですね。
薬師川 そうです。そのためのシステムを開発整備するのがアルファジリです。農家が継続的に収入を得て、文化的な生活を送るための仕組みづくりをし、実際に展開しています
「アルファジリ」にはどんな思いが込められているのでしょうか?
薬師川 スワヒリ語で「夜明け」を意味します。早朝から水を汲みに出かけ、畑を耕す…。そんな働き者な農村の人びとと、明るい未来に向けた仕組み作りをしたい。そして、どんな時も初心を忘れず取り組みたいという思いを込めました。 

3年で50組がアルファチャマに参加!
百、千組単位に向けて拡大中!


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改めて「アルファエコシステム」について教えてください。
薬師川 小規模農家グループを中心としたエコシステムです。小規模農家は、貧困が招くあらゆる課題に直面しています。
そこで近所の15人程度でグループを結成し、互いに助け合うことのできる相互扶助の仕組みを作りました。
それが「アルファチャマ」ですね。
薬師川 そうです。具体的には、一軒では購入できない機材を共同で購入したり、金銭の貸し借りや知識の交換をしたりします。
アルファジリはアルファチャマの農家さんに対してどのような関わり方をしているのでしょうか?
薬師川 各グループ代表を定期的に集め、基本的な農業スキルや顧客志向の品質をどうつくるかなどのトレーニングを行ったり、種や肥料の提供などをしています。
また、農作物を私たちが買い取り、現地の加工メーカーやレストランに卸したり、アルファジリ青果店で販売しています。
開始から3年が経ち、現在どれくらいの農家さんが参加されていますか?
薬師川 3年で50グループが会員農家になってくれました。地道な活動が少しずつ現地の農家さんたちの信頼を得て、賛同者は徐々に増加しています。
アルファエコシステムがよく機能して、コミュニティーが拡大しているんですね。
薬師川 この仕組みが安定するまでに試行錯誤はありましたが、直近の1年半では、脱退した会員は誰一人としていないんですよ。
今後はこのアルファチャマを中心に、マイクロファイナンス、IT、教育サービスの提供、国連機関との連携等々、農家さんたち幸福に暮らせる農村社会をつくるためのエコシステムを構築していければと思っています。
実際にアルファチャマのメンバーからはどんな声が届きますか?
薬師川 「アルファチャマに属せば暮らしに安心と活気が出る」「頑張って働くとその報いはあるものだと学んだ」というポジティブな声をたくさんもらっています
仲間と支え合い、セーフティーネットがあるという安心感は、新しいことに挑戦する意欲にも繋がります。
学ぶことの楽しさも日常の一部になっているんですね。
さらに昨年8月には100種類以上の野菜や果物を、レストランや学校、高級ホテル等にデリバリーする「アルファデリバリー」を立ち上げ、
今年6月には産地直送の農産物を安心して購入できる「アルファジリ青果店」もオープン。現地で評判と聞いています。
薬師川 そうですね。嬉しいことに、「アルファチャマから直送される農産物は安心で品質も味も良いから購入する」というリピーターの顧客は大変多いです。
こういった高品質・高単価商品の展開によって販売価格を自分でコントロールすることができるようになり、事業の実績は急速に伸びており、9月には事業単体で黒字化しました


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アルファチャマ農家が生産した原料を使用した加工品


今後の展開はどのように考えていますか?

薬師川
さらにアルファチャマ数を百・千単位で増やしつつ、卸売の拡大と小売店舗も増やしていきます。ただ、これはアルファエコシステムの一部分を構築したに過ぎません。
農家が安心して暮らせる金融システムを作ったり、水道や電気などのインフラ環境を整えたり、環境負荷の低い農業技術の普及などにも取り組まないくてはいけないと考えています。

夢はエコシステムが
アフリカ中の農村に広がること


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大きな可能性を秘めた壮大なプロジェクトですね。参加したい、力になりたいという人も多いのでは?
薬師川 私たちのビジネスに共感し「手伝いたい」と言ってくれる方もおられます。
心強いし嬉しいです。また、日本からのインターンは随時受け付けていて、常時数人が在籍してくれています。
事業内容が多岐に渡るので、基本的にやりたいことに挑戦してもらうスタイルです。3カ月以上滞在できる人で、やる気と向上心さえあればOKです。
特に印象的だった人はいますか?
薬師川 皆さん遠路はるばるケニアまで来てくださる方なので、個性的で面白い!みんな忘れられないです。
現地の生活を体感したいと、農家に住み込みした人もいましたね。
あとは農林水産省の方で、夏休みを利用して参加してくれた男性は、アルファチャマのルールや評価作りなど、現在もずっと活用する基礎部分を策定してくれて本当に助かりました。
何でも挑戦できる環境なんですね。
薬師川 はい。なので、ぜひ参加してもらえたら嬉しいです。


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最後に、今後の展望を聞かせてください。
薬師川 アルファエコシステムのモデルをケニア各地や他国でも広げていきたいです
アルファチャマ数が何百、何千と生まれ、それぞれのコミュニティが独自に支えあい、私たちのサービスを利用して自ら発展していけるエコシステムが自然に生まれていくようなイメージです。
薬師川さんご自身はどこに注力されていくのでしょうか?
薬師川 現在私は、エコシステムの一部である小売事業(青果店)に注力していますが、青果店が2-3店舗になったところで、店舗事業責任者を置き、私は金融や農業設備投資のような新しいサービスの開発に力を入れていきます。
新しい価値を生み出していくことが私のやりがいなので、常に既存事業は新しい人材に任せて、私は新事業をどんどん生み出したいと思っています。
これからのアルファジリの展開がとても楽しみです!
薬師川 ありがとうございます。ケニアの未来を明るく豊かにするために、アルファジリは新しいシステムづくりにどんどん挑戦していきます。
一緒にチャレンジしたいという方のエントリーもお待ちしています!

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最後までお読みいただきありがとうございました。

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