あるきっかけから考え出した「自分の国のためにできること」とは?
「苦難の中で培ったグアテマラ発のノウハウが今、世界に適用するビジネスモデルとしてより多くの人を救える。」
そう教えてくれるMAYSOL代表のトニーが、事業にかける想いとこれからの未来図を描いてくれました!
今回話を聞いたのは・・・

photo MAYSOL 代表取締役社長 社長
エンジニアとして大学を卒業後、グアテマラ最大手モバイル会社に就職。その後、大学教授や時計店・サルサバーの経営を経て、2017年12月にグアテマラにて「MAYSOL」を創設。

photo 聞き手 ライター ケイスケ
大阪出身の福岡移住者。自らの社会起業経験をもとにボーダレスグループの情報発信を担当中!


相手に寄り添うことから

ケイスケ トニー、こんにちは!はじめまして!
トニー けいすけ、こんにちは!今回はよろしくお願いします!
ケイスケ さっそく、MAYSOLが行なっていることを教えてください!
トニー 「養鶏」を通して子どもを持つ親たちが貧困のループから抜け出し、その子どもたちが教育を継続して受けられるような仕組みを作ることを目的としているよ。
グアテマラの貧困問題については、共同経営者の郁香が詳しく説明しているブログをぜひ読んで見てほしい。
ケイスケ 養鶏を選んだ理由は何かな?
トニー もともとグアテマラではウサギや牛、豚や鶏などを「家畜」として飼う習慣があるんだ。
だからここの人にとって取り入れやすいと思ったんだ。僕自身は鶏が怖くてさわれないんだけどね(笑)。


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メンバーを対象とした年次ミーティングで事業目的を説明するトニー

ケイスケ 急に新しいことを始めると受け入れられないリスクもあるから、その国や場所の習慣や馴染みのあることから始めるのは大事だよね!
もともとグアテマラでビジネスをしたいと思っていたの?
トニー そんなことはないんだ。福岡でアルバイトとしてビジネスレザーファクトリーで働いていたときに、ボスと話す機会があってグアテマラのことをいろいろ聞かれたんだ。
ケイスケ ボスとはどんな会話をしたの?
トニー 「グアテマラってどんな国?」「とってもいい国だよ!コーヒーとかバナナとかおいしいよ!」「どんな人たちが住んでるの?」「みんなフレンドリーでとってもハッピーだよ」って調子だったね(笑)。
ケイスケ でも、実際のグアテマラの特徴は、そういったいい面だけではないよね?
トニー そうだね。でも当時の僕はグアテマラのいい部分だけを伝えたくて、ボスの質問の意図を理解していなかったんだ。

photo卵を生産するウィタン地域の子ども

ケイスケ トニーのマインドもだんだん変わっていったんだね。
トニー その通り。だんだんグアテマラのあらゆる点を含めてボスと話すようになったんだ。
その中で十分な教育を受けられない子どもたちの話も出て、 「じゃあ彼らのためになることをグアテマラでやってみない?」ってボスに言われた時に、立ち上がろうって思えたんだ!
ケイスケ 「そんな機会があるのなら」って思えたんだね!
トニー もちろんグアテマラでの起業を強制されたわけでも、起業をするにしてもグアテマラ以外の選択肢がないわけでもなかったんだ。
でも、誰かのためのソーシャルビジネスをするなら、僕の答えは「それは自分の国で」だったんだよね。

「よりよい教育へのアクセス」へ


MAYSOLのノウハウを

ケイスケ 事業を本格的に始動したときはどんな感じだった?
トニー 最初は200羽の鶏を1家族に与えて卵を生産する方法をとっていたんだ。まずはなんとか5家族を集めるところからスタートしたよ。最初は信用もなかったし、MAYSOLで養鶏を始めたいという人を集めるのは大変だったね。
ケイスケ じゃあ5家族分で合計1000羽の鶏…すごい数だね!?
トニー でも養鶏ビジネスの商品は「鶏の卵」だから、生産すると同時にもちろん卵を販売しないといけない。養鶏ビジネスをする上で「販売」が一番難しいんだよね。
ケイスケ それで、特に販売に力を入れたんだね。
トニー 毎日サンプルの卵を持って、商店やレストランなど回ったけど、始めは全然買ってもらえなかった。どうにかオーナーやシェフに話をこぎつけ、卵を目の前で割ったりできることは何でもやって少しずつ販売先を増やしていったよ。


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月次ミーティングで生産者さんに養鶏のノウハウを指導するトニー

トニー 生産面では「働いてお金を稼ぐ」という姿勢を伝えることからスタート。一般的に支援慣れしている人々は「楽して稼ぎたい」と考えがちなんだよね。
ケイスケ どうやって「働いてお金を稼ぐ」ということを理解してもらって、モチベーションを維持できるようになったの?
トニー 掃除のやり方にしても、どんな些細なことでも良いアイデアはミーティングで発表してもらったり、産卵率が高い家族は表彰をしたりね。
ケイスケ 小さな成功例を重ねて、「頑張れば結果に繋がる=収入が増える」と理解してもらったんだね!
トニー そうなんだ!そして結果として、3家族の鶏がそれぞれ200羽から始まり、1200羽を育てる養鶏農家にまで成長したんだよ!


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グアテマラの民族衣装をきた子供たちと共同代表の呉原

ケイスケ 養鶏農家の対象はシングルマザーなんだよね?
トニー 今は「勉強している子どもがいる家族」に対象を広げたんだ。シングルファーザーやアメリカにの出稼ぎがうまくいかずに帰国した人など、困っている人がたくさんいることを知ったからね。それに”教育”は学校での読み書きだけじゃなく、家の中から始まると思っているんだ。
ケイスケ 具体的にはどういうこと?
トニー 例えば、鶏小屋を常に綺麗に保つと衛生面もよくなるし、子どもがそれを見て「綺麗にする」という感覚や習慣をつけることができる。
汚いところと綺麗なところで育つのは全然違うからね!そういうところを養鶏農家に口酸っぱく言い続けてやっと伝わってきたのが嬉しいね!


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ケイスケ こうやって受け継がれるいい影響がグアテマラの未来を作っていくんだね!
トニー 養鶏農家も最初は自覚もなかったしMAYSOLに対しても半信半疑だった。でも、ある大手企業がMAYSOLから卵を買ってくれることになり、レストランのシェフやオーナーが視察と挨拶に来てくれたのが転機で、農家の人たちが自分の仕事に誇りを持ってくれたんだ。
ケイスケ 実際に彼らとの握手を通して、自分の仕事に実感や希望、可能性を感じられたんだろうね!
トニー そうだね。これからもみんなとどんどん会話しながら距離の近いファミリーとして働いていきたい。
「鶏は好きかい?」「好きだよ」「そっか、僕は苦手なんだ」って具合にね(笑)。


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月次ミーティングに参加するマネジメントメンバーと生産者

ケイスケ MAYSOLのメンバーについても教えて!
トニー 15人(フルタイムは11人)のメンバーが働いてくれている。特に印象的なのはオスカルだね。オスカルはとにかく手先が器用で何でもできるんだ。車を修理したり電気機器を直したりね。
ケイスケ とっても心強いね!
トニー でも彼はゴミ山で育ち、学校に行けず読み書きが十分にできなかったから、前職でもいいポジションにつけなかった。だから彼も自分の子どもにはきちんとした教育を受けてほしいと思ってる。
ケイスケ 子どもによりよい教育を受けてほしいのは、何も養鶏農家たちだけじゃないよね。
トニー そう!「読み書き」などを通してうまく伝えられないだけで、よりよい教育を受けていたら彼の技術がもっと証明されたはずなんだ。
オスカルは僕らにとって特別な存在だね。

ケイスケ MAYSOLとしてこれからの展望は?
トニー 始めは卵の生産のみを手掛けていたけど、今は養鶏事業を通じてより大きな雇用に繋がるように事業を拡大している。
鶏の餌の生産や販売、鶏小屋の建築やヒヨコの生産販売、小規模畜産農家さん向け無料のコンサルティングも始めてるんだ。
ケイスケ 養鶏事業全て網羅することで、より多くの雇用が生まれる仕組みを作っているんだね!
トニー さらに大きな夢があるんだ!世界へのMAYSOLモデルのマイクロフランチャイズだよ!
ケイスケ MAYSOLが作った「マイクロファイナンスの発展モデル」だよね!トニーたちが作った言葉だったっけ?
トニー そう!MAYSOLからの必要なノウハウや資材の提供を通して、資金も知識も何もない人でも製造や納品をすることで返済が可能な仕組みだよ。


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トニー 養鶏事業でいうと、MAYSOLが「鶏舎の建築、養鶏のノウハウ・鶏・飼料の全てを提供」、彼らが「養鶏作業を行い卵を納品」、そしてまた僕らが「販売」を行うんだ。
ケイスケ そして事業を進める中で、多くのNGOやNPOも鶏や飼料を提供していることがわかったって聞いたんだけど、そうなの?
トニー そうなんだよ!僕らはさらに養鶏農家向けにトレーニングやノウハウ、鶏小屋や餌の提供と販売をしっかりサポートしながらNGOやNPOと協力し、今はこのモデルをグアテマラで広めているよ。
ケイスケ 卵って世界中で食べらるし、可能性は無限大だね!
トニー その通り!僕らには成功する養鶏ビジネスのノウハウがあるし、何より販売まできっちりサポートするから、ビジネスとしてしっかり回せるモデルなんだ!


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各生産者より回収した新鮮な卵をサイズ別に分ける様子

トニー すでにエクアドルやドイツ、フィリピン、そして日本からも声がかかったんだ!もちろん国ごとにリモデルの必要はあるけど、世界にどんどん仲間やコミュニティを広げたいね!
ケイスケ でも全てにトニーが関わるのも大変そうだね…。
トニー ポイントはそこ。全部を僕らがやるんじゃないんだよ。MAYSOLのアイデアやノウハウを自国に持って帰ってもらったり、機会や助けを求めている人のサポートをしたいんだ。
ケイスケ 食材として万能な卵同様、養鶏ビジネスも万能なんだね!
トニー 鶏は本来とても繊細な生き物なんだ。
グアテマラは海も山もある特殊な国なんだけど、僕たちはこの高低差(600m〜4200m)が織りなす微気候という難しい条件下でも養鶏ビジネスを確立できたから、世界中どこでも通用するモデルなんだ。


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年次ミーティングにてゲームをする生産者たち

ケイスケ ちなみに、「MAYSOL」の由来は?
トニー いろいろなアイデアが出た中で、「"トニーの卵"みたいなのは?」って言われたんだけど、しっくりこなくてね。
ケイスケ その時から”自分を全面に出す”よりも”このモデルが世界に広がっていく”イメージの方があったのかな?
トニー そうなんだ。僕の名字が「Mayen」だからそこからMayだけ取って、Sol (スペイン語で「太陽」)と繋げて、『MAYSOL=マイェンの太陽』になったんだ。
ケイスケ めっちゃ素敵やん!トニーが照らす元でたくさんの芽がすくすくと育ってほしいね!
トニー そう!だからこのMAYSOLのモデルを自分の国でやってみたいっていう人はぜひ連絡してほしい!少しでも関心があれば、ぜひ話したいね!

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最後までお読みいただきありがとうございました。

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