4月16日の「カンブリア宮殿」放送後、ボーダレスグループの事業の中で一番反響があったのがみらい畑でした。
何度も壁にぶち当たり模索し続けたみらい畑代表の石川美里(以下、みさと)に、農業の厳しさと楽しさ、そして活路を開いたミニ野菜についてお聞きしました。
今回話を聞いたのは・・・

photo みらい畑 代表取締役社長 社長
1990年生まれ。兵庫県出身。幼少期にインドに住んだ経験と東日本大震災後の復興支援を通して、自分の人生を社会や未来の役に立つ事に使いたいと考え、2015年ボーダレス・ジャパンに入社。
AMOMAJOGGO等で様々な学びを受け、2017年みらい畑をスタート。

photo 聞き手 スタートアップスタジオ ふみこ
AMOMAよみものライターを経て、ボーダレス・ジャパンに入社。裏方として様々な事業と関わる。埼玉在住、1児の母。

ふみこ ここ1ヶ月ずっと雨ですが畑は大丈夫ですか?(2020年7月上旬インタビュー収録)
みさと ハウスで育てている野菜たちは、日照不足で成長が遅れています。畑は畑で、水に漬かって野菜が腐ってしまったり…ちょっと悔しい思いをしています。
ふみこ 自然相手だと無力感がありますよね…。そんな大変な中ですが、よろしくお願いします!
みさと はい、よろしくお願いします!
ふみこ まず、みらい畑の事業目的についてお聞かせください。
みさと みらい畑のビジョンは「農業をやりたい人が続けられる社会を創る」ことです。
事業を立ち上げた当初は一番の課題を「耕作放棄地増加の問題を解決する」としていたんですが、自分自身で農業を始めてみたら新たな課題が見えてきたんです。
ふみこ それはどんなことですか?

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みさと 農業が抱えている一番の問題は、担い手が不足していることだと分かりました。なので一番の課題を「農業の担い手を増やすこと」としました。
雇用を増やすことで耕作放棄地の増加を抑えることができたり、大きなスケールで言えば食料自給率をあげることにつなげられたりすると考えています。
ふみこ ここでいう「農業の担い手」とは、どんな人が対象ですか?
みさと 主に新規就農希望者です。農業に興味はあるけど借金を抱えながらやることに勇気が出ない人、有機農業を始めても収量があがらず資金が尽きて続けられないという人、そんな人たちを多く見てきました。
そこで、経済的な不安が原因で農業を続けられない人を中心に雇用し、農業従事者を増やしたいと思っています。ただそれが、今の日本では難しい仕組みになっているということが、自分で農業をやってみて分かりました。


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ふみこ どんなところに難しさを感じましたか?
みさと 農業は第一次産業で技術職ですが、私が見る限りではその技術面のサポートがないなと思いました。
技術と資金と販売、第一次産業をやる上で欠かせないこれらの要素に対するサポートがほとんどありません。
特に新規就農者や、やってみたいと思っている人に対してのサポートは弱いと感じています。
ふみこ 「うちは代々農家です」というような人はいいけど…ってところですね。
みさと その通りです。


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ふみこ そもそもの話になりますが、美里さんは農業の経験は多少あったんですか?
みさと いえ、全くの初心者です(笑)農業を始めるきっかけとなったのは、宮崎県新富町を訪れた時です。
当時の町長さんが「今は農業が盛んだが、ゆくゆくは担い手不足や耕作放棄地の課題に直面するだろうから、是非チャレンジしてほしい」とお話してくださり、決断の後押しになりました。
ふみこ 新富町では新規就農者に対する受け入れ体制があったんですね。
みさと そうですね、新富町は外から来る人に対してとてもオープンな場所です。それに1年中温暖な気候で日照時間も長く、農業をするには抜群の環境です。新富町を選んで本当に良かったと思っています。

ふみこ 今年の4月に放送された「カンブリア宮殿」放送終了後、反響が一番大きかったのがみらい畑でしたね。畑のほうれん草が全滅して、美里さんがしょんぼりしている姿が印象的でした。
みさと 放送終了後に有機農業に関するアドバイスや応援メッセージなど、たくさんのご連絡をいただきました。皆さん本当にありがとうございました。それだけ農業に興味や関心が持たれているんだ、と正直驚きました。
ふみこ 番組で放送された姿は、みらい畑事業のほんの一部分だと思います。実際の無農薬栽培の大変さはどんなところにありますか?
みさと 無農薬栽培の大変さは、栽培自体が難しいというより収量が上がらないところにあります。収量が上がらない分は、販売でカバーするしかありません。しかし、今までは野菜作りの方にばかり意識がいっていて、良い単価で売れる販売先を見つけることが出来ていませんでした。


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ふみこ 作った後のことも考える必要があるんですね。無農薬栽培に適した品種などはあるんですか?
みさと 例えば人参とか春菊とか、虫がつきにくいハーブ系の野菜は育てやすいです。さらに冬場だと虫の活動が弱まるので始めやすいですよ。一方でナスなどのアブラムシが来やすい果菜類は、無農薬で栽培すると収量が落ちますね。
根菜類だと全滅することは少ないので、無農薬栽培は品種選びや出荷時期の兼ね合いが大事だと感じました。
ふみこ 2017年に事業をスタートして、それを学んだ3年間という感じですか?
みさと ほんとそうですね!生産と販売について学ばせてもらった3年間でした。
ふみこ 私のような農業素人は「いい作物を作れば、自然と売れるだろう!」と単純に考えていましたが、美里さんの話を聞いているとそうではないことが分かってきました。


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みさと 結局、農作物に関わらずどんな商品も同じで、お客様が「買いたい」と思うものでないと売れないんですよね。
食べ物だからって何もせずに適正価格で売れていくわけではないということは身に染みました。冬場に手が凍りそうになりながら収穫した野菜が、10円…?とか(笑)
ふみこ スーパーでビニール袋に人参詰め放題!とかやってるじゃないですか、消費者目線だとああいうの喜んじゃうんですよね。
みさと 食べ物だからなるべく安く買いたい、という気持ちも分かります。利益を出して雇用も増やすとなると、野菜は本当に難しい商材だと感じました。今回の大雨もそうですが、天候に左右される面もありますから。
ふみこ 人間が頑張ればなんとかなる、という問題でもないですからね。
みさと 悪天候で畑がめちゃくちゃになるたびに、何度も悟りを開きました(笑)

ふみこ 現在メインで育てているミニ野菜について教えてください。
みさと ミニ野菜の利点は、栽培期間が短いので「種まきから収穫までの年間予定」が組みやすいところです。
農業には『農閑期』といって、作業量が減る時期がどうしても出てきます。
でも雇用を増やすために、年間通して作業がある状態をつくりたかったんです。
ふみこ 作業量に波があるんですね。年間の見通しがたっていれば雇用もしやすいですね。
みさと それと作業ボリュームの面。通常サイズの野菜の収穫は重労働でしたが、ミニ野菜だと作業効率がよく、密植もできてコストも下がって良いこと尽くめでした。
ふみこ なるほど、実際に農業をやってみないと分からないポイントですね。
みさと どんな野菜であればお客様に欲しいと思ってもらえるのか」ずっと考えていました。
そんな時、調理時に捨てられてしまう皮やヘタを見て、丸ごと食べられるミニ野菜にたどり着きました。


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ふみこ ミニ野菜って、そもそも何ですか?何も知らなくてすみません。
みさと ミニ品種がある野菜もありますが、ない場合は大きい品種を早めに収穫しています。紫の人参などはそのタイプですね。
ふみこ そうだったんですね。珍しい野菜が多いですよね。
みさと 農業をやって初めて、野菜の品種の豊富さを知りました。トマトだけでも何百種類とありますが、今ある流通網に乗せると結局スーパーに並ぶのは数種類なんですよね。
ふみこ たしかに、スーパーではいつも同じトマトしか見ません。
みさと 直販にすると「こんな野菜もありますよ」「こんな食べ方がおすすめです」など、直接皆さんにご紹介できます。今は珍しいミニ品種を常に探していますよ!
ふみこ ミニ品種探し、なんだか楽しそうです(笑)

ふみこ 今年の6月から「腸活ミニ野菜」の販売がスタートしましたが、ミニ野菜をぬか漬けにして食べようっていうコンセプトですよね。
ぬか漬けに注目したきっかけはありますか?
みさと 今まで野菜を「販売」することに苦労し、どんな商品だったらお客様のためになるのかということを悩み続けてきました。
ヒントをもらったのは、知り合いのお漬物屋さんですね。ミニ野菜をぬか漬けにして丸ごと食べれば、加熱に弱いビタミン類も植物性乳酸菌もより多く取り入れられる!と。
ふみこ 野菜をサラダにして食べるのは限界がありますよね。しかも意外と作るのが面倒です。
みさと そうなんです!「漬物は一番簡単な調理法」だと、そのお漬物屋さんが言っていました。美味しい野菜をより身体に良い方法で食べるにはこれしかない、と思いました。


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ふみこ お客様の反応はいかがですか?
みさと 見た目のかわいさから女性のお客様が多いようで、喜んでいただいている様子がSNS等で日々届いています。
最近オクラの収穫が始まったのですが「スーパーではこんなきれいなオクラを見たことがありません」とメッセージいただき、本当に嬉しかったです。
ふみこ これをきっかけにぬか漬けを始める人も多いのでは?
みさと そうですね!ミニ野菜とぬか漬けセットを一緒にご購入くださるお客様が多いです。ミニ野菜をきっかけとしてぬか漬けを始めていただけたら、これ以上嬉しいことはないです。
ふみこ そういったお客様の反応で、また頑張ろうって思えますよね。
みさと 実はその点で今までモヤモヤしていました。たくさん野菜を作って売っても、誰がどこで何を食べているかは生産者には届かないんですよね。
直販を始めたことで、こうして皆様からの声が直接聞けるので、野菜作りのモチベーションになっています。


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ふみこ それでは最後に、みらい畑の今後について聞かせてください。
みさと 腸活ミニ野菜については、野菜のラインナップをもっと増やしていきたいです。定期便でご購入いただいているお客様にもっと楽しんでほしい。
そのためにはミニ野菜の品種を増やし、それに対応する技術力をつけていかなければと思っています。
ふみこ 季節ごと、その年ごとに届く野菜が変わるというのは、とても嬉しいですね。
みさと そしてこの腸活ミニ野菜で生み出せる雇用には、いつか限界が来るはずです。
もっとソーシャルインパクトを伸ばしていくためには、次の一手を見据えていかなければと考えています。
ふみこ 今回の腸活ミニ野菜のヒットが、みらい畑の起爆剤になりそうですね。
みさと はい、今後はみらい畑の拠点を全国に増やしていきたいです。農業をやりたくても出来なくて諦めている人は、全国にたくさんいると思います。
ここ宮崎県新富町で学んだノウハウを全国に広げ、新規就農者がみらい畑に来ればしっかり働けるという状態をつくっていきたいです。

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最後までお読みいただきありがとうございました。

今回のインタビューは、ボーダレス・ジャパンが月に2回発信しているボーダレスマガジンのコンテンツです。
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