世界的なコロナウイルス感染拡大のため、工場も店舗も休業を余儀なくされたビジネスレザーファクトリー(以下、ビジレザ)。
そんな困難な状況でも止まらずに進み続けるビジレザ社長の原口瑛子(以下、はなみち)に、バングラデシュの工場メンバーや日本の店舗スタッフへの想いをお聞きしました。
今回話を聞いたのは・・・

photo ビジネスレザーファクトリー 代表取締役社長 原口
1985年、熊本県生まれ。国際協力機構(JICA)にて中米地域の円借款事業を担当。2015年(株)ボーダレス・ジャパンに入社、店舗開発や工場での品質管理を経て、2017年ビジネスレザーファクトリー(株)代表取締役社長に就任。

photo 聞き手 スタートアップスタジオ ふみこ
AMOMAよみものライターを経て、ボーダレス・ジャパンに入社。裏方として日々様々な事業と関わる。埼玉在住、1児の母。

ふみこ まず、ビジレザの事業に関してお聞きしていきますが、大きな事業目的が「バングラデシュの貧しい人々の雇用創出」ですね。この貧しい人々とは具体的にどのような人達でしょうか。
はなみち 私たちは基本的に、働きたくても働けない、他の工場では雇ってもらえない貧しい人々を採用しています。優先的に採用する基準が3つあって、1つは親がいない若年層。親に捨てられたり、親と死別してしまった人達です。2つめはシングルマザー。私たちの工場は6割が女性ですが、その多くがシングルマザーです。3つめが障害者。今まで一度も働いたことがない人も多いです。
ふみこ 働いたことがない人達を雇うということは、全てゼロから教えていく必要があるってことですね。
はなみち ほんとにそうです。それこそ「朝この時間に来るんだよ」ってことから。

photo左:工場長 マスンさん/右:BLJバングラデシュ代表 ファルクさん

ふみこ 現在バングラデシュの工場で働く人は900人ほどと聞きましたが、そのメンバーを日本にいるはなみちさんがどのようにマネジメントしているんでしょうか。
はなみち 日本にいるビジレザメンバーと、工場の代表であるBLJバングラデシュファルクさん、工場長のマスンさんが、同じ志を持っているということが大切ですね。彼らはともに社会を創る仲間であるので、日本からマネジメントはしません。
ともに夢を追いかける同志、という状態です。実際の工場内のマネジメントは、工場長のマスンさんをはじめとした20人程のマネジメントチームが主体となって行っています。

ふみこ さて、今年はコロナウイルスの影響でバングラデシュの首都ダッカがロックダウンされたりしましたね。現地でも相当混乱したのではないでしょうか。
はなみち 政府の方針で3/26(木)から工場を全て止める形になりました。その時一番に考えたことは、ラインで働いているメンバーたちの給料のことでした。つまり、生活をどうするかっていうのが、一番大きな話でした。
ふみこ とても大事なことですね。
はなみち ファルクさんと毎日連絡して「こういう状況でも、必ず給料は払おう」と決めました。それをみんなの前で約束しよう!と。

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ふみこ とても安心したでしょうね。仕事がない=お金がない、という状態はまさに死活問題です。
はなみち 私たちはひとつのファミリーです。だから、まずはお金の面で生活を保障する。それと今回の問題は「健康」じゃないですか、人々の命をどう守るかっていう。それに対して私たちはどう向き合っていくのかを考えました。しかし900人もいるので、日本のように全員に一斉に連絡ができるツールがある訳ではありません。
ふみこ 全員の健康を確認するのは容易ではないですね。
はなみち なので現地のマネジメントチームが連携し全員に毎日電話をかけました。昔でいう学校の連絡網のように。毎朝、働いているメンバーや家族に体調不良がないかどうかを確認していました。

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ふみこ この期間中にマスンさんのロングインタビューがメルマガで配信されていましたね。どんな危機も乗り越えてメンバーと共に成長していくぞ!という志を感じました。一方でロックダウン中のファルクさんはどのような気持ちで過ごされていたんでしょうか。
はなみち ファルクさんは毎日「工場の仲間が心配・・・」と言っていて、誰もいない工場に毎日行っていたようです。私たちがみんなに伝えたことは「死ぬときは一緒だ」ということ。つまり、みんなファミリーだから絶対に死なせない、ということです。
ふみこ 共に生きるという覚悟ですね。現在の工場の様子はどうでしょうか。
はなみち 4月下旬から、2交代制でスタートしています。基本的に検温と消毒をしてから工場に入るようにしています。手洗いを習慣づけるのが大変でした。

ふみこ 自粛期間中の日本の店舗についてですが、期間限定のオンライン接客というサービスを実施されていましたね。どういった経緯で始められたのでしょうか。
はなみち 店頭で働くメンバーの最大の価値は、バングラで作った商品の魅力やその想いをお客さまに届けるメッセンジャー的な役割だと思うんです。それが休業によって一切出来ないと。
ふみこ 八方塞がりのように思えます。
はなみち 全員に休んでもらう選択肢もありましたが、私たちの経営理念は「働くを楽しく」です。なので働きながら新しい価値を生み出そう、そのピンチの状態をも楽しもうという話をしました。そこで、オンライン接客をスタートさせました。
ふみこ 危機的状況の中で、新しいことを模索していったんですね。

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はなみち 少し話が逸れますが、ビジレザは元々ECでサービスを開始した後、期間限定の催事(ポップアップショップ)で販売するようになりました。当時の催事では、直営店舗のメンバーが店頭に立つ場合と、そうではない販売員の方が店頭に立つ場合とでは、お客さまに届けられる商品の数が全然違ったんです!
ふみこ そこにはどういった違いがあるのでしょう。
はなみち 商品のストーリーを伝えられるという接客のありかた、ここに大きな価値があると感じました。これが、私たちビジネスレザーファクトリーのこれまでの軌跡、道のりそのものだと思います。それが店頭でもオンラインという形でも、必ずお客さまに届くと確信していました。

店舗名はビジネスレザーファクトリー“日本”店とし、メンバーは全国の直営店舗から集結しました。

ふみこ 行ったことのない店舗の店員さんとお話できるのは画期的です。

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はなみち ZOOMを使用して30分ほど商品のご提案をしました。アンケートにお答えいただいたのですが、お客さまの満足度がすごく高かったです。
ふみこ どんな点でそう思われましたか?
はなみち 商品の魅力やストーリー、多くの情報や提案を受け取りながらお買い物するってことと、誰かと繋がることができるってことが、今の日本の「外に出れない」という状況の中で大きな価値を生んだなと感じました。
ふみこ 自粛期間中は、外の人と繋がる機会が減りましたからね。
はなみち また、お客さまの中には、家で介護をしている方や身体に障がいがある方など、店舗に来るのが難しい「働く人」がたくさんいるってことも分かりました。こういう方々にも価値が提供できる。だから、「これは続けていきたいね」という話になりました。
ふみこ 今後もオンライン接客を続けていくんですね!
はなみち はい、今後も月に1回やっていく予定です!

ふみこ 6/21(日)は父の日ですが、ビジレザでは商品に手書き刻印が出来るんですよね?
はなみち 元々ビジレザでは革製品に刻印するサービスをしていました。働く人を応援するブランドとして「お父さんお母さんに手書きのイラストを刻印してプレゼントしよう」というサービスを2017年から直営店舗限定で始めました。現在は、公式サイトでも直営店舗でもご利用いただけます。
ふみこ 私は5歳の子どもがいるのですが、男の子なのでまだ絵がぐちゃぐちゃで......
はなみち 子どもの絵って毎年違うじゃないですか、それがいいんですよ!例えば、2歳の子が描いた丸になるかならないかの線とか。それは今年しか描けない絵だと思うんです。それでもお父さんは「わぁ!」って(笑)
ふみこ たしかに、何だって嬉しいですね(笑)

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はなみち 働くお父さんたちも、働いているときに大変なことや苦しいことがたくさんあると思いますが、例えば名刺入れをパっと開けた時に「パパがんばってね」と書いてあったら、もう少し頑張ろうと思えたりしますよね。そういう風に働く人を応援できることが嬉しいです。
ふみこ 子ども相手だとハプニングも多そうですね。
はなみち 恐竜の絵を描いてくれたけど、どうしてもしっぽが入らず切れてしまう、ということがあって。でも、店舗のメンバーはそのしっぽまで入れて刻印してあげたい!と、紙の余白部分をしっぽの部分に切り貼りして足してあげたりしたこともありました(笑)
ふみこ そういった親切な対応をしてもらうと、親としてもとても嬉しくなります。父の日までまだ余裕があるので、我が家も手書き刻印にチャレンジしてみます!

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最後までお読みいただきありがとうございました。

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