この数年、社会起業家が続々と誕生しているボーダレス・ジャパン。この4月には、29歳以下を対象としたU29社会起業家募集を開始しました。

同プログラムの魅力は、ノウハウや経験やお金がなくても、志があれば応募できるということ。プランニング中の最長2ヶ月間は月18万円の支給があり、代表・田口のもとでビジネスプランを磨くことができて、さらに各分野の専門家が全面的にバックアップします。

25歳でボーダレスに入り、インドで起業した水流早貴(つるさき)に、自らの体験や思い、U29起業家募集について本音を語ってもらいました。

 

今回話を聞いたのは・・・

  photo   BLJ International Services 代表取締役社長 水流 早貴
1992年、岐阜県出身。学生時代にバックパッカーで訪れたインドで目の当たりにした貧困に衝撃を受ける。2018年11月ボーダレス・ジャパンに転職し、2019年7月より事業立ち上げのためインドへ。
 

photo   聞き手 ライター 佐々木恵美
フリーライター&エディターとして数千人を取材。ボーダレスの理念や活動に感銘を受け、客観的な視点で情報を発信している。
 

起業を志すも、自信がなくて就職

私を目覚めさせてくれた「ある言葉」とは

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エミ   さきさんは単身インドに渡り起業されたということで、かなりパワフルな女性を想像していたのですが、実際は自然体でかわいらしい印象ですね。まずは今、手がけている事業について簡単に教えてください。
     
さき   インドで、学歴やスキルのない女性の貧困問題を解決するために起業しました。具体的には、都市のスラムにいる女性たちを雇用して、富裕層の家庭で家事代行サービスを行い、安定した収入を提供することで、劣悪な環境から抜け出せるようなサポートをしています。
     
エミ   根深い問題に切り込んでいるのですね。いつから海外に興味があったのですか?
さき   私は人口3,000人以下の小さな町で生まれ育ち、中学3年生まで1学年1クラスという狭い世界に、居心地の悪さを感じていました。父親がメーカーのバイヤーで、アジアを飛び回って働く姿を身近に見て、「私も知らない世界に出てみたい」「海外で活躍できる人になりたい」と思うようになりました。
     
エミ   華やかなビジネスパーソンのイメージですね。インドの貧困問題とはかけ離れている気がします…。
     
さき   そうなんです、大学ではアメリカに留学したいと思い、英文学科を選びました。でも、大学で出会った3つ上の女性の先輩がバックパックで世界を旅していて、私も興味を持つように。一人で途上国を旅するうちに、自分の価値観が大きく変わり、中でもインドに惚れ込んだんです。

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エミ   インドは日本人の間でも好き嫌いが分かれる国ですが、さきさんはハマったのですね。どんなところが魅力ですか?
さき   それはよく聞かれるんですけど(笑)、文化や食はもちろん、何より人が好きで、学生時代に10回以上行きました。エネルギッシュで人懐っこくて、おせっかいで、今を一生懸命に生きている感じにたまらなく惹かれるんです。
     
エミ   国が急成長していて、エネルギーがあふれていますよね。
     
さき   はい、そんな中、インドの貧しい村で活動するNGOを訪ねたとき、貧困層の子どもたちに出会いました。親のいない3歳から高校生くらいの男の子たちが暮らす施設で、電気も机もない暗い部屋で、みんな一生懸命勉強していました。「医者になりたい」「貧しい人を助ける人になりたい」という夢を持って…心を打たれましたね。

ただ、そのNGOは寄付金頼みで、東日本大震災の影響で日本からの寄付金が減り、運営の危機に陥っていました。辛い現実を目の当たりにして、私には「インドの貧困問題を解決する」「厳しい環境下で生まれても、夢を叶えられる社会を創りたい」という志が生まれました。

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エミ   なるほど、大学時代に理不尽だと感じた経験が今につながっていると。
     
さき   私の原点ですね。それから貧困問題について学んだり、大学を1年休学してインドやフィリピンでボランティアやインターンをしたり。貧困問題をビジネスで解決したいと思い、ボーダレス・ジャパンのセミナーに参加したこともあります。
     
エミ   起業するつもりだったのですか?
さき   起業したい気持ちが大きかったのですが、さすがに新卒では自信も資金もなくて、修行のつもりで大手人材サービス会社に就職。2年半は法人向けの採用コンサルティングに従事していました。

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エミ   貧困問題の解決なら、国連やJICAのような道もあるけれど、なぜビジネスにこだわったのでしょう?
     
さき   国際的な組織に就職したら、インパクトを出せると思うのですが、私はインドで顔の見える相手をサポートしたいと思っていたのです。だからビジネスを学ぼうと一般企業に入って、社内でプロボノに参加し、休日にリーダー育成講座にも通いました。仕事は忙しくてやりがいはありましたが、私がやりたいのはインドの貧困問題を解決することだという思いがあって、ずーっとモヤモヤしていました。
     
エミ   何年働いたら辞めようとか、決めてなかったのですか?
     
さき   5~6年で自信がつけば、とぼんやり思っていましたが、いざ働き始めたら10年しないと自信を持てないかもという気もして…。そんな中、夏季休暇に、ソーシャルビジネスをするインドネシアの企業でインターンをしました。

創業者は70代で、何十年も活動して国内最大の組織を率いていました。彼に「はじめは一人で事業を始めたんだよ。本気で問題を解決したいなら、まずは動くこと」とアドバイスをもらい、ハッと目が覚めました。私が日本で修行しても、インドの問題は1ミリも解決しないのだと。翌週、会社に辞表を出し、インドの貧困問題を解決するために、ボーダレス・ジャパンの門を叩きました。
     

ボスに伴走してもらい

3ヶ月でビジネスプランが完成

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エミ   ボーダレス・ジャパンにエントリーしたのが2018年の夏。さきさんが25歳のときですね。
     
さき   はい、当時は第二新卒枠があり、入社後にグループ会社で勉強してから起業する予定でした。バングラで児童労働問題の解決に取り組むSunday Morning Factoryで学びたいと思い、面接で社長の中村将人さんに自分の思いを話したら、「本気なら、うちで働かずにすぐ自分でやってみたら」と言われたんです。
     
エミ   えー、それはビックリな展開ですね!
     
さき   そうなんです、「えっ、いきなり起業!?」と動揺しましたが、もうやるしかない(笑)。11月から福岡に滞在して、ボス(社長の田口)のもとでビジネスプランを考えることになりました。みんな2~3ヶ月ほどでプランが仕上がると言われたけど、正直、そんなに早くできる気がしなくて…。

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エミ   2~3ヶ月間でプランができるとは、すごい!
     
さき   私の場合、最初はインドの貧困問題をどうにかしたいというざっくりとした思いしかなかったのですが、現地へ調査に行き、涙ながらに思いを語るスラムの女性たちを見て、この人たちに人生をかけようと覚悟が決まりました。ボスを壁打ちの相手として、とにかく考えに考え抜く毎日。進まずに焦ったりしたけど、ちょうど福岡でスタートした
社会起業家養成所「ボーダレスアカデミー」に参加できて、同志がいたことが心強かったです。

結局、ソーシャルコンセプトからビジネスプランまで完成するのに3ヶ月かかりました。ちなみに、現在は社内でプランニングの仕組みがさらに整い、2ヶ月以内でのプランニングを目指すという規定ができました。
     
エミ   プランが完成したら、いよいよ起業ですね。おめでとうございます!
     
さき   プランを磨く中で、社会起業家としてのスタンスも学びました。私は考え込んで進まないタイプだったけど、調査で感じた違和感を大切にするとか、心で決めるとか、スピードを重視して仮説をもとに動き修正するとか、本当に大切なことをたくさん吸収させてもらいました。ボスは私以上に考えてくれて、親身に伴走してくれました。

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エミ   25歳で入社して、すぐにプランを創って起業が決まり、スピーディに進みましたね。U29のプログラムで採用されると、同じような道をたどるのですか?
     
さき   はい、そうです。私のようにまだ具体的なプランを描けず、自信や自己資本がなくても、強い思いがあればプランニング期間の2ヶ月は生活費の支給があってバックアップしてもらえるというのは、本当にありがたい仕組みだと思います。起業が決まったら資金を提供してもらい、各分野のプロたちがサポートしてくれます。


私の場合、海外での起業経験がある先輩が、現地での会社の登記や会計など、自分一人では難しくてクリアできそうにない分野をサポートしてくれて、経営に関しては今でもボスや先輩起業家に相談しています。プレMMという社長たちの経営会議があり、同じようなステージにいる仲間と助け合い、レベルアップしていけるのも魅力です。
     
エミ   若手で起業したい人にとっては、この上なく恵まれた環境が整っていますね。
     

目の前の相手が変わる姿に感激!

もっと早く踏み出せばよかった

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エミ   昨年2月にプランが完成して、それからは?
     
さき   現地での登記やVISAの取得に予想以上に時間がかかり、待っている間は日本で事業パートナーを探したり、家事サービスのスキルを身につけたりしました。結局一人でインドに渡ったのが7月。そして、学歴やスキルがないために驚くほどの低賃金で劣悪な環境で働くスラムの女性たちを雇用して、家事代行サービスを展開しています。

ただ、もともとは日本人向けに日本食を作るサービスを予定していたのですが、日本人が住むエリアとスラムが離れていたために断念。プランとエリアを考え直し、インド人のアッパーミドル層に向けたお掃除サービスを9月にスタートしました。今は6人を雇用しています。
     
エミ   雇用している女性と、お掃除する家庭は、どうやって探したのですか?
     
さき   厳しい環境にいる人から雇おうと決めていました。私がスラムを訪ねて、夫のDVのために別居して一人で子育てをしている女性など、一人ひとりと話してメンバーを増やしてきました。雇用して1ヶ月は研修をして、現場を持つようにしています。掃除するお客さんは、新聞に折り込みチラシを入れて募集しました。

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エミ   地道な努力があるのですね。事業を始めて10ヶ月弱、これまで順調でしたか?
     
さき   いえいえ、価値観があまりに違って、組織が崩壊しかけたこともあります(笑)。みんな地方出身で、子どもの頃から実家の農業を手伝ったり、土木現場で働いたりして、小学校にもあまり通っていない人も多い。国民性も相まって、はじめのうちは皿を割っても人のせいにしたり、謝らなかったり、報告しなかったり…。お客さんからクレームがきて、さすがに私も辛くて。「期待するのはやめよう」と割り切り、先生として長い目で見なければと自分に言い聞かせました。
     
エミ   それは辛かったですね。
     
さき   泣きたいこともたくさんありました。でも、お客さんを持ち始めると、メンバーの顔つきから変わってきたんですよ。「私がきれいにするんだ」という責任感が芽生えて、認められようと頑張り、仕事のクオリティが上がった。こんな道具を使いたいとか、もっとこうしたいとか、より良くするための意見も出してくれて、本当に変わってきたなと思います。

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エミ   1年も経たないうちに、いい変化を実感できているのは素晴らしいですね。
     
さき   目の前で相手が変わっていく姿を見られるのは、ものすごくうれしいですよ。本人はもちろん、お子さんの未来にもプラスの連鎖があると信じていますし。
最近、メンバー紹介を書くために別の人が女性たちにインタビューをしてくれたのですが、チームで働くことが楽しい、助け合えるみたいなことを話したそうで、人として成長しているなあと思います。自分や子どもの悩みを相談し合い、「大丈夫、うちにおいで」なんて励まし合う場面を見たりすると、仲間として絆が深まっていることを実感します。
     
エミ   でも、今はコロナの影響で大変なのでは?
     
さき   もう2ヶ月半ロックダウン中で、仕事ができていません。でも、うちは給与を払い続けていて、社員から「ありがとう」と電話がかかってきたりします。まずはこの苦しい時期をどうにか乗り越え、家事代行サービスのモデルを確立して、もっと広げていきたいと思っています。手ごたえとポテンシャルは十分感じているので、ゆくゆくは女性の貧困という課題に紐づいている教育の分野などにも事業を展開していきたいです。
     
エミ   大変な状況でも前を向いていられるのは、どうしてでしょう?
     
さき   ボーダレスの仲間が支えてくれているのは大きいですね。あと、日本で起業が決まったタイミングで入籍した夫も、いつも日本から応援して背中を押してくれて、感謝しています。そして何より、インドの貧困問題の解決のために行動できていて、目の前の人が変わっていく姿を見ると、もっともっと頑張ろうと思えます。

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エミ   最後に、主にU29社会起業家プログラムに興味がある人にメッセージをお願いします。
     
さき   私は大学時代から起業したいと思いながら、自信がなくて就職する道を選びました。だから、会社で働いていてもずっとモヤモヤした気持ちを抱えていたし、いつになったら起業する自信がつくかも分かりませんでした。ソーシャルビジネスをしたいと話していた友人たちは、一度就職してしまうと仕事に追われて、いつの間にか志が薄れていったようです。
     
エミ   高い志がある優秀な人でも、いったん会社に入ると余裕がなくなり、起業を諦めてしまうという話はよく聞きます。もったいないですね。
     
さき   その通りです。今、振り返ってみると、私はもっと早くボーダレスに飛び込んで、起業すればよかったと思います。小さな一歩を踏み出し、行動すること、そして起業することでしか経験値は上がらないから。起業のためのスキルや自信はなくてもいい。

それに私はリーダーシップを取りたいタイプでもなかったんです。だけど、解決したい具体的な問題があって、「必ずやってやる!」という思いは人一倍強かったですね。


志があるなら、ボーダレスでサポートを受けながら起業して、うまくいかなければ修正していけばいいと思います。

社会人経験のある29歳以下の皆さん、熱が冷めてしまわないうちに20代前半でも、ぜひU29にチャレンジしませんか?社会人経験がない方や学生さんには、新卒社会起業家育成プログラム「RISE」というプログラムもあるので、チェックしてみてくださいね。
     

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