ソーシャルビジネスで世界を変える BORDERLESS GROUP Vol.16 家族を介護している若者の仕事を支援したい

「ヤングケアラー」「若者ケアラー」という言葉を知っていますか?親や祖父母、兄弟姉妹など家族の介護をしている18歳未満の子ども・18歳以上の若者を指す言葉です。そんな20~30代を対象にした日本初の転職支援サービス「Yancle」(ヤンクル)が、今年2月にスタートしました。16歳から母を介護してきた自身の経験をもとにYancleを立ち上げた宮崎成悟(以下、セイゴ)に、事業にかける思いをじっくり聞きました。

 

今回話を聞いたのは・・・

  Yancle株式会社 代表取締役社長 宮崎 成悟   Yancle株式会社 代表取締役社長 宮崎 成悟
1989年生まれ。立教大学 社会学部卒業。大手医療機器メーカーに入社したが、3年で介護離職。
株式会社エス・エム・エス、医療ITベンチャー、株式会社JMDCなどを経てボーダレスグループに
入社し、Yancleを創業。社会起業家養成校ボーダレスアカデミー一期生。「Japanソーシャルビジネスサミット2019」のピッチイベントで「最優秀賞」と「オーディエンス賞」を
W受賞。
 

ライター 佐々木 恵美   聞き手 ライター 佐々木 恵美
フリーライター&エディターとして数千人を取材。ボーダレスの理念や活動に感銘を受け、客観的な視点で情報を発信している。
 

介護しながら働く40歳未満は

日本に約37万人もいる!

エミ   Yancleは日本初のサービスを提供しているとのこと、すごいですね!どんなことをされているのでしょうか?
     
セイゴ   家族を介護している20~30代向けの転職支援サービスです。
     
エミ   介護というと、主に50代以降の方が担っているという印象があります。若くて介護をしている人は、日本にどのくらいいるのでしょう?
セイゴ   日本で介護しながら働いている人は約346万人、そのうち40歳未満が約37万人とされています。また、介護を理由に年間2万4千人も離職しているんです(2017年総務省調査)。
     
エミ   40歳未満が約37万人、そんなにいらっしゃるのですか!ヤングケアラーという言葉は知っていましたが、身近で話を聞いたことがなかったので、恥ずかしながら実感がありませんでした…。
     
セイゴ   ほとんどの方がそうだと思いますよ。家族の介護をしていても、特に若者には複雑な思
いがあって、まわりの人に話さないことが多いですから。
     

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エミ   なるほど。Yancleは具体的にどんなサービスを?
     
セイゴ   介護と仕事の両立に悩む人や介護離職した人のキャリアプランの相談にのり、介護しながらでも働きやすい職場をご紹介します。サービスの特徴は3つ。1つは、家族の介護経験があるキャリアパートナー、つまり僕が話を伺うこと。
経験者だからこそ理解できることがありますし、介護制度などの情報も提供します。2つ目は、介護状況に合わせたキャリアプランをご提案すること。そして最後に、介護しながらでも働きやすい企業のご紹介です。企業にもヒアリングを重ねて、介護に理解のある企業を選定しています。
     
エミ   介護している当事者の目線に立った、今までにないサービスですね。すぐに大きな利益を出せるわけではないと思いますが、社会的な意義が高く、ボーダレスだからこそできる事業だと思います。
セイゴ   「Japanソーシャルビジネスサミット2019」のピッチで「最優秀賞」と「オーディエンス賞」をいただき、僕がやりたかったことを認めてくれる人たちがいるんだなと勇気をもらい、本当にうれしかったです。
     

16歳から母の介護を続けて
立ちはだかった仕事の壁

エミ   セイゴさんは今30歳ですね。そもそもこの事業を立ち上げられたきっかけは?
     
セイゴ   話せば長~くなるのですが(笑)、僕自身が介護を経験しているんです。
     
エミ   長くていいですよ、ぜひ聞かせてください。
     
セイゴ   僕は父母と姉弟の5人家族で、東京でごく普通の生活を送っていました。でも、僕が中学3年生あたりから母にめまいが起こり、医師には自律神経失調症と言われて。日に日に症状がひどくなる一方で、病院を回った結果、多系統萎縮症という診断が下されました。脳の一部が委縮していく、不治の難病です。
     
エミ   難病ですか…。
     
セイゴ   はい、高校生になると、母の階段の上り下りや外出の付き添い、家事などを手伝っていました。そして大学入学を控えたある朝、母が突然、眠ったまま意識不明に。「様子を見よう」という父を尻目に、僕が強引に救急車を呼びました。母は一命をとりとめたものの、ほぼ寝たきり状態になってしまいました。
     
エミ   10代半ばで大変な経験でしたね。それで本格的な介護が必要になったと。
     
セイゴ   はい、大学への進学をあきらめて、介護づけの毎日が始まりました。この時期は本当に辛かった。母が痛みで辛そうで、「死にたい」という言葉を口にしたことも…。介護サービスを利用できるようになり、姉が家にいられる時間が増えたので、僕は2年遅れで大学へ。とはいえ、母を2時間以上はひとりにできなくて、授業を休みがちになりながらも勉強と介護を両立しました。
     

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エミ   お友達には話しましたか?
     
セイゴ   みんなはサークルや飲み会、バイトで楽しい大学生活を送っていて、雰囲気を壊したくないから話せませんでした。「なんで授業に来ないの?バイト?」「飲みに行こうよ」と声をかけてもらっても、「ずっとバイトで忙しくて、ごめん」と嘘をつくのが精いっぱい。父や姉が介護を担ってくれる時間が増えて、どうにか大学を卒業できました。
     
エミ   就職活動はいかがでしたか?
     
セイゴ   それも難しくて、当時の僕に話せるのは介護と学生生活の両立くらい。人事の方々からは「なぜ施設に入れないの?」「ほかの家族は?」と突っ込まれ、うまくいきませんでした。幸い医療系の会社に入ることができて、介護は家族に任せて京都で働いていました。でも、母の体調悪化を機に、やはり東京で母をみながら働きたいと思い、やむなく3年で退職。いろんな転職サイトに登録しても、介護の状況を理解してもらうことはできず、虚しさだけが募りました。
     
エミ   その経験がYancleの立ち上げにつながっていると。
     
セイゴ   その通りです。それから数社で働きながら、自分と同じように孤立している若年介護者を支援したいと構想を練っていました。
     

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エミ   ボーダレスに出会ったのは?
     
セイゴ   ソーシャルビジネスという言葉を知り、いろいろと調べているときに「ボーダレスアカデミー」の受講生募集を見つけて「これだ!」と。2018年秋に1期生として受講し、5か月かけてビジネスプランをブラッシュアップ。最後のピッチで賞もいただきました。それから会社を辞め、ボーダレスに入って社長の田口のもとでプランを磨き、2020年2月に事業をスタートすることができました。
     

ヤングケアラーが認められる

社会を実現したい

ヤングケアラーが認められる社会を実現したい
エミ   事業をスタートされてまだ2か月弱ですが、手応えは?
     
セイゴ   正直なところ、始めるときは不安でいっぱいでした。でも、確実に反響があって転職希望者に話を聞かせてもらうと、「ようやく分かってもらえた」「相談できるところができてうれしい」などと言ってもらい、「必要とされていたんだな」と実感が湧いています。

もともとは病気の親や障害のある兄弟姉妹などを一定期間介護している人をメインに考えていたのですが、親がガンになり、急に仕事との両立が厳しくなって…という人からの問い合わせも多いですね。
     
エミ   企業側はどうですか?
     
セイゴ   登録会社は20社を超えました。「介護をしていたら、ほとんど働けない」と思い込んでいる人事担当者は多いようですが、実際は「週1日リモートワークを希望」「月に数日早く帰宅したい」など、ワーキングマザーとあまり変わらない方もたくさんいます。Yancleとしては、相談してくれる方の話をしっかり聞いた上で、一人ひとりに合った会社を探していきます。
     
エミ   確かに「ワーキングマザーと変わらない」と聞けば、採用のハードルが下がりそう。
     
セイゴ   これから日本は高齢化が進み、家族を介護する若者が増えていくでしょう。それでも、仕事をあきらめなくていい社会を作りたいんです。20年以上前、ワーキングマザーは少なくて肩身の狭い思いをされていましたが、今では育児と仕事を両立するのが当たり前になりました。育児をするイクメンもしかり。
時代とともに社会の捉え方は変わっていきます。家族を介護する若いケアラーも、きっと認められる時代がくると信じています。Yancleを通じて、そんな社会を実現していきたいです。介護をしている方、そんな方の採用に少しでも興味がある企業の方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
     

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エミ   素晴らしい、これぞソーシャルビジネスですね。最後にひとつ、気になっていることを聞いてもいいですか?お母さまの具合が急変したとき、お父さまが「様子を見よう」と言われたのはもしかして…。
     
セイゴ   実はその10年後くらいに真実を知りました。母は父に「私に何かあっても助けないでね」とお願いしていたのだと。そのまま様子を見ていれば、母は眠ったまま安らかに死ぬことができたと思います。寝たきりの母と向き合いながら、僕は「母が苦しい思いをしながらも生きる意味って何だろう」と考え続けてきました。僕なりの明確な答えは出ていないのだけど、母の苦しさを原動力にYancleが立ち上がり、社会の役に立つことができれば…そんな願いを胸に秘めて、
この事業に全力で取り組んでいきます。
     
エミ   ごめんなさい、思わず涙が…(泣)。プライベートなことを率直にお話してくださって、ありがとうございます。心から応援しています!
     

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カンブリア予告

【お知らせ】カンブリア宮殿に出演します!

次世代ビジネスの挑戦者たち 第3弾!「社会貢献の新潮流を生む 若き起業家の挑戦」

ボーダレス・ジャパンが4月16日(木)22:00放送の日経スペシャル「カンブリア宮殿」 (テレビ東京)で紹介されます。

番組公式サイトでは予告が公開中!ボーダレス・ジャパンの創業秘話やお客様の声、社長たちが日々奮闘するリアルな事業の様子など、普段見れない様子も1時間たっぷり紹介いただきます。ぜひご覧ください!

■放送日

2020年4月16日(木)22:00-22:54

※放送終了後1週間は「TVer」にて無料でご視聴いただけます。

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わかりあえないことから~コミュニケーション能力とは何か ~

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アスリート×経営者の意外な共通点とは!?

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<創業者田口登壇>未来の社会起業家募集!ボーダレス・ジャパン会社説明&質問会

【21卒の学生対象】4/13,23@オンライン
<創業者田口登壇>未来の社会起業家募集!ボーダレス・ジャパン会社説明&質問会

社会問題解決をシゴトにしたい学生のための会社説明会+質問会です。
ボーダレス・ジャパン創業者の田口が、社会問題解決とビジネスを両立させることができた独自の仕組みやボーダレス流の事業の作り方を解説し、みなさんの質問にお答えします!※当イベントの対象は今秋卒業予定の学生も含みます

【日時・イベント申し込みページ】
 《1》4月13日(月) 18:30~19:30
 《2》4月23日(木) 18:30~19:30
【方法】ZOOMによるオンライン開催
【料金】無料
【登壇者】田口一成

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<創業者田口登壇>未来の社会起業家募集!ボーダレス・ジャパン会社説明&質問会

【社会人対象】4/27@オンライン
<創業者田口登壇>未来の社会起業家募集!ボーダレス・ジャパン会社説明&質問会

社会問題解決をシゴトにしたい社会問題解決をシゴトにしたい社会人のための会社説明会+質問会です。

ボーダレス・ジャパン創業者の田口が、社会問題解決とビジネスを両立させることができた独自の仕組みやボーダレス流の事業の作り方を解説し、みなさんの質問にお答えします!

【日時】4月27日(月) 19:00~20:00

【方法】ZOOMによるオンライン開催

【料金】無料

【登壇者】田口一成

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湯沢暮らし勉強会 新幹線通勤のすゝめ

【オンライン】4/17,24,28
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「地方で暮らす人を増やし、消滅可能性都市をなくす」ことを目指して官民連携で湯沢町への移住促進に取り組むきら星が、今まで地方への移住(Uターン、Iターン)を考えたことがなかった方に向けて、事例や実例を交えてお話するオンラインイベントを開催します。

■日時・イベント申し込みページ

《1》4月17日(金) 19:30-21:00

https://peatix.com/event/1457748

《2》4月24日(金) 12:10-12:50

https://peatix.com/event/1457314

《3》4月28日(火) 7:30- 8:00

https://peatix.com/event/1457664

【方法】ZOOMによるオンライン開催

【料金】無料

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