たいらさん |
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簡単ですよ。開発するときに考え抜いたのは、都市部に暮らす人でも出来るコンポスト。
・環境に負担をかけない ・続けやすい ・良質な堆肥ができる この3条件を満たすものを作りました。中身や環境条件を変えたモニターテストを何度も重ね、最良のものを今回、商品化したんです。2種を展開していますが、はじめての方におすすめなのは「LFCガーデニングセット」(写真右)という、初心者の方向けの3週間のお試しガーデニングキット。コンポストと、基材、土と種がセットになっています。
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(LFCガーデニングセットは3週間分:約6キロもの生ごみを堆肥にすることができる)
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たいらさん |
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フェルト容器のなかに茶色の袋をセットし、そこに生ごみを吸い取る床(とこ)である「基材」を入れると準備完了。そのなかに毎日生ごみを入れていきます。例えば野菜の皮や余り物などをその都度、軽く水気をきってポンと入れ、スコップで混ぜ袋の口をクリップでとめておくだけ。においもほとんどしません。3週間入れ続け、さらに+3週間寝かせて(熟成)、土の状態を整えたら種を植え、野菜を育てます。「生ごみが野菜に変わった!」っていう実感ができるお試しキットなんですよ。
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タニガワ |
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3週間も生ごみをどんどん入れていくのに、中身のかさが増えないって魔法みたいですね。土のなかはどういう状態になっているんでしょう?
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(17年かけて開発された保水性と排水性に優れた基材。内容物には有機性廃棄物をいくつも試し、もみ殻燻炭が使用されている)
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たいらさん |
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生ごみを入れると基材のなかで微生物が分解を始めます。微生物の寿命はたった2、30分(長くても2時間)と言われていて、世代交代をしながら出す酵素で分解をします。熟成期間をおいたら安全な状態の堆肥が完成です。微生物のからだを通した栄養は植物が吸いやすいから良質な野菜が育つ。これがやめられないくらい本当に美味しいんですよ。 |

(毎日のお弁当は、育てた野菜をたっぷり入れて)
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タニガワ |
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入れて、混ぜて、蓋をする。それだけで出来るなんて。ごみを入れるときにごみ袋ではなく、コンポストに入れることにするだけでいいんですね。
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タニガワ |
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そもそもコンポストを仕事にしたきっかけには、お父さんへの介護のご経験があると聞きました。
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たいらさん |
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もう25年前、病気で自宅に居た父の食事を私が担当したんです。無農薬野菜を探し回り、3回の食事づくりにかなりの手間と時間をかけ大変な日々でした。でも、日を追うごとに父がどんどん元気になっていったんです。そのことで食材選びの大切さを目の当たりにし、嬉しかった一方で、当時1歳だった娘をみて「この子が今、口に入れてるものは大丈夫だろうか?」って不安にもなってしまって…、体に良いと言われているものばかり買い揃えるようになったんです。でも、これはずっとは続けていけない、と気付いてからは「誰でも持続可能な安全な食」について考えるようになりました。「食べ物は大切な人の存在そのものを左右する」この時、痛感したことです。当初、余命3か月といわれていた父が、2年元気でいてくれ、たくさんの思い出をつくることができました。
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たいらさん |
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父が亡くなってからはこの経験を活かし、人の役に立つ仕事をしようと思いました。だれでも無理なく続けられる方法を考えていくうち、水の浄化やいろんな命の源が「土」にあることにたどり着きました。ならば、土の改善と日々の暮らしをつなげることをしよう。その考えに至った時、昔から母がやっていた、庭のコンポストが目に入ったんです。これはもしかして…と思ってやってみると良いことづくし。答えが、母のコンポストにあることが分かったとき「これだ!」って光がさして道が拓けた気がして。もう、嬉しすぎてその後3日くらい寝れなかったです。(笑)
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タニガワ |
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探し続けた答えがそんな身近にあったとは!奇跡のようですね。お母さんはいつからコンポストを? |
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たいらさん |
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母に聞くと、昔から肥料代わりに生ごみを埋めていたそうで。販売されているコンポスト容器を取り入れ、虫やにおいに挫折しながらも、いろんな虫除けの方法を自己流で考えるうち、コンポストの達人になっていたんです。それからは朝から晩まで徹底的に教わる日々。他のところでも話を聞きましたが、堆肥づくりで母を超える人はいなかったんです。母には自治体からコンポスト講座の依頼が来るようになり、本を出版することになりました。講座の内容を母が作り、私は同時にいろんな機関で組織づくりを勉強。渡米してNPOの現場を体感し立ち上げたのが [NPO法人 循環生活研究所(じゅんなま研)]です。二人三脚で組織体にしたのは父の死から約1年後のことでした。
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たいらさん |
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その後、段ボールのコンポストを開発し、年間の講演数も450本となるなど目まぐるしい日々。そこで2005年に内閣府の人材育成事業を、つまりコンポストの指導者を育てることにしたんです。0から立ち上げたノウハウを渡すことに抵抗もありましたが、環境が悪化しているスピードを考えると、そうも言っていられない。全力でライバルを育成しようと決めたんです。今やコンポストの指導者は全国で200人を超えるまでになりました。
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タニガワ |
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200人!すごい広がりですね。今回、その長年の実績があるNPOから独立し、ボーダレスグループにジョインしたのはなぜですか?
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たいらさん |
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コンポストを社会にもっと広げ持続可能なモデルにするために、NPOと企業体の2本柱でやっていくことに舵をきったんです。ボーダレスグループに入って、今回の都市型コンポストを開発しました。SDGsなどの関心が高まっている今は追い風。すごく大きな一歩だったけど、実現したい未来に必ず近づく、そう思って頑張っています。
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(篠原さん 写真左/はLFCの活動に感銘を受け先月入社。“たいらさんは憧れの人だった”と話す)
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タニガワ |
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開発したコンポストはSNSでも多くの投稿があり(#LFCコンポスト)、全国誌にも多数取り上げられているそうですね。
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たいらさん |
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ありがたいです。それと、先日とったアンケートで、ご購入者のうち86%の方がコンポストを『はじめて』だったということがわかって。「本当はやってみたい」と思っていた人の背中を押せたのかな、と思うとたまらなく嬉しかったです。SNSを見ていると、コンポストをはじめた方の次にとる行動が私の実現したい未来そのもの、という場合が多くてモチベーションに繋がっています。例えば、はじめは抵抗感をもっていた人が、とにかくやってみて、その1年後には畑を借りて耕すようになっていたり(笑) |
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タニガワ |
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ええっ、畑まで!それはすごいですね。
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たいらさん |
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他にもいろんな感想を目にすると「やっぱりコンポストって素晴らしいな」って、今でも毎日思うんです(笑)そしたらね、もう人に伝えずにはいられない。だって、スーパーで買って食べて、捨てるって暮らしから、もうひとつコマを進めるだけで世界が変わるんですもん。 |

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たいらさん |
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今、生き生きと活動する母をはじめ、立上げ当時に赤ちゃんだった長女や父が亡くなってすぐ生まれた次女も成人し、一緒にコンポストを広げてくれています。そんな母や娘たちを見ていると、やってきてよかったと嬉しい気持ちになります。 |
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タニガワ |
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母から娘へ、娘からその娘たちへ。親子3世代で向かっていけるテーマがあるって素敵ですね。すべてのはじまりは亡くなったお父さん。お父さんが今のご家族をみたら、さぞ驚かれるでしょうね! |
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たいらさん |
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ですよね(笑)私、父が亡くなって25年間、一度もモチベーションが下がらないんです。コンポストはいろんなことを解決する素晴らしいもの。もっと全国に広げるために今、モデル事業を他の機関と連携しながら進めているところです。これからも色んなチャレンジを続けていきます。 |
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コンポスト容器にある取っ手は“持ち運びがしやすい”という点のほか『将来、できた堆肥を野菜と交換するしくみを全国に広げる。そのときに持ってきやすいように』というビジョンになぞらえて作ったんだとか。このバッグを持った多くの人が、一同に集まって-その時にはきっと、生ごみを捨てるなんてもう昔の話。循環生活を当たり前に楽しむ、そんな未来図はもうすぐそこまで来ています。 |
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