
皆さんは「社会起業家」をご存じですか?
社会起業家とは、社会問題をビジネスの力で解決する人です。
ではこれを踏まえて、もう1つ質問を。社会起業家と聞いて、どんなイメージを持ちましたか?
なんかすごいことをしようとしている人?
意識高い系?
凡人には理解できない思考を持っている人?
きっとこのように感じた人も、中にはいるのではないでしょうか。
そこで今回は社会起業家とはどんな人なのかについて、「私を変えた一冊」という切り口から少しだけ紐解きます。中でも「事業を立ち上げて3年未満の若手起業家たち」に絞り、社会問題という荒波に挑む決意をした人たちの脳内を、本を通してのぞいてみました。
目次
「変人ではなく、自分の思う生きかたを貫ける人間なんだ!」 Shin Sekai Inc. 坪田勝志の愛読書は『嫌われる勇気』
生まれた場所にかかわらず誰もが平等な機会を得られる社会をつくるため、フィリピンでタコライス店をオープンさせたShin Sekai Inc.(2020年5月現在、登記手続き中)の坪田勝志さん。極度の貧困状態にある人たちに安定した収入源をつくるため、「子どもを通学をさせること」を契約条件に、ゼロ資金から店を持てるマイクロフランチャイズ事業を立ち上げました。
そんな彼を変えた一冊は、『嫌われる勇気』(著/岸見 一郎・古賀 史健)。
心理学界の三大巨匠の1人、アルフレッド・アドラーの教え・思想を、対話篇形式で分かりやすく解き明かしている本書。坪田さんはこの本を読んで、周りから変人扱いされていた時期に、むしろ自分は自分の生きたいように生きているんだと気づき、自分の思う生き方を貫く大切さを認識できたそうです。
「これでいいのかな」と自分の生き方に疑問を持つことは、きっと誰にでもあると思います。そんなとき一冊の本が救ってくれる、なんてこともあるかもしれません。
■Shin Sekai Inc.事業紹介
https://www.borderless-japan.com/social-business/borderless-philippines/
「論理的思考ってこうやって考えるんだ!」タベモノガタリ 竹下友里絵の愛読書は『ファシリテーションの教科書』
農産物のフードロスを解決するために、「タベモノガタリ株式会社」を立ち上げた竹下友里絵さん。生産されたものすべてが近隣地域の人においしく食べてもらえる農産物流通を実現するため、「八百屋タケシタ」と書かれた赤い法被を着て駅構内などで野菜の移動販売をしています。
『ファシリテーションの教科書: 組織を活性化させるコミュニケーションとリーダーシップ』(著/グロービス経営大学院教授 吉田 素文)
そんな彼女を変えた一冊は、『ファシリテーションの教科書: 組織を活性化させるコミュニケーションとリーダーシップ』(著/グロービス経営大学院教授 吉田 素文)。
マネジメント手法の1つであるファシリテーション。会議や議論でチームの力を引き出し成果をあげるファシリテーターに必要な思考プロセスをつくるためのすぐに実践できるノウハウが盛りだくさんな本書。大学時代、感情的な意思決定しかできないことに悩んでいた竹下さんはこの本を手に取り、「論理的思考ってこうやって考えるんだ!」と一気に腑に落ち、実践できるようになったそう。
起業家に限らず論理的思考ができなければ物事はうまく進みません。とはいえ論理的思考は難しいもの。論理的思考に苦手意識を持っているかたはぜひ、読んでみてはいかがでしょうか。
社会起業家は、息抜き読書も刺激的!?
ちなみに竹下さんはハラハラする系の本が好きで、息抜きに『片想い』『宿命』『美しき凶器』などの東野圭吾作品をよく読むそうです。息抜きに、ハラハラ!? 休めていますか?
■タベモノガタリ
https://www.yaoyanotakeshita.com/
■事業紹介
https://www.borderless-japan.com/social-business/tabemonogatari/
「誰かのために働くことは、こんなにも楽しくてワクワクするものなんだ」Relight 市川加奈の愛読書は『「20円」で世界をつなぐ仕事』
倒産や失業などを理由にネットカフェや違法シェアハウス、24時間営業店舗での生活を余儀なくされている「見えないホームレス」問題。そんなホームレス状態の人たち向けに就労サポート事業をしているのが「Relight株式会社」の市川加奈さんです。
『“想い”と“頭脳”で稼ぐ 社会起業・実戦ガイド 「20円」で世界をつなぐ仕事』(著/小暮真久)
そんな彼女を変えた一冊は、『“想い”と“頭脳”で稼ぐ 社会起業・実戦ガイド 「20円」で世界をつなぐ仕事』(著/小暮真久)。
バランスの取れた食事を20円プラスして提供し、食べた人の肥満防止と上乗せした分をアフリカの子どもたちの給食費として寄付する活動をしているTABLE FOR TWO代表 小暮真久氏の著書で、「社会起業家として働くこと」について実践的に学べます。大学時代、漠然と社会に良いことしたいという想いをもっていた市川さんは、この本と出会ったことをきっかけに自身の働きかたを模索したそう。そして食の不均等をなくすという「みんなが幸せになる仕組み」が、今のRelightの事業の構想にもつながっていると言います。
その一冊との出会いが、自分の人生を動かすきっかけとなり、その後の人生の拠りどころにとなることもあるでしょう。自分の生き方を模索している人は、もしかしたら本の中にヒントがあるかもしれませんよ。
堅苦しい社会問題も、マンガなら気軽に
ちなみに市川さんからも、息抜きに読んでいる“マンガ”を紹介していただきました。テレビドラマ化もされた『健康で文化的な最低限度の生活』には、今まさに市川さんがしている事業とつながる内容がえがかれています。圧倒的なリアリティは、現場の人に取材を重ねててできた作品だからこそ。主人公の成長とともに、気付けば自分にも社会保障の知識が身についている面白さが味わえます。市川さんは、物語に出てくるような状況の人が安心して暮らせるようになるために事業をしているんだと、想いをより大きくしたいときに読んでいるそうです。
■Relight株式会社
■事業紹介
https://www.borderless-japan.com/social-business/relight/
若手社会起業家の頭の中を、本を通して見てみませんか?
若手社会起業家の「私を変えた一冊」を聞いてみて感じたのは、どんなにすごそうなことをしている人でも苦手なことや思い悩むことがあるんだなということ。つい起業家と聞くと、手が届かない人というイメージを持ってしまうのですが、そんなことはないような気がしました。
社会起業家を目指す人はもちろん、起業家と呼ばれる人たちの頭の中をちょっとのぞいてみたい人は、今回紹介した本を手に取ってみてはいかがでしょうか? もしかしたら、あなたを変える一冊と出会えるかもしれませんよ。
取材・執筆 / クリス
福岡在住のフリーライター。ボーダレス・ジャパンを4ヶ月で退職し、いまはパートナーとしてインタビューや執筆を手掛ける。愛猫“雛”をおなかに乗せソファに寝っ転がってアニメを見たりマンガを読んだりする時間が至福。仕事よりもこちらに時間を割きすぎる傾向があるが、やるべきことはやる。企業の採用コンテンツやブライダル、エンタメなどのメディアでも執筆。