はじめまして! コバヤシと申します。福岡でデザイナー兼ライターとして活動しています。ボーダレス・ジャパンのメディア『喫茶ボーダレス』でライターをすることになったクリスさんの、前職の元後輩です。

そもそも彼女が「社会問題とソーシャルビジネス」を取り上げるメディアでライターをする話はラインの近況報告で知ったのですが、私には一つ疑問が……。なぜなら私は、クリスさんから猫とアニメの話しか聞いたことがないからです。だから「そもそも社会問題に関心ありましたっけ?」と、率直に疑問をぶつけてみました。

 「いや、社会問題への関心は薄いですよ。それなのにライターを引き受けて大丈夫なんですかね? 私が一番心配(笑)」

いやいやいやいや! そんな大役を引き受けて大丈夫なのでしょうか!?

そこでで今回は、「社会問題に関心が薄い人間が、なぜ社会問題やソーシャルビジネスを取り上げるメディアのライターになったのか?」についてうかがいました。

※インタビュー日:2019年11月14日

このライター、社会問題を取り上げるメディアのライターなのに「社会問題って何?」と言ってしまう

コバヤシ ライター まずは自己紹介をお願いします。

 こんにちは、クリスと申します。ボーダレス・ジャパンのオウンドメディアでライターをすることになりました。普段は福岡でアニメを見ながら細々とライター活動をしています。どうぞよろしくお願いします。こちらは愛猫の「雛(ひな)」です。

 にゃー

コバヤシ ライター クリスさん、雛ちゃん、よろしくお願いします(笑)。早速質問ですが、クリスさんが今回ライターとして参画するボーダレス・ジャパンには「社会起業家」と呼ばれる人が集まっているそうですが、どんな方々なのでしょうか?

 貧困、環境問題、経済格差など、あらゆる社会問題を解決するために活動する人々だと思います。

コバヤシ ライター 「思います」って、自信なさげですね……? 

 そもそも社会起業家がなんとかしようとしている社会問題って、広義すぎて難しくないですか? 社会問題って、何なんですか?

コバヤシ ライター わ、私に聞いちゃいます……?

 いや、本当にもう……、私みたいな人間がライティングを引き受けちゃって、申し訳ないです。

元広報の黒歴史。「会社を利用する」と豪語したくせに4カ月で退職してしまう

コバヤシ ライター 社会問題への関心が薄いクリスさんですが、なぜボーダレス・ジャパンに迷い込んでしまったのでしょうか?

 ボーダレスは、求人サイトでたまたま見つけました。私も仕事を探しながら、漠然と「家族にみせても恥ずかしくない仕事ができたらいいな」という気持ちがあったので、社会問題を解決するために事業をしている「ボーダレス・ジャパン」に興味を持ったんです。だからまずは話だけでも聞いてみようと、軽い気持ちで会社に連絡を取り、見学のつもりで会社を訪問しました。しかし蓋を開けてみれば、はじめからボス(ボーダレス・ジャパン代表取締役社長 田口一成さん)との採用面接だったんです。

コバヤシ ライター 面接はいかがでしたか?

 落ちたな、と。なんせ、すっごい生意気なことを言ってしまったので。

コバヤシ ライター 何と言ったんですか?

 「社会問題にはあまり関心がありませんが、ライターとしての発信力を高めるために、会社を利用させてください!って(笑)。

コバヤシ ライター その場の空気を想像すると気まずいです……。どんなつもりでそんなことを言っちゃったんですか?

 無知を隠しても、そのうちバレるだろうと思って……。それに当時はフリーライターとして駆け出しのころで、「稼がなければ」という思いが強く、勢いづいてしまいました……。30歳目前の、黒歴史です。

コバヤシ ライター それで、採用面接の結果は……?

 なんとその場で採用してもらいました。ボスが「社会問題に興味なくていいよ」「会社は個人がやりたいことを実現する場だと思っているから利用してもらって構わない」と言ってくれたので。

コバヤシ ライター 社長の懐が広すぎる。

 また就職に不利なことも、正直に伝えました。私には、履歴書に書ききれないくらいの転職経験と病気にかかった経歴があるのですが、ボスは何の偏見も持たずに接してくれて。だから私も「私のような一般的にハンデと思われそうな経歴を持つ人も働きやすい社会にしたい!」という思いが湧いてきて、その場で入社を決意しました。

コバヤシ ライター そこから面談の中で、クリスさん自身に社会問題への関心が芽生えてきたんですね!

 かもしれません。といいつつ、入社してから約4カ月で退職してしまったんですけどね(笑)。

コバヤシ ライター ええっ! なんでですか?

 理由は至ってシンプルで、入ってみたら会社の文化についていけなかったんです。

コバヤシ ライター 会社の文化、ですか?

 ボーダレスが求人応募者向けに作った「ボーダレス・パーソン適性診断」で説明するのが分かりやすいと思うのですが、私はこの中の「向いてない人」にすべて当てはまる人間なんですよ(笑)。会社を辞めた後にこれを見て、「ああ、合わなかったわけだ」と思いました。

ボーダレスパーソン 適性診断

コバヤシ ライター このような志を高く持った方でないと、ボーダレス・ジャパンでは働けないのでしょうか…?

 あくまで適性の話なので、この適性診断の「向いている人」の項目に全て当てはまっている必要はないと思います。ただ私が見たボーダレスの中の人たちは、「向いている人」リストをまるっきり体現したかのような情熱あふれる方ばかりだったんです。一方私は、先ほども言ったとおり全く正反対の人間。家族にすらオープンネスじゃない部分もありますし、仕事も雛と幸せに暮らしていける稼ぎがあれば十分だと思っているので、三度の飯より仕事が好きとは言えません。

ねー、雛!!!(ぢゅ~~~!!!)

▲妖怪、猫吸い

コバヤシ ライター ボーダレス・ジャパンに「向いてない人」が「向いている人」と一緒に働くとなると、葛藤があったのでは?

 そりゃあ、もう! すさまじい情熱で働くメンバーと同じような熱量で働けていない自分自身の差に悩みました。しかも私が入社してついたポジションは、広報。会社の魅力を発信する立場で採用されたので、なおさら「早く会社になじまなければ」と必死でしたよ。

コバヤシ ライター クリスさん、実は真面目ですもんね。

 実はって何(笑)? でもまあ、気づけばその想いがどんどんプレッシャーになって、そうこうしているうちにいよいよ本格的に体を壊してしまって、会社を辞めざるを得なくなった感じですね。

コバヤシ ライター 一刻も早く会社になじもうと、自分自身を追いつめてしまったんですね……。

 もちろん、会社の文化が悪いわけではありません。ボーダレスが大事にしている文化を、入社前にしっかり知ろうとしなかった私の確認不足が招いた事態だと思っています。

コバヤシ ライター 転職あるあるですね。

 ただ1つ伝えておきたいのは、ボーダレスの人たちは情熱がすごいだけで、いわゆる「意識高い系」の人ではないということ。普通に「仕事終わらん~」と言いながらあたふたしている人を見かけることもありましたし。明らかに前日結構飲んだな?みたいな人もいましたし。いたって普通の会社員なんですよ。

一度退社したからこそ築けた、「会社と個人の関係性」とは?

コバヤシ ライター 会社の文化が合わずに辞めたにもかかわらず、今回ボーダレス・ジャパンのオウンドメディアのライターとして返り咲いたのはなぜですか?

 辞めて1年ぐらい経ち、フリーランスライターとしての実績もたまってきたタイミングで、Facebookにポートフォリオを投稿したんです。するとボスから「クリス、そろそろボーダレスのオウンドメディアやるかね!」とコメントがきて。

コバヤシ ライター いい大人がこのふざけた写真で「仕事ください」って、何を考えてるのかと思ったのは置いておいて……、ボスから声がかかったとは! しかしなぜこの話を受けようと思ったんですか?

 辞めたあとも、ボーダレスの活動を見て「社会や人のために働くっていいな」「すごい事業だな」と思う気持ちがありました。しかし私は会社を去ったうしろめたさや後悔を抱えていたので、積極的に関わろうとはしなかったんです。

コバヤシ ライター 確かに、辞めた会社とかかわるって、結構勇気がいりますもんね。

 そんな中で、ボスが声をかけてくれて。このことが純粋にうれしくて、すぐに連絡を取りました。そのあと、ボーダレス社内のメディア担当のメンバーからこのメディアを立ち上げる目的を聞いて参画を決めたんです。

コバヤシ ライター どんな目的だったのですか?

 「世の中のひとりでも多くの人が、社会問題をもっと身近に感じられる場所をつくりたい」という想いでした。この話を聞いて、「これは、社会問題に関心の低い私だからこそ取り組む意義があるのでは?」と思ったんです。

コバヤシ ライター しかしかつては「早く会社になじまなければ」とプレッシャーを抱いていたんですよね。その気持ちとはどう折り合いをつけたんですか?

 そもそもボーダレスの誰も「会社になじんでほしい」なんて求めていなかったと、会社と距離を置いた今となっては思います。じゃなければ、会社の雰囲気が合わずに辞めた人間に声をかけてくれませんよね。

コバヤシ ライター では今回の件をきっかけに、再びボーダレスに入社したんですね。

 いえ、業務委託のパートナーとしてかかわるようになりました。

コバヤシ ライター 社員ではなく、パートナーを選んだ理由は?

 すでに他のクライアントの仕事もしていたからです。今引き受けている仕事はどれもすてきなクライアントに恵まれ楽しく取り組めているので、これからも続けたくて。社員になるときっと続けるのが難しくなるので、パートナーという選択肢しか考えていませんでした。それと、場所や時間を選ばない働き方が私にはあっていると感じています。

コバヤシ ライター 例えばどんな時に、その働き方があっていると感じますか? 

 アニメの劇場版を公開初日に観にいけるときですかね。ちなみに今年(※2019年11月時点)は『プロメア』という作品にハマりすぎて、気づいたら映画館に20回通っていました(笑)。2020年の2月にBlu-rayが出ます。あ! おすすめといえば、コバヤシさん『鬼滅の刃』アニメ見ました? クオリティの高さに隙がなさすぎるんですよ! ちなみに今期のおすすめは『バビロン』、それから『PSYCHO-PASS サイコパス 3』ですね。炯(けい)・ミハイル・イグナトフに落ちました。普段はクールなのに……、

▲「プロメアはいいぞ」とのこと。

コバヤシ ライター インタビューに戻っていいですか?

 すみません。

コバヤシ ライター 今幸せなことはわかりました。

 こんな幸せの満喫の仕方は、おそらく社員だったらできなかっただろうなと思います。それから雛との時間が増えたのも大きいですね。もちろん、仕事の進捗管理やスケジュール調整はすべて自己管理なので、大変ではあるんですけれども。

コバヤシ ライター 自己管理が難しそうです……。 

 たまに調整をミスして、ひとりで悲鳴をあげているときもありますが(笑)。

▲噛まれたって雛ちゃんとアニメの時間が何より大事

 それから、ひとつの仕事に集中できるのも私に合っていると感じています。社員時代は広報を兼任していたということもあり、事業にかかわるあらゆる仕事の変化に対応するためのマルチタスク能力が必要だったのですが、私はそれを苦手としていました。それがこれからはライターの仕事に集中できるわけです。もちろん大変なこともあるとは思うんですが、いい記事をつくっていくことだけに集中できるのは、私に適した働き方だろうと思っています。

コバヤシ ライター 現在はパートナーとして、自分に合った無理のない環境でボーダレス・ジャパンと新たな関係性が築けているんですね。

 ボーダレスと、というよりも社会問題とあらためて向き合うチャンスをもらったと思っています。

社会問題に関心がなかった、だけど今は…

▲雛ちゃん越しにアニメを見るクリスさん

コバヤシ ライター 実際にもういくつか記事を書いてきて、クリスさんの「社会問題への意識」に何か変化はありましたか?

 社会問題にそこまで関心がないまま参画したとはいえ、社会問題に真っ向から向き合っている社会起業家のみなさんと出会ってしまった以上、問題を無視できなくなりました。このままあらゆる問題を無視していたら、私が大切にしている「雛と過ごす日々」「アニメを楽しむ日々」が当たり前ではなくなるかもしれないと、自分なりに考えるようにはなりましたね。

コバヤシ ライター これからメディアを通して、さまざまな社会問題やソーシャルビジネスを取り上げていくと思うのですが、読者にどのようなメッセージを届けていきたいですか?

 特に届けたいメッセージみたいなものはないんですよね。

コバヤシ ライター うわ! そんなこと言って大丈夫なんですか?

 (笑)。届けたいというよりも、「あ、これ放っておいたらヤバいかも」「おかしいよね?」「いやだな」「え、そんな状況だったの?」と、記事を通して何かひとつでも感じてもらえたらうれしいな、という感じですね。実際に私もこういう感想を持ったから、少し社会問題への関心が高まったところがあるので。

コバヤシ ライター 確かに社会問題への関心を持ってもらうためには、記事を読んだあとに何か感じられるものがないと始まりませんもんね。

 ただ記事を通して何か感じるだけでは、その人の中でおそらくその関心の灯は消えてしまうと思うんです。だから、ひとつの社会問題をいろんな視点からに見られるようにできたらと思っています。

コバヤシ ライター ひとつの社会問題をいろんな視点から見る、ですか? 

 例えば同じテーマの社会問題でも、人や企業が違えばそれぞれの考えの中でいろんな取り組み方があります。そういったたくさんの人や企業の考え方と行動を知ることによって、心から賛同できる人や会社に出会えるかもしれないし、独自の視点で自分にできる行動を見つけるかもしれない。私はいちライターではありますが、このメディアが読者のみなさんのそういった可能性を広げる場になったらいいなと、こっそり思っています。

▲こんな大きなこと言ったらまた黒歴史になるかもしれないと言うクリスさん

 それから、社会問題について「知らないから教えて」と素直に疑問をぶつけられたらいいなとも考えています。これは社会問題に限りませんが、世間では話題になっていたり、すでに問題視されていたりすることに対して、「知らない」と言いにくい雰囲気がありませんか?

コバヤシ ライター あ、わかります! 物事について「知らない」と言うと、「そんなことも知らないの?」「毎日ニュースでやってるよ」なんて言われるのが恥ずかしくて、正直に言えないことも多いです……。

 私はそんな風に「知らない人」を突き放しても、前に進まないと思うんです。だって世の中で話題になったことでも、アンテナをはっていなければ見落としてしまいますよね。だからこのメディアでは、私が疑問に感じたことを率直に出していけたらいいなと。ある界隈ではもう知っていて当然の情報が、普段関心のない人とっては社会問題やソーシャルビジネスを知るきっかけになるかもしれませんし。メディアにかかわる全ての人が「知らないこと」も「知っていること」も共有して、みんなで理解を深めていけたらうれしいですね。

コバヤシ ライター そういえば、素直に疑問をぶつけて勉強できる場って、大人になってからはあまり経験してないかも……。

 私もまだまだ勉強中の身ではあるんですが、いちライターとして読者のみなさんも巻き込めるような記事をつくっていきたいです。だから、これからどうぞよろしくお願いします。

コバヤシ ライター クリスさん、本日はありがとうございました。

 

<インタビューを終えて>

連絡をもらった当初は、「社会問題に関心がない人間」が社会問題を取り上げるメディアで記事をなんて、全くイメージできませんでした(笑)。

しかしライターとして参画するまでの葛藤やメディアにかける想いをうかがって、今は応援したい気持ちでいっぱいです。一読者として、いろんな記事が読めることを楽しみにしています!

インタビュー・執筆 / コバヤシ
福岡出身クリエイター。2012年より広告制作会社でDTPデザイン、WEBデザイン、記事執筆、動画制作などを手掛けたのち、現在はWEBプログラミングの学習に勤しむ。興味の向くままなんでもやってみる子。最近は「牛スジカレーをいかに美味しく作るか」に心血を注いでいる。

編集 / クリス
福岡在住のフリーライター。ボーダレス・ジャパンを4ヶ月で退職し、いまはパートナーとしてインタビューや執筆を手掛ける。愛猫“雛”をおなかに乗せソファに寝っ転がってアニメを見たりマンガを読んだりする時間が至福。仕事よりもこちらに時間を割きすぎる傾向があるが、やるべきことはやる。企業の採用コンテンツやブライダル、エンタメなどのメディアでも執筆。