突然ですが皆さんに質問です。『SDGs(エスディージーズ)』ってご存じですか? なんでも社会問題と切っても切れないワードということで調べてみたところ、「Sustainable Development Goals(日本語訳:持続可能な開発目標)」の略称で、地球上の誰一人も取り残さず、持続可能な世界を実現するために、貧困・教育・エネルギーなどの17のゴールで構成された国際目標なんだそう。

地球上の誰一人だなんて、規模が大きすぎる……。
ていうか、難しい……。
でも言っていることは、なんかすばらしい気がする……。

そこで今回は、社会問題と真っ向勝負するソーシャルビジネスしかやらないボーダレス・ジャパンの社長 田口一成さんに、「SDGsって何ですか?」と聞いてみました。

※インタビュー日:2019年11月1日

これまでの経済活動は、異種格闘技戦だった!?

 ぶっちゃけますと、この取材の直前にようやくSDGsの読み方を覚えたレベルなので、正直田口さんの話が理解しきれるかどうか不安で……。

 おそらく、そういう人は多いでしょうね。だから今日ここだけで理解しようとしなくても大丈夫ですよ。

 感覚的にですが、今の社会が続いていくと人や世界、地球の資源がヤバいから、みんなでなんとかしようよ、という17の目標だと捉えています。

 大体そんな感じで捉えていればOKだと思いますよ! 外務省国連広報センターからも分かりやすい情報が出ているので、ぜひ一度、時間があるときに見てみてください。

※出典:SDGsのロゴ・アイコン /国際連合広報センター

 掲げられている目標はとてもいい内容ですよね。これに向かって頑張っている会社は、ちゃんと未来のことを考えているんだなあと思います。

 僕もSDGsの17項目は今の社会とこれからの未来に必要なことがまとめられている、すばらしい国際目標だと思います。ただ僕は今のSDGsの流れを見ていて、「私たちは、17あるゴールのうちの〇〇と△△を達成するために事業をしています」みたいな使われ方をされているなあと感じていて。

 その使われ方だと、何かまずいのでしょうか?

 そもそもSDGsに記載されている17のゴールは、経済活動をする者にとって「どれにも抵触してはいけない」「すべて自分たちのビジネスに関係している」ことが書かれていると思うんですよね。だから一部を取り上げて動くのではなく、すべてのゴールに配慮して経済活動をすることが、本来のSDGsのありかたなのではないかと僕は思うんです。

 例えば、どのような配慮が必要なのでしょうか?

 どんなビジネスも、大なり小なり環境に対する影響を及ぼしています。だから例えば、リサイクル素材を利用する、省エネ物流をするといったビジネス設計をして、環境への影響を最小化する努力が大切なんです。

ハルウララ

▲ボーダレスグループのSunday Morning Factoryのベビー服ブランド「Haruulala(ハルウララ)」の手提げ紙袋。環境への配慮から、リサイクル素材を使用している。

 またSDGsの中には「住み続けられる街づくり」という項目もありますよね。ビジネスをする上で、その地域社会に対して自分たちがどういう貢献をしていくかを考えることも欠かせない要素です。

 つまり、目標というか、もはや義務、責任なのではないかと?

 そうですね。だから僕は、「SDGs」のことを「SDRs(Sustainable Development Rules:持続可能な開発ルール)」だと捉えています。

 言葉自体に切り込むとは! ちなみにSDRsの「R」は、何を表すのでしょうか?

 Rは「Rules」。つまり、ルールだと捉えています。

 これまでの経済界には、社会や環境に配慮するルールがなかったんですか?

 これまでのビジネスは「もうかることが最優先」だったと思います。いわば、ルールなしの異種格闘技戦。「もうけて納税してはじめて、社会に経済に貢献できるのだから、まずはもうけなければ」とごもっともな理由で、環境や社会への影響をどこか二の次にしてきたと思います。

異種格闘技戦

▲これまでのビジネスはこういう状況だった……!?

 

 そんな状況で、よく経済活動が成り立ってきましたね……。

 それを放置し続けた結果、地球や社会が大変なことになってきたぞ、と。そしてそれらをサステナブル(持続可能な)状態にするためには、SDGsを達成する必要があるのではないかとみんなが言い始めたんです。

 いい傾向ですよね。

 ただ今は、どれか1つを取りあげて達成しますという段階でとどまっているように感じています。SDGsは、すべての項目が経済活動をする者にとって深く関わってくるものなので、1つを達成すればいいという話ではなく、事業をする上での前提条件、ルールとして考えなければならない、というのが僕の考えです。

 田口さん的には、今の社会、経済活動でこの17のルールは守られていないという感覚なのでしょうか?

 残念ながら……。だからまずは異種格闘技戦状態の経済活動を、SDGsというルールで統一していくことが大切なのではないかと。ラグビーにしろサッカーにしろ、スポーツにはルールがありますよね。ビジネスもそれと同じで、SDGsというルールを設けるんです。僕は、みんなが17の項目に抵触しないというルールの中で、自由にいろんなチャレンジができたらいいのになと思っています。

 SDGsは、経済活動を見るための指標とも言えそうですね。ちなみに田口さん的には、SDRsという言葉で広めていきたいんでしょうか?

 そんなことは全く考えていません(笑)。SDRsはあくまで僕の考え方なので。ただ僕が考えるこの動きの意味合いとしては「SDRs」として受け取ることが大切かなと思うだけです。

にわかSDGs、大歓迎!

 田口さんの話を聞いていると、SDGsは今のままだとトレンド止まりになってしまうのではないかとも思いました。

 たしかに現状のSDGsは、一種のバズワード、トレンドという側面があるとは思います。でもそれだけSDGsに関心を持ってくれている人がいるということでもあると思うんですよね。だからバズったりやトレンドになったりすることは、SDGsに取り組むためのとてもいいきっかけではないでしょうか。

 ラグビーのワールドカップで出た「にわかラグビーファン」ならぬ「にわかSDGs」ですね。

 にわかSDGs、大歓迎ですよね。ただこの言葉を知り、何らかの取り組みを始めたのならば、ブームに乗って「〇〇に取り組みます」とパフォーマンスをするにとどまらず、経済活動をする者としてこれらの項目すべてを守れているかという真の「当事者意識」を持って事業を運営していけたらいいのかなと思っています。

 SDGsに真剣に取り組もうと思ったら、必然的にSDRsという考え方に切り替わっていくのでしょうか。

 SDGsの17項目を、自分たちの経済活動における「ゴールリスト」としてではなく「チェックリスト」として使うことが理想的かもしれません。チェックリストとして使えば、自分たちができていないことが明確化されるので、そのためのアクションが取れますよね。

 会社のビジョンのようにゴールとして1つ掲げるのではなく、あくまで日々取り組むチェックリストとして取り入れることが、理想的なSDGsの取り組み方なんですね。

 SDGsをチェックリストとして使うようになればまず、ブームやバズワード的な一過性のものではなくなると思います。そしてこの17の項目は事業活動者にとってきっと、社会の一員として社会や環境に良い事業活動をするための指針になるのではないかと。

田口一成

後編では、SDGsが広まった背景にも迫ります!

SDGsはその言葉の意味から、あまりに大きな目標のように感じていた私。しかし田口さんの話を聞いて、もっと気軽にとらえていいのではないかと思えました。

どんな行動を起こすにも、まずは知ることが第一歩となります。だからSDGsも、「メディアで見たことある言葉だな」「他の企業も取り組み始めているな」とトレンドに乗っかることが、行動を起こすきっかけになるかもしれません。

後編では、SDGsの背景や、一人ひとりにできることについても聞いてみました。ぜひご覧ください。

 

後編記事はこちら⇒マイボトルも立派なSDGs!今日から国際目標は自分ゴトにできる!?

 


【参考】
・「持続可能な開発目標」(SDGs)について(2019.1) /外務省
・持続可能な開発のための2030アジェンダと日本の取組(2017.3) /外務省国際協力局


 

インタビュー・執筆 / クリス
福岡在住のフリーライター。ボーダレス・ジャパンを4ヶ月で退職し、いまはパートナーとしてインタビューや執筆を手掛ける。愛猫“雛”をおなかに乗せソファに寝っ転がってアニメを見たりマンガを読んだりする時間が至福。仕事よりもこちらに時間を割きすぎる傾向があるが、やるべきことはやる。企業の採用コンテンツやブライダル、エンタメなどのメディアでも執筆。