私たちに馴染みの薄い分野である「牧畜」。しかし私たちは牛肉を普段当たり前のように店頭で目にします。そのお肉の裏側には、実は様々なプロセスだけでなく人の想いが詰まっています。タツさんの燃え滾るような熱い想いと壮絶なストーリーをぜひお楽しみください!これから牛肉に対する考え方が少し違ったものになるかもしれません。

ケイスケ こんにちは!前回のタツさんに続き大阪出身の方でめっちゃ嬉しいです(笑)。

 

タツ 生まれは大阪府堺市ですがすぐ奈良に引っ越したので、どっちかというと奈良ですけどね(笑)。

 

ケイスケ 早速ですが、『宝牧舎』という社名に”宝”が入っているのがいいですね!

 

タツ 畜産業で起業したのでご想像のとおり「放牧」の音に当てはめました。

 

ケイスケ その「お宝=まだ見出されていない価値のあるもの」は何ですか?

 

タツ 「廃用母牛(はいようははうし)」です。黒毛和牛になる子牛を産んだお母さん牛のことを母牛と言いますが、妊娠できなくなるとお役目御免とお肉にされてしまう母牛のことをこのように言います。

 

ケイスケ ”廃用”という言葉がきつく聞こえますね…。この廃用母牛の抱える問題を教えてください。

 

タツ 母牛が全国で5〜60万頭いる中で廃用となる母牛は少なくとも年間5〜10万頭くらい出てしまいます。大分県だけでも年間1,000万頭ほどが廃用として市場に出荷されているのが現状です。

 

ケイスケ そんなにたくさんいるんですね!?そもそもどのような背景で「廃用」となってしまうんでしょうか?

 

タツ 理由は様々でどれも一概には言えませんが、例えば高齢(平均年齢7歳を超える年齢)が挙げられます。また、母牛自体の肉質の変化による牛肉としての市場価値が下がる前に新しい母牛と入れ替える”更新”により「廃用」、つまりお肉となる場合もあります。

 

ケイスケ 牧場側の経済的な理由が絡む場合もあるということですね。

 

タツ そうですね。一頭100万円の価値がある黒毛和牛に対して、廃用母牛は10万円。僕はこの価値をもっと上げたいんですよ。

 

ケイスケ そんなに価値が変わってしまうんですね!

 

タツ これまで黒毛和牛を産んでくれたお母さんの最後がそれかと!価値に違いが出るのはもちろんですが、そこまでの差があるとは思っていません。

 

ケイスケ そこで『宝牧舎』の登場というわけですね!事業内容を教えてください。

 

タツ その前に業界の説明をする必要があります。畜産業には以下の2種類の経営方法があります。
・「繁殖」(妊娠させた母牛が産んだ子牛を10ヶ月ほど育てて販売すること)
・「肥育(ひいく)」(育てた牛を牛肉にして販売すること)
宝牧舎が第一段階としてこれから行うのは、繁殖のための「廃用母牛のリハビリ放牧」です。僕らはこれを『廃用母牛のリハビリ放牧』と呼んでいます。
ケイスケ リハビリ放牧ですか?

 

タツ これまでは廃用母牛と分類されていた母牛を自然放牧や自然交配によって再度繁殖させることです。廃用母牛も、条件によっては実はまだ繁殖できるんです。

 

ケイスケ これまで市場や牧場の意向や都合で廃用にされてきた母牛がもう一度使命を全うできるチャンスですね。

 

タツ そうなんです!そして、母牛も最終的にはお肉になるので、第二段階として「肥育」事業も行う予定です。

 

ケイスケ この業界から「廃用」という言葉がなくなると、本当に素敵ですね!

 

タツ まさに全ての廃用母牛を買い上げる、というのが僕の理想です。「廃用母牛」という存在をなくしたいんです!

 

ケイスケ その放牧に必要となる牧場となる土地についても特徴があると伺いました。

 

タツ はい。阿蘇や北海道ような広大で優雅な牧場ではなく、「荒廃農地」という農地とは言えないような土地を蘇らせるところから始めます。

 

ケイスケ 自治体などが管理できなくなっているようなイメージがありますね。

 

タツ まさにその通りです。荒廃農地を復活させることでその土地に畜産業の雇用が生まれ、その集落にかつてのにぎわいを取り戻したいというのがゴールなんです。

 

ケイスケ まさにソーシャルビジネスですね!同業者から理解を得るのは困難ではありませんでしたか?

 

タツ そもそも価値観が違うので、同業者はまだ否定的です。基本的には誰もやりたがらないところを僕はやっているので。

 

ケイスケ どういうことでしょうか?

 

タツ 一般的に農家の目標は「一頭あたりの価値がなるべく高いものを売る」こと、僕は「一頭あたりの利益率が高いものを売る」ことです。

 

ケイスケ 一頭10万円だった母牛の市場価値が2倍、3倍と上がると利益も上がりますもんね。

 

タツ 僕は宝牧舎の牧場を「モデル農場」と呼んでいます。僕が先駆けとなって、これから廃用母牛を例えば100頭とか引き取る人が増えてくれるような世界を作りたいですね!

 

ケイスケ タツさんにとって特別な母牛はいらっしゃいますか?

 

タツ 5年ほど妊娠できなかった「こゆき」ですね。周りから市場価値が下がる前に出せと言われても、これまで頑張ってくれたので最後に安く買い叩かれたくなかったんです。

 

ケイスケ とても愛情を持って育てていらっしゃったんですね。

 

タツ お肉にせずに自然死を待って牧場に産めてあげたいとも思いましたが、悲しいことに牛は死んだら産業廃棄物という扱いになり埋められないんです。

 

ケイスケ そんな扱いになってしまうんですか!?

 

タツ そして、死んでしまうと食肉場に持って行く前にBSE (牛海綿状脳症)検査として脳を繰り出したりもしなければなりません。

 

ケイスケ 僕ならそんなの見ていられません…。

 

タツ こゆきにとって何が一番幸せかと考えたときに、やっぱり最後美味しく食べてもらうことではないかと。そして、だからこそ自分でお肉にしようと決めました。「ここでこゆきをお肉にできなかったら、これからもできない。だからやる!」と。

自分で育てた牛を始めて屠畜(とちく=自分でお肉にすること)したのがこの「こゆき」です。今年6月20日に屠畜して、今はうちの冷蔵庫にあります。

 

ケイスケ 壮絶な想いに言葉が見つかりません…。でもこのプロセスを経てできたお肉を私たちは普段口にしているわけですもんね。

 

タツ そうですね。 僕の牧場では人と牛の接点を持たせる場にしていきたいです。見て、食べて、そしてその体験から感じたり学んでもらえれば嬉しいです。

 

ケイスケ 衛生面のリスクもありそうですが?

 

タツ その面で牧場は外部の人を遠ざける傾向にあります。ただ僕はそのリスクをしっかり管理しながら、新しい牧場の形を示していきたいです。

 

ケイスケ 僕もぜひ一度タツさんの牧場を見てみたくなりました!このメルマガ読者の方々もこれから見に行ったりすることはできますか?

 

タツ はい、喜んで!僕のFacebookから直接メッセージをいただければ日時を調整できます。ぜひご連絡ください。

また、読者の皆さんにであれば、「こゆき」のためにもお肉を召し上がっていただきたいです。送料だけご負担いただくことになりますが、ご希望される方がいらっしゃいましたら、先着10名様限定で、お送りさせていただきます。こちらも直接メッセージをいただければ手配します。ぜひご連絡ください!

 

ケイスケ タツさんの想いがつまった「こゆき」のためにも、ぜひ受け取っていただきたいですね!

 

タツ 本当にそうですね!よろしくお願いします!