先日世界のCMフェスティバルに行ってきました。

象牙の密猟問題を取り上げたCMを見て衝撃を受け、象牙の密猟について調べてみました。すると、その問題には間接的ですが日本も深く関わっており、また密猟の収益が他の社会問題にも影響していることがわかりました。

この記事を読んで、皆さんにも身近な社会問題として感じて頂けたら幸いです。

そもそも「象牙」とは

象牙とは、読んで字の如く、象の牙です。材質が美しく加工も容易なため、昔から工芸品の素材として重宝されてきました。象牙の約6割は、主に高級な印鑑の素材として使われています。その他にも、アクセサリーや、部分的に楽器にも使われることがあります。

印鑑

象牙の消費国世界第二位は日本

どこの国がそんなに象牙を使っているのかと思いきや、実は日本は中国に次ぐ象牙消費大国です。象牙取引禁止前までは日本が世界最大の消費国で、1979年から1988年までの間、正規に輸入した未加工の象牙は、ゾウの数にして12万頭前後にものぼる量でした。

時を同じくして、アフリカゾウは1980年代の10年間で134万頭から62万5000頭にまで半減。日本の消費がアフリカゾウの減少を招いていることは、否定しようのない事実です。

アフリカゾウの深刻な減少を受け、1989年、ワシントン条約にて輸入禁止措置が取られました。日本政府は象牙の加工・販売に届け出制を導入し、完全な形の象牙を売買する際には登録を義務付けました。現在は、99年と2009年の2度、例外的に輸入が認められた象牙のみ取引が可能です。

しかし、楽天市場など国内の複数のオンラインショッピングモールにて、必要な届け出なしに象牙を販売する店舗が多数存在する他、経済成長が続く中国で、贈答品に使う象牙の需要が伸びたことを背景に、日本にある象牙を中国に持ち出そうとする動きも増えています。

象牙550

減少し続ける象

ワシントン条約事務局などによると、2012年だけで総個体数の7.4%に当たる2万2000頭が殺されたと見られています。タンザニアでは国内の象が過去5年間で約6割程度減少したとも。このまま乱獲が続けば、今後1世代のうちに象が絶滅してしまう可能性もあります。

密猟は、密猟者にとっても危険な行為です。取り締まる側との衝突によって、命を落とすこともあります。それでも密猟してしまう理由は、象牙の魅力的な取引額。闇市場での価格はこの10年で10倍、1本400万円にまでのぼるとも言われます。

密猟収益のゆくえ

密猟の収益は、テロ組織の活動の資金源になっているようです。2013年にケニアの首都ナイロビにあるショッピングモールでテロを起こしたイスラム過激派組織アッシャバーブ。その活動資金の約4割は、密猟の収益から得ているとのことです。他にも、今月ナイジェリアにて少女たちを利用した爆弾テロを起こしたボコ・ハラムなど、さまざまな組織が密猟で得た収益を活動資金にあてています。

テロ組織

私達にできること

自分たちの消費によって、知らぬ間にテロで犠牲になる一般市民の方々の命に関わっていることがあるとわかりました。私達ができることは、ささやかかもしれませんが、象牙取引に関わらないことでしょう。もちろん象牙製品を買わなくなったところで、テロ組織は別の収益源を探して活動を続けるでしょうが、少なくとも活動を助長することはありません。

世界がつながっていると改めて実感するとともに、自分の消費についても慎重に考えるきっかけとなりました。読んでくださった方にとっても、何らかの気付きとなれば幸いです。

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