電気を使えないことで被る影響は、フィリピンのSALtやブラジルのTSSFA、バングラデシュのEBIやインドのGravity Lightなどでたびたび取り上げてきました。今回も電力問題を取り上げます。

電気を使えないことで、勉強や読書ができません。成績が十分に取れず、ドロップアウトの原因にもつながります。また仕事の効率が下がり、怪我をするリスクも高まります。満足に電気が使えない人口は、いまだに13億人に上るといわれています。

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遊びのエネルギー

その一方で、発電技術はどんどん進歩しています。小規模であれば、牛糞、海水、重力、各種ゴミなど利用して電気を灯すことが可能になっています。
そのように数あるエネルギーの中で、今回ご紹介するUncharted Playが注目したのは、遊びで生じるエネルギーです。たとえばボールを蹴ると、足を振るときのエネルギーがサッカーボールの運動エネルギーとなり、ボールが飛んでいきます。そのエネルギーをうまく利用できれば、発電もできるという考え方です。

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充電もできる、サッカーボール

“SOCCKET”は、中に発電装置と蓄電装置が入っているサッカーボールです。ボールが転がることで発電され蓄えられます。発電装置などが入っているので公式球(試合などで使われるボール)よりも少し重いですが、転がり方などはほとんど同じです。
サッカーボールにはソケットがあり、そこに付属のライトを付けると明かりが得られます。1時間遊ぶことで、約3時間のライト点灯が可能になります。ボールから充電できるポータブルライトがあれば、“SOCCKET”の持ち主以外にも、電気を分け与えることができます。その充電時間はわずか25秒とのことです。

これによって、ボールが一つあれば11人のチーム全員の家に明かりを持ち帰ることが可能になる、というわけです。
またソケットにはライト以外のものを取り付けることも可能で、スマートフォンの充電などもできるようです。

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Uncharted Play

Uncharted Playは2010年に設立され、遊びの力を社会的に良いことに使うというミッションを持ったソーシャルビジネスです。“SOCCKET”はKickstarterで資金調達をうけて一躍有名となったのでご存知の方もいらっしゃるかもしれません。
最近では、スマートフォン充電ができる縄跳び“PULSE”も開発しているようです。こちらは縄跳びを飛ぶことで発電し、蓄電します。スマートフォンにつなぐことで充電でき、また別のソケットを付けるとライト点灯が可能になります。

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Uncharted Playのホームページより引用

途上国でも、先進国でも

この“SOCCKET”が優れている点は、子どもたちがこのボールで遊ぶだけで発電、数時間の電力使用が可能になる点です。ボール遊びはほぼ確実に世界中で行われており、つまりはほぼ世界中どこでも発電が可能になります。これによって完全にオフグリッドの発電できるようになります。

途上国では、有害物質をたくさん含む石油ランプや、二酸化炭素を排出するバッテリーに頼ることなく、また毎月の燃料を買いに行くこともなく明かりを得ることが可能になります。子どもは勉強ができるようになり、健康被害もなくなり、大人は明かりの下での作業ができるようになります。

先進国では、子どもも大人も遊べるので運動にもなります。ちょっと非現実的ですが、運動した分だけスマートフォンを充電できる、といったことも可能になります(大人が本気で蹴ったら壊れてしまうそうですが・・)。また何かの災害時などには転がすことで発電が可能になり、手回しのラジオのような働きが期待できますね。

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Uncharted Playのホームページより引用

エネルギーを利用する

Uncharted Playは、“SOCCKET”, “PULSE”ともに現在99ドルで販売しています。TOMSのOne for Oneと同じく、一つ購入すると一つが途上国の子どもに贈られ、また他にも支援団体と共同しつつ途上国の電気のない層へのアプローチも行っているようです。

またUncharted Playは、社会問題を解決しうる、クリエイティブな人材の輩出のために独自のカリキュラムにも取り組む姿勢を見せています。

途上国の電気が使えない人々へ広くいきわたるまでには、もう少し時間がかかるかもしれませんが、途上国か先進国かを問わず、有効な利用手段がたくさんあるソーシャルプロダクトであるといえます。