ソーシャルビジネスラボ、今回は最近話題の“ドローン”を使ったビジネスをご紹介します。日本では何かと悪名高いものになりつつありますが、きちんと使えば大きなソーシャルインパクトをもたらすことができるはずです。

ドローンの使い道

日本では、国会議事堂へ飛ばしたり、野球の練習中に飛ばしたりでニュースになり、あまりいいイメージがないドローンですが、近年では農業分野での使用も進んでいるといわれています。ドローンによって、種の植え付け、農薬散布、その他管理を行います。

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また流通大手のAMAZONがドローンによる配達を目指すなど、流通分野での運用も検討されるなど、活躍の分野は広がろうとしています。離島の多い日本でもこれは期待ができそうですが、法律の兼ね合いなどもあるようですね。

熱帯地域で止まらない森林破壊

今回取り上げるテーマは、森林破壊です。FAO(国際連合食糧農業機関)によると、1990年から2000年の間では、平均して830万ヘクタールの森林が減少しました。

これは大体オーストリアと同じくらいの面積です。続く2000年から2010年の間では、平均して年間520万ヘクタールの森林が減少したとされています。これは大体コスタリカと同じくらいです。

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森林破壊は特にインドネシアやラテンアメリカ、アフリカなどの熱帯雨林地域で深刻です。ラテンアメリカでは年間400万ヘクタール、アフリカでは340万ヘクタールの森林が毎年消滅しているといわれています。本数に換算すると、26億本といわれています。

大干ばつなどの自然現象も、森林が減少する一因になりますが、これほど大規模な森林減少の最大の原因は人間の経済活動にあります。毎年1300万ヘクタールほどが農地に変えられるとされています。
※他方、ヨーロッパや東アジアなど、植林や土地の再生が進んでいる地域もあるため、地球全体では減少した面積は小さくなります。

森林は何に変わるか

森林は、プランテーションなどの大規模な農地の開発、工場や住宅・高速道路の建設などによって伐採されていきます。熱帯雨林の中に、異質で巨大なヤシ農園や高速道路が広がっている写真を見たことがあるかもしれません。

また森林の消失を加速している原因の一つが、違法伐採です。警察の目が行き届かないところで、盗伐や決められた量以上の伐採が行われています。インドネシアでは7割以上が違法伐採とも言われるなど、深刻な状況です。

特に消失の激しい熱帯雨林

熱帯雨林は地表の14%を占めるのみですが、地球上の全生物種の75%が生息しているといわれ、多様な生物の住処となっています。また地球上の酸素の40%を生産しているとされ、二酸化炭素の吸収にも大きく貢献しています。

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まさに「生命の宝庫」ともいえる熱帯雨林ですが、消失は最も急速に進んでおり、地表の6%を占める程度にまで減少しています。このままのペースでは、熱帯雨林が消滅するという悲観的な予測もなされています。また熱帯雨林の消失で、年間5万種が絶滅しているといわれています。

熱帯地域は、雨が多く落葉や土壌が流されやすい・気温が高く分解速度が速い、などの理由から、赤色で酸性の、ラトソルと呼ばれる痩せた土壌になります。ラトソルでは一度伐採されると再生が非常に難しく、土壌流出などの原因にもなってしまいます。

年間10億本を植林する?

BioCarbon Engineeringは、このような現状に対して、ドローンを使った植林を目指しています。

やり方としては、人工衛星やカメラを付けたドローンによって、地形のデータを集め、植林する地域を決定します。そしてドローンから、ゲルに包まれた種(苗?)を発射し、植え付けていきます。植え付けた位置などは記録され、その後もモニタリングされていく。という仕組みです。BioCarbon Engineeringは、年間10億本の植林を目指しています。

同社は、環境問題を悲観したNASAの元エンジニア、Lauren Fletcher氏などを中心に設立され、ビジネスコンテストなどでも高く評価されています。

手間のかかる植林活動

植林は、人の手で行うと非常に手間がかかります。また散発的に行われるボランティアの環境保全活動などで与えられるインパクトは、大きな目で見ると非常に小さなものにすぎません。(決して意味のないものである、ということではありません。)植林になれた人を、たくさん使ってやっと大きなインパクトをもたらすことができます。

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上記動画より引用、ドローンによる植林の風景

一方でこのドローンの方法であれば人の手がいらず、大量に植林できるという点で、コストカットになる上に、効率的なモデルといえます。

ただし、植林になれた人が一つ一つ植えていくのと、ドローンによる発射ではどちらが木に成長する確率は高いのか、また植林後の実際の維持をどうしていくのかなど、現時点では結果を待たねばならぬ部分も多いです。さらに、同一種類の木を植えるのか、バリエーションを持たせることができるのか、などの課題も残っています。

しかしこのモデルが成功したならば、技術で環境問題を解決する良いロールモデルになるかもしれません。