今回は、オランダのVolkerVesselのユニークなアイデア、プロジェクトをご紹介します。
それは、「100%再生プラスチックでできた道路」です。

プラスチックごみの排出事情

2010年の推計では、人口の93%を占める海岸線を有する国で、2億7500万メートルトン以上のプラスチックごみが排出されたとされています。(これですべての総廃棄量の11%を占めるといわれています。)

プラスチックは日々大量に廃棄されています。

その中には、適正に処理されずに海洋に流出する廃棄物もあります。海洋に流出するプラスチックごみは、年間1270万トンにも及ぶと推計されています。このプラスチックごみは、黒潮などの海流に乗って、海洋上を巡りますが、最終的に一区域に集合、蓄積します。

太平洋では、北太平洋の中央(西経135度から155度、北緯35度から42度付近)が太平洋ゴミベルトと呼ばれています。面積にして、テキサス州の2倍、日本の4倍の広さに及ぶといわれています。また、このベルト地帯は、”Plastic Soup” とも言われています。

海流の影響により、地球上にはこのようなPlastic Soupが5つ存在するといわれています。普通のプラスチックは、廃棄しても自然界では分解されにくく、その廃棄方法は世界的な問題ですね。

プラスチックの優れている点

この問題に取り組み、海洋のプラスチックごみを利用しようと取り組んでいるのが、今回ご紹介するVolkerVesselです。
同社は、プラスチックの『欠点』を逆に利用した道路を構想しています。

○水や薬品に強い
現在のアスファルトを利用した道路は、交通量などにもよりますが、都市部での寿命は大体10年程度を見ているといわれています。道路のアスファルトは、雨や交通によってどんどん削れて行きます。放置された道路は、凸凹道になっていることが多いですね。

一方プラスチックは、天候や化学物質に対して腐食されにくい性質があります。この性質を利用した道路は、排水や強度の問題が軽減され、寿命も3倍に伸ばせるとされています。気温の変化も-40℃から80℃まで耐えられるため、実質的なメンテナンスは不要だそうです。

道路の舗装工事は、都市部でよく見る光景ですが、このアスファルトを交換したりしています。この工事は、迂回や渋滞の原因にもなっています。

プラスチックの道路です。
http://en.volkerwessels.com/en/projects/detail/plasticroadより引用


○軽い
プラスチックの特徴2つ目は、軽いことです。プラスチック道路は、この性質を利用して、穴を掘って、パズル状に「プラスチック道路」をあてはめていくという形をとります。(下図参照)

この簡単さによって、作業工程も大幅に削減でき、1ヶ月かかるところを1週間に程度に縮めることも可能だとされています。

プラスチックの道路は、軽さもウリです。


○中空構造を作ることができる
普通の道路は、アスファルトの下に砂利などを詰めています。これによって強度をあげたりしているようです。

一方でプラスチック道路では、内部を空にすることによって、その中に送電線や排水管などを入れることが可能になるようです。構造上これによって走行音や路面温度の上昇を防ぐこともできるようです。

今後に期待

VolkerVesselでは、プラスチック道路に使うプラスチックの原料をすべて海洋プラスチックごみとすることで、海の”Plastic Soup”の除去に貢献することを目指しています。

現段階では、実現には至っておらず、滑りやすさや歩きやすさなどのテストを行うために、パートナーのプラスチック企業を探している段階のようです。熱に弱いといわれるプラスチックですが、火災が起きた時にはどうなるのか、また交通によって摩耗しないのか、などのことも気になるところです。

しかし、100%再生プラスチックを利用すると公言した上に、プラスチックの「欠点」をうまく利用したアイデアだと思います。捨てればただのゴミですが、うまく使えば資源になりうる、発想の転換のいい事例だと思います。

プラスチックの道路が、今後の道路の中心素材になる日は来るのでしょうか。

Cradle to cradle(ゆりかごからゆりかごまで)

このプロジェクトは、Cradle to Cradle(ゆりかごからゆりかごまで)という考え方に則っています。

あまり聞きなれない言葉かもしれませんが、デザイナーのWilliam McDonoughと、化学者のDr. Michael Braungartによる、”Cradle to Cradle: Remaking the Way We Make Things “(North Point Press, 和訳:サステイナブルなものづくり―ゆりかごからゆりかごへ、吉村英子訳)で提唱されたとされた考え方です。

環境負荷を最小化するという考え方よりも、有益で再生可能な力をデザインするべき、であるという考え方です。

プラスチックを飲んで死んだアホウドリ。このような悲劇を起こすべきではありません。

有益というのは、環境に優しいのはもちろんのこと、ヒトの健康にもよく、経済成長を阻害しない、ということです。例えば製造業では、大量生産・大量廃棄ではなく、原料や製品はすべて再生可能なものにする、といったやり方のことです。

ソーシャルビジネスは、大量生産・大量消費・大量廃棄に代わる次世代のビジネスとして、社会問題を解決することはもちろん、環境に負荷を与えない、ヒトの健康を害さない、などが必須条件です。まさに、Cradle to cradleであるべきだといえます。