社会問題をビジネスで解決する「社会起業家」。「社会起業家になりたいけど、どうしたらいいのか分からない」「社会起業家になるために必要なことを知りたい」といった疑問にお応えするために、社会起業家に必要なことや向いている人といった社会起業家になるにはどうしたらいいかについて解説します。

1.社会起業家のタイプや一般的な起業家との違いとは?

社会起業家とは、社会問題をビジネスで解決していく起業家のことです。「社会起業家」と言っても、小さく事業を始めてしっかりコミットしたり、会社ではなくNPOを立ち上げたりとさまざまなタイプの起業家がいます。

また、事業として大きな利益を出し、社会的なインパクトを生み出す起業家もいます。今回は、こうしたビジネスと社会問題解決の両方に大きなインパクトを与える起業家について解説していきます。

「社会起業家と一般的な起業家の違いが分かりにくい」という声もありますが、その違いは事業の目的にあります。

ビジネスモデル

一般的な起業家は世の中のニーズを見つけ、そのニーズに応える商品やサービスを生み出していきます。つまり、事業の目的は「顧客のニーズに応じた価値を提供すること」にあり、そこからビジネスモデルを構築します。

一方で、社会起業家の場合、事業の目的は社会問題の解決です。そのため、起点は社会問題の解決にあり、そこから事業に必要な条件を明確にします。そして、条件を満たすビジネスモデルをつくっていきます。

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2.社会起業家になるために必要なこと

社会起業家になるには、ビジネスモデルを考え、その実現に必要なリソースを準備し、事業を始めるというステップがあります。このステップ自体は、一般的な起業家と同様です。

しかし、先述したように社会起業家の場合は、事業の目的が社会問題の解決にあるため、ビジネスモデルの考え方が少し異なります。それでは、どのように考えるのか具体的に見ていきましょう。

2-1.社会問題の現状と理想を明確にする

まずは自分が解決したい社会問題の現状を理解することが必要です。具体的には、解決したい社会問題とは「誰のどんな課題か」を明確にします。

2-1-1.対象者の「顔」が見えるようにする

対象者のリアルな姿=「顔」が見えるように具体化することが重要です。例えば、「児童労働の問題を解決したい」と思ったときには、具体的に「どの地域の、誰なのか」まで明確にする必要があります。

・どこの国のどの地域の子どもを対象とするのか
・その子はどのくらいの年齢で、どんな状況におかれているのか など

社会問題とその原因は多種多様です。そのため、「誰のどんな課題か」について、顔が見えるくらい具体化しておかないと、「あの人もこの人も助けたい」となってしまい、何から始めればいいか分からなくなってしまいます。

そのため、まずは解決したい社会問題について、顔が見えるように具体化しましょう。

2-1-2.本質的な課題を明確にする

対象者の顔が見えるように具体化できたら、対象者や周囲の人へのヒアリングを行い、その内容から本質的な課題を考えます。

貧困地域で10歳の女の子が、家計が苦しいことを理由に働いていました。この地域では、仕事のほとんどが日雇いの肉体労働で、収入は低く不安定なため、ギリギリの生活を送っています。そんなとき、父親が病気になってしまい、生活費が賄えなくなったことで女の子は働くことになったそうです。

この例の場合、ヒアリングから見えてきた現状としては、親が不安定で低収入な仕事のため、子どもが働かなければならなくなっていることが分かりました。さらに、子どもは労働によって教育が受けられず学歴やスキルを身につけられないため、大人になっても不安定で低収入の仕事しかできないという貧困の連鎖が生じていることが分かりました。

貧困の連鎖

つまり、本質的な課題は、学歴やスキルがなく安定した仕事・収入が得られないことで生じる貧困の連鎖にあると考えられます。この本質的な課題を解決するソリューションを考え、実行するのが社会起業家の役割です。

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2-1-3.理想の姿を明確にする

社会問題の現状が把握できたら、次は理想の姿を明確にします。社会問題が解決され、対象者がどのような状態になることが理想なのか、対象者の様子が浮かぶように具体的にイメージすることが重要です。

社会起業家にとって、ソーシャルビジネスは手段にすぎません。理想の姿を鮮明にイメージすることが自身の原動力になるだけでなく、対象者や周りの人たちの心を動かしビジョンの実現を後押ししてくれます。

2-2.必須要件を整理する

必須条件

現状と理想の姿が明確になったら、事業における必須条件を整理します。必須条件とは、社会問題の本質的な課題を解決しながらビジネスモデルをつくるための条件のことです。

今回の場合は、本質的な課題は「親が学歴やスキルがないことで生活に必要な収入を得ることができない」ということでした。

つまり、ソーシャルビジネスを立ち上げる上での必須条件としては、
・学歴やスキルがなくても働けること
・安定的に生活に必要な収入を得られること
といったことが挙げられます。

こうして必須条件をクリアしたビジネスモデルをつくっていきます。

2-3.ビジネスモデルをつくる

起業

必須条件が明確になったら、それらをクリアしたビジネスモデルをつくります。

例えば、学歴やスキルがなくても働ける方法として、分業制がとられるアパレル工場をつくり雇用することにしたとします。それでは、アパレル工場で何を作るのか、作った商品は誰に、どこで、どのように売るのかについて考えていきます。ここからは、一般的なビジネスモデルと同じように構築していきます。

ビジネスモデルを作るときに、社会問題解決を踏まえた必須条件をクリアするというソーシャル面と、ビジネスとして成功するモデルを考えるというビジネス面の両輪で事業をつくっていくことソーシャルビジネスの特徴であり、社会起業家の仕事です。

2-4. リソースを集める

ビジネスモデルができたら、資金や物資、メンバーなどリソースを集めます。

資金調達の方法としては、自己資本や銀行からの借入、投資家やベンチャーキャピタルからの投資、クラウドファンディングといった方法があります。

創業時に重要なポイントとしては、最初は一人で始めるということです。ビジネスを始めるときは、一人で判断したり行動したりすることが難しいと考え、仲間を増やそうとしてしまいがちです。

しかし、実際には創業時からメンバーが多いと、判断が難しくなったり、話し合いに時間がかかり行動が遅くなったりしてしまいます。また、経営面でも人件費は固定費として重くのしかかってくるため、できるだけ少なくしたいものです。

こうしたデメリットだけではなく、一人で始めることにはメリットも多くあります。一人で始めると、営業やカスタマー対応、事務作業まで何でも自分でできるようになります。すると、事業が軌道に乗り、メンバーに仕事をお願いする際にも、やったことがあるからこそのアドバイスや配慮ができるようになります。

こうして、事業を成長させながら、社会起業家としても成長することができます。

3.社会起業家に向いている人

社会起業家も、一般的な起業家と同様にビジネスや経営の知識、行動力などはもちろん必要です。

それだけでなく、社会問題解決に対する熱意や一つの社会問題だけではなく社会全体をよくしていこうとする思考対象者やメンバーへのやさしさといった人間性も磨いていくことが重要です。それでは、社会起業家には具体的にどんな人が向いているのか見ていきましょう。

社会起業家に向いている人の特徴

3-1.なんとしても解決したい社会問題がある

「人生をかけてこの問題を解決したい」という志があるからこそ、困難にぶつかっても乗り越えることができます。解決したい社会問題を見つけたら「自分は人生をかけてこの問題をしたいと思うか」と自分の心に問うことが大切です。

3-2.解決したい社会問題のために走り回る

本気で社会を変えたい人とそうではない人の一番大きな違いは、行動に移せるかどうかです。本気で社会を変えたい人は、社会問題の深刻さを理解しているからこそ、解決に向けて常に行動し続けようとします。社会を変える社会起業家になりたいなら、早くインパクトを出すために走り回ることが重要です。

3-3.ビジョンを掲げてやり抜く覚悟がある

最短で社会問題を解決するために重要なこととして、ビジョンがあること、そしてそれをしっかりとイメージできることが挙げられます。問題を解決したいと思っても、理想の社会像が明確でなければ、ゴールがないまま走り続けることになってしまいます。社会問題の解決にしっかりコミットしていくためには、ビジョンを明確にすることは必要不可欠です。

また、ビジョンを掲げること、発信することも重要です。そうすることで、やりぬく覚悟ができるだけではなく、ビジョンに共感して応援してくれる人たちが生まれることにもつながります。

3-4.できない理由よりもできる方法を考える

ソーシャルビジネスに限らず、事業を行う上ではうまくいかないことだらけです。そんなとき、「なぜできないのか」という理由ばかり考えていても先には進めません。深刻化する社会問題と限られたキャッシュという状況の中では、できない理由を探すのではなく「できる方法を考える」ことが重要です。

これは、事業に限らず日常のさまざまなことにおいても言えることなので、できる方法を考える癖をつけておくことをおすすめします。

3-5.家族や仲間、身の周りの人を大切にしている

社会起業家という生き方は、多くの人の人生を変えていく仕事でありつつ、多くの人に支えられていることを実感する仕事でもあります。本気で社会を良くしていきたいなら、まず周りの人を大切にすることが一番重要です。

また、起業家に重要なこととして「学び続ける姿勢」があります。事業が上手くいき、目の前の社会問題が解決しても、世界には未解決の問題が山積しています。一つではなく、多くの社会問題を解決していくために学び続ける姿勢が大切です。

社会起業家に向いている人の特徴が今の自分にないからといって諦める必要はありません。今からこうした思考を意識することで、社会起業家に必要な人間性が身についていくはずです。成長しようとする愚直さと学び続ける姿勢があれば、誰でも社会起業家としてスタートラインに立つことができます。

4. 本気で社会起業家になりたいなら、即行動しよう

社会起業家になるために必要なことについて解説してきました。

「早く起業して社会問題を解決したい!」という気持ちを胸に、早速ソーシャルビジネスモデルづくりに取り掛かったり、社会起業家の直下で働ける採用やインターンで修行したりすることも有効だと思います。

世界16か国48事業のソーシャルビジネスを展開するボーダレス・ジャパンでは、社会起業家になりたい人に向けた起業家採用と起業家インターンを募集しています。

最速で社会起業家になりたい方は、ぜひエントリーしてみてください。一緒に社会をよくしていく仲間を待っています。
 



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