
4/16放送のカンブリア宮殿に出演したボーダレス・ジャパン。
番組では語り切れなかった創業当時の想いやボーダレス・ジャパンのこれからについて、創業者である代表取締役社長の田口一成と代表取締役副社長の鈴木雅剛が2回に分かれてお話しました。
2020.04.18(土) のトークライブでは、事前にtwitterで募集した質問や参加者のみなさんからの質問に、鈴木がその場でお答えしました。そのQ&Aの内容をご紹介します。今回はその後編です!
前編はこちら→【カンブリア宮殿特別企画】創業者を囲むトークライブ Q&A(鈴木・前編)
↓以下、全文書き起こし
働くメンバーに関するご質問
Q.ボーダレスの社員は、「給与よりも問題解決をしたい!」という人のみを採用するのでしょうか?
A.どうしても、僕らは対立的にものを考えるということをやりやすいのだけど、わざわざ2個対立にする必要はないと思っているんですね。
みんなやっぱりお金がないと生活できないという意味で、ちゃんと給料が必要っていう側面もあれば、一方でやりがいや自分の夢を実現していきたいっていう意味での社会性を追求していきたいっていうのがあるわけです。
そういった経済性と社会性というものを分けて考えるのではなくて、これが融合した新しい考え方、取り組みというものをしっかりと追及していくっていうところに新しい在り方が宿ってくるんじゃないかなという風に思うので、そこは分けなくてもいいかなと思います。
ボーダレスの仲間たちは、もちろんちゃんと給与があってしっかりと生活していくというのをベースに持っていて、そのうえでしっかりと社会インパクトというものを作っていける状態、その両方とも求めていくかなという風に思っています。経営者としてはそれを両方実現できるということをしっかりとやっていかなきゃいけないと、創業した時から思って頑張っています。
もちろんベンチャーとかは特に給与水準の低いところから始まるので、少ないという話はよくあります。カンブリア宮殿で「AMAZONから(給与が)半分になりました」みたいな話がありましたけど、それは創業期のベンチャーでAmazonクラスの給料を払っていたらすぐ潰れますよっていう話だと思うので、最初給料が減ったというのは起こりえることです。
でもあのボーダレスキャリアという事業も素晴らしいことをやりつつ、経済性も両立できる、そういったものになってます。将来はしっかりと収入を得ながら社会インパクトを出していける、そういう状態になっていけると思います。
Q.ボーダレス各社の社長がボーダレスを辞めて独立しない理由はなんですか?
日野:せっかくなので、ここにいる社長たちに答えていただきましょうか。カンブリア宮殿でもたくさん取り上げていただいたビジネスレザーファクトリーの代表、原口さんが今ここにいるのでこの質問にお答えいただきます。
原口:理由は2つあって、1つは「社会を変える」ということの最短距離だと思うからですね。ノウハウをお互いに共有している、資金も仲間もですね、そこが社会を変えるために一番最短であると思える場所だと言えるからです。もう1つはやっぱり、事業をやっていく中で難しさだったり大変なことがたくさんあるんですが、そこで孤立せずに互いに助け合う仕組みがあるからボーダレスでやるってことですね。これはすごく大きなボーダレスのユニークな仕組みであるし、私たちがここにいる理由であるかなと思います。
日野:社長同士で助け合う仕組みとは、具体的にはどのようなものがありますか?
原口:私たちは月に一回、社長が4人集まってMM会議(Monthly Management Meeting)っていうのをやっているんですが、そのミーティングの中でそれぞれ今抱えている課題を共有したりとか、苦しいときは互いに助け合ったりしています。これは大きな心の支えであるし、事業を推進する上でもすごくユニークな仕組みかなと思います。
日野:そうですね、今35社の社長がいてこれからもどんどん増えていくんですけれど、そのメンバー同士でアドバイス等しあって事業を拡大していってるという仕組みですね。
Q.田口さんはよく“いい会社”をたくさん作ると言っていますが、鈴木さんの考える“いい会社”とは、何を達成すると“いい会社”であるといえますか?
A.これまた定義が色々と出てくると思うんで、それぞれ皆さんがどういうものを“いい会社”“いい社会”かっていう考えをお持ちだと思います。それを僕らは哲学と呼んでいますが、その哲学を持つことが大事だと思います。
簡単に言うと、いい会社っていうのは『関わる人みんなが幸せになる』、そういう会社のことを言うと思うんです。で、その幸せとは何かっていう…また哲学になっちゃいますけど、幸せというのは『自分が未来に対して選択肢を持てている状態』のことを、僕は幸せなんじゃないかと考えています。
もっとゆっくり喋りたいんですが長くなるのでこれくらいにしておきますが…その状態をしっかりつくる、お客さんだったりパートナーさんだったり自分の仲間だったり、そこに地域の人たち、未来の人たち皆含めて『関わる人たち』と呼びますが、この人たちが未来に対して良い選択肢が持てる、そういった状態をどうつくれるかを追求していくのが“いい会社”かなと思っています。
ソーシャルビジネスに関するご質問
Q.お話の中で「巻き込む」というフレーズがたくさん出てきましたが、ソーシャルビジネスを進めるうえで「巻き込む」ために必要なことはなんですか?
A.えーと、この人は自己満だろって言われないようにしなくちゃいけないんですけど(笑)人、人、人、人、と僕はすごく言いますが、やっぱり人なんですよ。困っている状況の人がいた時に「その人のことをちゃんと理解してますか?」っていう、そこはすごく大きなポイントになります。
さっき自己満男のともろー(ボーダレスリンク代表:犬井)が言いましたけど、例えばミャンマーで困っている貧困農家さんがいますよっていう話があったときに、一人一人の農家さんに寄り添って彼らの生活がどうなっていて何故苦しい状態になっているか、社会課題の本質というものをしっかり見抜かない限り、彼らを本当の意味で巻き込むことは出来ないんです。
それは何を意味するかというと、よく海外のNPOさんとかで「貧困農家さんたちが有機栽培の技術を手に入れたら貧困から抜け出せる」というアプローチで技術指導をやってらっしゃる組織がたくさんありますよね。もちろんそれが(社会課題の)解決の方法になる場合もあります。でもちゃんとその状況を捉えない限り、その貧困の原因が「本当に技術がないからですか?」っていう話になっちゃうんですね。
というのは、途上国で野菜を有機栽培で生産することによって、通常の野菜と比べてどのくらい価格が上がるんですかっていうと、実は大差ない、もしくは多少しか上がらない、日本でもそうですよね。そうしたときにこの“多少”で貧困の状況をクリアできるんですか?っていうと、実は全然足りないという話だったりするわけです。
もちろん「やらないよりやった方がいい」それは間違いないので、そのアプローチを否定するわけではありません。でもこれだけ(画面いっぱいの幅)足りないところをこれだけ(人差し指と親指の幅)補完できたとしても、彼らの生活は大きく変わらないんです。だとするとこれだけの差が出ている本当の原因はどこにあるんだろう?と、そこを知るために一人一人のことをちゃんと理解しなきゃいけないし、その地域だったりその人達が置かれている社会の構造まで理解しないといけない。そういったところを「巻き込む」時に直視していかなければいけないポイントになります。
Q.ビジネスにおいて革新的なアイディアを次々に生み出す社長や副社長は、どのような勉強をされているのでしょう。情報源など参考にしているものはありますか?
A.ない、ですね。日本でこういった形態でやっている組織ってあんまりないと思いますし、世界でもそんなに存在しないと思います。
言葉を変えてしまうと、常に参考にしているのは、「理想の姿」ですかね。みんながどう集ってどう補完関係をつくって、いい社会作りが進むのかっていうのをずっと考え続けるし、それに対してもっと良い方法がないかなというのを問い続けています。そこと自分たちの現状を比較したときに、もっと新しい取り組みが出来ないかな?、というのをずっと追求しているイメージです。
なので、未来にこうあったらいいな、というのが唯一参考にするというか、そういうものになります。
日野:明確に理想像を持っている、ということですか?
鈴木:明確にっていわれると…創業したときに社会起業家のプラットフォームが具体化されてたかっていうと、実はそうではなかったんですね。なのでその時々において、いい社会づくり&社会インパクトというものを広めていくためにどうすればいいかということを問い続けて、それに対する実践を積み重ねた結果、今こうやって僕たちのグループの形になってます。僕たちの理想とする考え方、僕の理想とする組織や社会というものがどんどんアップグレードして具体化していく、そういうものになっています。
Q.人の課題や本質を見抜くために具体的にどのようなアプローチをしていますか?それにどのくらい時間がかかりますか?
A.時間というのはその時々によって違うと思うので、一概に3日とか1年とかいう言い方はできないんですが、具体的にどのようなアプローかというとやはりこうやって話すことです。実際に現場に行ってその状況を見て感じ取る、というのが一番大事だと思います。
その現実をちゃんと見て認識して、それをどう解釈するかによって物事の捉え方が全然変わってきます。事実をそもそも知らないで、二次情報三次情報でものを判断しようとしても、実はすでに他の人のバイアスが入っているということが非常に多いです。やっぱりそこを自分自身が見て聞いて話して、しっかりと情報を得る。それに基づいて自分がこうあるべきだという解釈、結論を出していくことが一番重要だと思います。
その時にどれくらい時間がかかるかっていうのは、その現場その人それぞれに対して向き合うということを何回繰り返すか、ということで変わってきますね。
対象が一人でピンポイントに自分の課題設定ができた、という話もあれば、一人だと分からなかったということで何人にもお話を聞く中においてようやくたどり着いたというパターンもあります。なので時間のかかり方は色々ありますね。
何人に会ってお話しようとも、本当に彼らが困っている状況を生み出す原因が何なんだろうっていうことを自分の中でしっかり落とし込み、それに対してこれが原因だからこういう方法論が必要なんだ!と信じられるものをしっかり持って走っていくことが一番重要ですね。
日野:ボーダレスグループの事業立ち上げのスピード感をみなさんに具体的にお伝えできたらと思うんですが、今ここにいるかっちゃん(OKINAWA TACORICE代表:坪田)は、フィリピンで事業を立ち上げましたが、事業のプランニングから実際にスタートするまでどんなプロセスを踏んだか、とスピード感をみなさんに共有してもらえますか?
坪田:プランニングのところからいうと、僕の場合はボーダレスアカデミ-という社会起業家養成所に入って鈴木さんとプランニングをしたりとか、5ヶ月くらいで社会起業家としてのスタンスとかビジネスプランの書き方とか色々学びました。
こういう方向性で行くというものは1つあったので、それをボーダレスグループで起業するとなったときに、もっと詰めて具体的にどういう人に対して商品は何を作ってとか、今は飲食業をやってるんですけど、具体的にどういう商品で攻めていくのかっていうところをガーっと詰めていくのが、だいたい2~3ヶ月くらいです。
プランがある程度できて現場行くしかないということで、フィリピンに行って現地でやりながら商品の開発とかも同時平行で詰めていきながら、という感じでスタートしました。だいたい…早ければ、3~4ヶ月とかで現地に行ってスタートっていうスピード感かなと思います。
鈴木:ボーダレスアカデミ-という期間が入ったので長く聞こえたかもしれないですが、標準的には2~3ヶ月でビジネスプランニングが終わってローンチしていくっていうそのくらいのスピード感で、みんな事業づくりをやってます。
日野:事業プランニングの際にみんな一度ボスの元(福岡)へ行くんですよね。そこでよく覚えているのが、かっちゃんは今フィリピンでタコライスを販売しているのでその試作品を作っていたんです。それを福岡オフィスにいるみんなで試食して、これはどうだああだと事業関係なく試食してフィードバックしあっていたんですが、それも事業を超えた繋がりがあるボーダレスグループの良さだったかなと思います。
ちなみに、今はボーダレスのメンバーとどのように繋がりがありますか?
坪田:先ほどビジレザの原口さんから出た話でもあるんですが、社長同士のマンスリーミーティングがあって…原口さんたちの場合はMMという会議ですが、僕たちの場合はまだ黒字化してない社長たちが集まって毎月課題を共有してアイディアを出し合うっていうプレMMっていう会議をやります。そこでそれぞれの事業が抱えている課題を出し合って指摘しあって切磋琢磨していく、という形で繋がっています。
今後の社会についてのご質問
Q.Withコロナ/Afterコロナの社会をどうお考えでしょうか?
A.Withコロナでいうと…語弊があるので気をつけなきゃいけないんですが、「ピンチはチャンス」っていうことだと思います。聞いていただいている皆さんはビジネスの世界の方も多いと思うんですが、ビジネスって毎日続けてやっていくものなので、基本的に新しい取り組みをしたいと思っていても、どうしても今までやってきているものを引き続きやり続けるっていう方が、時間の割合としては大きいと思うんですね。
自分たちを変えたい、もっと違うことをやりたいと思っても、なかなか前に進まないっていうのが現実だと思うんです。でもこういうコロナという危機的な状態があって、今まで続いてきた事業がスパっと止まってしまった。これは実は今までやれなかったことにチャレンジする時間や機会が得られたという意味でもあります。
この話はかなり語弊があるので意味を理解いただきたいですが…もし皆さんがお仕事されているとすれば、今まで出来なかった新しい取り組みを進めていくというところに時間をかけていけばいいのかなと思っています。
もちろんWithコロナという意味では、事業においてお金だったりルールが人を上回ってしまいっている今の世の中の状態に対して「お金のために働こうぜ」という話はゼロには出来ないです。でも仲間がコロナになってしまうとか、そういう話はあってはならない、あくまでも人の命や生活を守る、お互いに守りあうというのが大前提の上で仕事をしていく、チャレンジしていくという順番論を考えていかなきゃいけないと思っています。
Afterコロナに関しては、ノストラダムスに聞きたいなっていうのはありますけど(笑)
2つ方向性があると思うんですよね。人がこれだけ家にこもっているという状態によって、何が起こっているかというと、やっぱり今僕寂しいんですよ。
それはせっかくこうして皆さんと対話させていただく機会があったにも拘わらず、全部画面越しなんですよね。画面越しだから皆さんの温度感とか人柄とか伝わりにくくて…一応伝わってはいると思うんですけど、やっぱり伝わりきらないという面がどうしてもあるんです。そういう意味でリアルな人と人との結びつきや繋がりを本当に大切にする、そこに価値を見出すという活動が進んでいくと僕は思っています。
一方で、逆にバーチャルで繋がりあっていることにおける新しい価値も出始めています。Afterコロナというのは、人中心に考えると、人と人の繋がり方が今までよりも色々な方法が出てきて、それによってもっと人が人らしく生きていける社会に変わっていくと思っているので、そこを僕らも推進していきたいと考えています。それを社会みんなで変えていけるようになっていけたらいいなと思っています。
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