
4/16放送のカンブリア宮殿に出演したボーダレス・ジャパン。
番組では語り切れなかった創業当時の想いやボーダレス・ジャパンのこれからについて、創業者である代表取締役社長の田口一成と代表取締役副社長の鈴木雅剛が2回に分かれてお話しました。
2020.04.18(土) のトークライブでは、事前にtwitterで募集した質問や参加者のみなさんからの質問に、鈴木がその場でお答えしました。そのQ&Aの内容をご紹介します。
↓以下、全文書き起こし
田口との関係についてのご質問
Q.田口さんと鈴木さんが一緒にやるようになったきっかけは何ですか?ぶつかり合うことはありますか?
A.彼は行動力が非常にすごいので、大学の時にベンチャーの営業部の立ち上げをしていて、その時に僕に声をかけてくれたんですね。夜な夜な走り回りながら一生懸命頑張っていたんですけど、ある日終電がなくなって帰れなくなった時に、鎌田のデニーズで2人で夜を明かしたわけです。その時にお互いの夢、志を語り合いました。
彼は「貧困問題をなくしたいんだ」と言って、僕は「“働く”ということのあり方を変えていきたいんだ」という話をし、だったら一緒にやった方が早そうだね、と。社会を変えるんだったら一人でやるより二人でやったほうが早いんじゃない!?と、そんな話をして、その日に一緒にやることを決め、今日まで一緒に走っているという感じです。
ぶつかり合ったことはないんです。もちろん議論はします。お互いが「こういうことをやろうと思ってる」という考えに対して、こうした方がいいんじゃない?ああした方がいいんじゃない?という議論が白熱することはあります。でも、俺はもっと金がほしいとか、俺はもっとこうしていきたいんだ、という利己的な話でけんかすることは一切ないです。
日野:ボス(田口)と出会ったのはミスミという会社ですよね?
鈴木:初めて会ったのは2次面接だったんですね。田口が右隣りに座ってまして、何か尖ってる奴いるな~と思ったのが当時の印象です。
日野:ちなみに今鈴木さんは東京オフィスにいて、ボスは福岡にいて拠点が分かれていますよね。お二人がコミュニケーションをとっているのをあまり見ない気がするんですが、最近はどんなタイミングでコミュニケーションをとっているんですか?
鈴木:いつ喋ったかなぁ……ていうくらい喋ってないですね(笑)必要な時に喋るくらいで、月に1回2回とかじゃないですか。
日野:それは、目指すところが共有できているので、特に必要なしということでしょうか。
鈴木:そうですね。それぞれいい社会づくりをしたいという…カンブリア宮殿をご覧になった皆さんは田口がどういうことを考えているかお分かりになったと思うんですけど、僕らはずーっと一緒に歩んできてるので、お互いの目指す先が共通として持てているんですね。
だからそこをすり合わせることはここ何年も特にやっていなくて、それぞれがこういう取り組みをやりたいねというのは話すけど、そこで議論するということはなくなったかな。「仲の悪い冷え込んだ夫婦」みたいな感じではないです(笑)
資金繰りに関するご質問
Q.ボーダレスを立ち上げる時の資金調達はどのようにされましたか?その苦労話を教えてください。
A.ほんとのほんとの最初は520万円で会社を立てたんですね。それは、田口、僕、何名かの仲間がみんなで出したなけなしのお金です。すべてにおいて自分たちのお金でスタートしました。
そのあと何回も危機があって…会社がつぶれそうになったこともありました。その時に資金をどうやって調達するかっていうと、基本的には銀行さん、あとは親族や親に貸してもらいました。あとは前職の先輩が連帯保証人になってくれてお金を借りられたこともあって、僕らは生き残りました。
その時に株(資本)として、お金を入れるという話をたくさんいただいたんですね。でも僕らは外部の方に株を持っていただくということは一切やらなかったんです。だから今でも外部の資本家や投資家が株を持っているということは一切なく、自分たちが株を持っているという状態になっています。
それは(田口もお話していますが)僕らはお金のために仕事をしたいわけではないし、会社を作ったわけではないんです。ボーダレスで生み出したお金というものを、次の社会のための取り組みにしっかりと回していくという形を作りたかった。外部の投資家さんが入ってしまうとどうしても配当を出してくれという話が出たりしますよね。そうすると次の社会のために回すお金が減ってしまうので、それを避けたいという思いで外部の投資家をいれなかった、という流れですね。
日野:それはこれからも変わらないんでしょうか。
鈴木:将来的に、常に物事は変わっていくべきだし、新しい取り組みというのを考えなければいけない。そうなったときに、外部の方々を混ぜ込んだ方が、社会インパクトをしっかりと広げていけるし、スピードも上がるといった判断ができる時は、どんどん新しいやり方に挑戦していきたいと思っています。
Q.今後規模を拡大していく中で、上場は考えていますか。
A.これは、さっきお話したように投資家さんとの兼ね合いだと思うんですね。ずっと僕の頭の中にあるのが、ソーシャルビジネスだけの取引所がもし作れたら、上場していいかなって思ってるんです。いわゆる一般的なビジネスが東証だったりJASDAQに上場している場合、どうしても資本を増やすための投資家さんがたくさん入ってきて、社会循環にお金が回りにくくなってしまう。なので今の状態では上場は考えていません。
そういった仕掛けも僕らがやっていかないといけないと思っているし、それが、ファンドなのかボーダレスバンク…銀行なのか、資本循環というものが社会のために回っていく仕組みを作っていきたいなと考えています。
カンブリア宮殿に関するご質問
Q.カンブリア宮殿で「自己満」といった場面、どのあたりでそう判断されたのか判断基準を教えてください。
A.ほんとテレビって怖いですよね。こういう優しい人なんです、ほんとは(笑)TVであそこの部分だけ切り取られて使われたことによって、社会では怖い人の認識になってしまったんですよね。ま、半分怖い人、かもしれませんけど(笑)
「自己満だろう」っていうあそこだけ切り取っているからよく分からないと思うんですけど、彼に伝えたかったのは「本当に社会インパクトを生み出すというところから考えたアイデアだったのか」という話なんですね。実は彼(ボーダレスリンク代表:犬井)がTwitterでそのことを自分で解説しているのでぜひ見てみてください。
それは、行動力、ジャストアイデアというのも、それはそれですごく大事だけれども、それだけで社会が変えられるならもっと早くいい世の中になっていたよね。でもそれだけじゃ足りない。しっかりとより多くの人達を巻き込んで社会を変えていく、そのための取り組み方を真剣に向き合って考えていかないと、それは個人としての自己満だという風に言ったわけです。
テレ東さんはしっかりと分かってくださったようで、右上にしっかりとテロップで自己満男なんとかって出てましたよね(笑)
今の彼は自己満でも何でもない。現場で世界を変える。そのための一番いい道、一番いい取り組みというのは何なんだというのを追及しています。当時の愛のあるムチだと思ってもらえたらいいかなと。
日野:実はその自己満男が、ここにいるんですね(笑)
鈴木:お!自己満男いるんですか(笑)
日野:ミャンマーからつながっている犬井さん。私は同期でともろーと呼んでいるんですが、ともろー聞こえますか?
犬井:誰が自己満男や(笑)
日野:私は同期なので、ともろーが「ミャンマーのカレン族のために何かやりたい!」というのをずーっと聞いていて、そこから葛藤もあったんじゃないかと思うんですね。今参加してくださっている方の中にも「この人のために何かやりたい!」と思っている人がいると思うので、その皆さんにシェアしたいことや気付きがあれば、お願いします。
犬井:自己満と言われたときは、自分の目の前のことしか見ていなかったですね。あの時言ったことは自分個人の夢でしかなかったかなと思います。それからいろんな起業家の人たちと会って、いろんな人と出会う中で、だんだん夢が大きくなって、今は自分一人の夢ではなくて、みんなが応援してくれる、みんなが一緒にやりたいと言ってくれる、みんなの夢になったなと思っています。そういう意味で、自己満じゃなくなったかなと思っているので、もし起業を考えている人がいれば、そういう考え方も参考にしてもらえればと思います。
鈴木個人へのご質問
Q.ボーダレスジャパンのNo.2として、大切にしていること、気を付けていることがあれば、教えてください。
A.難しい質問ですね。
田口だけに限らず、ボーダレスグループの各社社長が社会起業家として、そしてそれを支えるプロフェッショナルな人たちを含めてですが、その人達がまっすぐに走っていく状況を作るのが僕の仕事だと思っています。
お金(経理)の話や人の話など、色々な細かい問題が経営をする上で出てくるけど、現場でチームを率いて社長でしかできないところもたくさんある。それ以外で時間や労力をかけなくていいという状態を作ることによって、いち早く社会問題というのが解決されて、その先にいる今まで困っていた人が幸せになる、そういう状態を作りたいと思ってやっています。
そういう意味でみんなが走りやすい、どんどん走れる環境を作る、ということを僕はずっと考えてやってきています。
Q.鈴木さんにとって、チームとは?リーダーとは?どういうものであり、どうありたいと思っていますか?
A.チームとは、同じ目的を共有して、それを実現するためにお互いが力を合わせてやっていく(補完関係)人の集団のことを指すと思います。
大事なのはその中で上下関係や年齢が高い低いとかそういう話ではなく、それぞれが持っている力をお互いがちゃんと認識して、それをしっかりと組み合わせていくことによって、ゴールに最速で進んでいくという状態を作れるかどうかだと思います。
チームというものはそういう考えをもとに作っていくことを、僕は常に意識してやっています。
チームを作るときにはリーダーの存在が大事になりますけど、リーダーはシンプルですよね。美しい未来というのを見せること。旗を立てること。それを実現するためにみんなを巻き込み共に歩んでいくその状況をうまく作り出す。そして共に歩んでいく。それを実現するのがリーダーの仕事だと思っています。
ビジネスに関するご質問
Q.成功したビジネスモデルをスケールさせる時に注意する点は何ですか?ボーダレスがスケールしていくために必要だと思われる方策を教えてください。
A.一番大切なことは、「数字を目的にしない」ことだと思っています。
事業というものは人が連なって助け合って実現できていく以上、拡大フェーズになったときに人のことを置き去りにして数字を追いかけ、もっとたくさんの結果を出そうという目標をもってやりますよね。そうすると、仲間とのコミュニケーションが少なくなっていったり、遠くてなかなか会えない人達のことを良く知らない、という状態ができたりします。
その結果として人が働きづらい状態になったり、お客さんとのコミュニケーションの量が減ってしまったりします。ですから、あくまでも人というものを中心に据えて、その上で事業をしっかり良いペースでうまくコントロールしながら広げていかなきゃいけないかな、と思っています。
ボーダレスグループが広がっていく…これもまた人だと思います。社会起業家と呼ばれる“社会を変えたいと思う人達”がどれだけ仲間になるか、彼らを支えていく、あるいは引っ張っていく“プロフェッショナルな仲間”がどれだけ集まってくるか、全てにおいてここにかかっていると思います。
人というもののつながり、助け合いをしっかりと作り上げられる、そんな状態をこのグループでどうやって作れるかという風に思っています。しかしそれはグループの中だけでは不足するなと思っていて、ほかの会社だったり、行政だったり、それぞれ餅は餅屋というような素晴らしい方々がたくさんいますよね。
そういった彼らとうまく協業できる、同じ新しい社会というものを作っていく、そういった関係性を作っていかないといけないと思っています。そこでもまた、思いを持った人同士のつながりというものがあって、そういう関係をどう実現できるか、チャレンジしていきたいなって思っています。
Q&Aの続きはこちら→【カンブリア宮殿特別企画】創業者を囲むトークライブ Q&A(鈴木・後編)
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