
4/16放送のカンブリア宮殿に出演したボーダレス・ジャパン。
番組では語り切れなかった創業当時の想いやボーダレス・ジャパンのこれからについて、創業者である代表取締役社長の田口一成と代表取締役副社長の鈴木雅剛が2回に分かれてお話しました。
2020.04.17(金) のトークライブでは、事前にtwitterで募集した質問や参加者のみなさんからの質問に、田口がその場でお答えしました。そのQ&Aの内容をご紹介します。
↓以下、全文書き起こし
事業を立ち上げる前段階のご質問
Q.世界中の貧困等の社会問題の情報はどこから仕入れてくるのでしょうか?
A.答えは「仕入れてこない」っていう…(笑)なんともすいませんという答えです。
僕ら(ボーダレス・ジャパン)は社会のために事業を作りたいという人が集まってくる会社です。だから会社として、僕自身として、次はこういうエリアでこういう社会課題を解決しようというテーマをもってやっている訳では、一切ないんですね。世界13か国でやっているんですけれども、「この地域でいこう」と言ったのは1個もないです。なので、特に意思は持ってないんです。
ここにいるかっちゃんという…坪田は、今日フィリピンから参加しています。ボーダレスはフィリピンでもやっていますが、それは単純に彼がやりたいと言ったからフィリピンで、というだけですね。
僕自身は「世の中にどういう社会課題があるのかな?」と、事業で解決してやろうという意味で調査していることはないです。僕は来る起業家をどうサポートするか。例えば「動物愛護」の問題って来たら、その瞬間めちゃくちゃ一生懸命調べます。その起業家以上に詳しくなるくらい。そこから一気に伴走に入るので調べますけど、事前にネタ探しという意味でやっていることはないっていう感じで…参考にならず申し訳ない!(笑)
Q.その事業が社会問題の解決につながっているかどうかを、どういう視点で判断されているんですか?
A.僕らは事業を作るときに、必ずソーシャルインパクトという指標を、事業発表と同時に出します。こういう社会問題を解決するためにこういう事業のモデルです、これによって出るソーシャルインパクトはこれです、ということをやるんです。
それは具体的に…例えば昨日放送されたミャンマーのハーブ栽培の話でいくと、借金漬けで暮らせなくなっている農家さんと、まず契約栽培するということで生活ができるようにしていく。契約栽培をしている人数というのが一つ、もう一つは借金から抜け出せないと意味がないので、借金から抜け出せた人の数、という指標というものを最初に作っておきます。このソーシャルインパクトといわれるものを月次で見ていくんです。
僕らは月次でPLとCFを出してやっていくんですが、合わせてそこに必ずソーシャルインパクトを出しています。「インパクトが本当に出てますか?」というところを追求していきます。売上利益がいくら上がっていても、インパクト(の数字)が弱いと、やっぱり「何やってるのかな?」っていう話には、当然なりますね。
いつしか売上利益が目的になって、その最大化のために新たな新規事業を作る、ということにならないようにという意識が保たれているのは、毎月ソーシャルインパクトを追って行ってるから、ということですね。
ここにいるかっちゃんもフィリピンで頑張っていますけれども、「雇用できている数」を月次の数字で追いながらやっているので、ちょっと上手くいかないから他に儲かる商売ないかなー?とかって、そういう風にはなり得ないです。まだ1人しか雇えてない、2人しか雇えてない「まずい!」っていう、そういうところが常に僕らが事業をやっていく軸にありますね。
基準についてのご質問
Q.事業撤退の見極めはどのような基準で実施されていますか?
A.事業撤退は…お金がなくなったら終わりなんですよね、基本的に。キャッシュフローっていう感じで、初期投資500万円、運転資金1000万円ていう、とても少額ですがこれでまず始めるっていうことがまず大切なんです。これで小さく始めて、お金が尽きたらいったん終わり。
いったん終わりなんですけれども、それでもまだやりたい時っていうのは、2トライ目に入ってくださいと。もうトータル1500万円消しちゃってるんで、もうやりたくないっていう人はいいですよ、と。それは借金にも何もなりません。個人のリスクなく社会挑戦できるっていうのが僕らのやりたいことなんで、やめたい人は当然やめてもらっていい。だけども、今んとこやめたいっていう人はいないんですね。
お金が尽きたけどもまだやりたいんだという時は、何が分かったのか、それをふまえて(事業)モデルを改善して、もう一回社長会で発表する。その上でまた1500万円をもらって、またスタートするっていう感じです。これ、何回でも大丈夫です。2トライ、3トライしても大丈夫。
僕は、1回は失敗していいんじゃないかなっていう考え方を、そもそもは持ってます。2回目で成功すればいいっていう。やっぱり、やってみないと分からないものばかりなので。大切なのはどうやったら成功するかというよりも、失敗できる環境をどう作るかってことの方が実はすごく大切だと思っています。それができるような仕組みが大切ですね。つまり、撤退するってことはまずないです。その人が「やめたい!」「これ以上無理や!」ていう風に思ったらやめますんで、要は本人の意思ですね。
先ほどのどういう社会問題を探してますか?という話と同じなんですが、僕だったりボーダレス・ジャパン自体が意思をもってやってる訳じゃなく、ここに集ってくる起業家の意思ですべて動いています。事業をやめるのも継続するのも全てその起業家自身の判断にゆだねられている、という形ですね。
Q.経営学等を勉強していなくても、社会起業家としてうまく経営していけるのでしょうか?経営者のスキルは求められるのでしょうか?
A.いわゆる知識的なものは全く求められないですね。例えば、ボーダレスにも色んな人が来るんですよ。大企業で役職だったらすごいところまで行っていて、アジアのマーケティングディレクターやってました、とか。中国法人の社長やってました、大きな商社で…とか、色々あると思うんですけど、基本的に起業ってなるとみんな1年生だと思うんです。
ある仕組みの中で出来ていたことと、まっさらの白紙の中に絵を描いていくっていうのは、やっぱり違うんですよね。基本的にこのスキルがあれば起業が成功するっていうのは、まずないと思っているんです。そういった意味において、特別なものは何も必要ないと思います。
ただやっぱり起業家って、人の人生を背負うものですよね。少なくとも僕らの場合は、個人事業主の集まりではなく大きなインパクトを出していくために集う集団で、いわゆる企業体を作っていく人間の集まりなんで、みんな「社長」と言われる人たちなんですよね。つまり社員を何人も抱えながら、その人たちの人生を背負っていって、この会社で働いて良かったなって言われる会社を、それぞれが作っていくっていう意味においては、覚悟をもっていかないといけない。そして、ある程度のコミュニケーションをしっかりする力は大切かなと思います。
自分がやりたいことをしっかり伝えられて、ついていきたい!と思えるような誠実さがあって、という。コミュニケーションを通してある程度伝えられないと、実際問題として少しきつくなってくるかなと思います。ただ、実際ボーダレスには色んな人がいます。おとなしい人もいて…蚊の鳴くような声でしゃべる人もいます。すごくリーダーシップがあって、というのが良いということじゃないです。コミュニケーションが大切なので、それを身につけようという姿勢があるか、とかですね。今なくても、そういう風になろうとする気持ちがあれば大丈夫です。
逆に、たかしとかどうですか?(※たかし=ボーダレスの採用担当の半澤)起業家からボーダレスに問い合わせが来るんですね。ビジネスプランの持ち込みとかもあるんですけど、たかしが初回の相談に乗ってるんです。何か、起業家を見る基準ってありますか?どういうところを見ていますか?
半澤:僕が見させていただいているのは、「社会のために、社会に向けてやりたい」と思っている人かどうかということと、その方が信念をもって心から熱中できることなのかっていう、この2点は特に大事に見させていただいてます。
たしかに、そうだよね。スキルじゃないよね、結局はね。本当に心からやりたいのかっていう。どこまで大きくなれるかは、スキル的な能力的なところが関わってくると思うんですけど、僕は「小さくても、やらないよりやった方がいい」というのを基本スタンスとして持ってます。だからその人の力がそんなにないから、めっちゃ大きくならないから「やらない方がいい」ということはないです。その人なりのサイズまで頑張るようにしてほしい。
大きくしていく意識があるんだったら、ボーダレスがいいかなって。逆に個人事業主のやり方が合う人もいるんですよ。自分のペースで1人2人でやるって方が、自分としては幸せなんだっていうタイプの人は、ボーダレスに来ない方がいいと思っています。ボーダレスはインパクトを出しに行く集団なので、切磋琢磨しあっていますから。
僕がボーダレスアカデミーをやっているのはそういう理由なんです。ボーダレスが万能でないっていうのを、自分が運営していて分かっているので。個人事業でやってた方が幸せだよなっていう人たちは、しっかりやり方(ノウハウ)を伝えて、自分でやっていっていただくっていう。その人も立派な社会起業家ですが、ボーダレスの仕組みとはちょっと違うかなということで、そうしています。
ここでボーダレスの採用について話が脱線。
日野:もうボスは採用には携わってないんですよね?なぜですか?
田口:僕ね、全員通しちゃうっていう大問題がありまして…全員オッケーっていう(笑)「節穴」って呼ばれてるから。採用に関わると全員通るから、関わらないでくれと。一応、最終面接だけやるんですけど、僕のところに来たら通ると思っておかないといかん、という危機感の中で採用チームはやってるんで、最後だけご挨拶する感じかな。
日野:可能性を感じてしまうんですよね?
田口:可能性は誰しもあるのは間違いないのは、絶対事実だと思うんですよ。僕はずーっと社長やってきたので、社長の一番の仕事っていうのはその人をどう生かすかってことなんですよね。自分のところに来てくれた社員をどう生かすのか。
社長ってその人の給料をあげていく責任をもっているし、歳を取るたびに子どもができたり介護が必要になったり、お金が少しずつ必要になってくるんですね。今年より来年ってその責任を負いながら向き合っていくと、その人をどう生かせるかていうので…ずーっと見てきているから、どんな人見ても「この人こういう可能性あるよな」みたいに基本的に思っちゃう。
なので(採用は)ダメになって、いったん外されて。でも今年から心を鬼にして採用に真剣に関わりたいと、自ら申し出て新卒採用だけは最終面接入るようになりました。5年ぶりくらいに(笑)
Q&Aの続きはこちら→【カンブリア宮殿特別企画】創業者を囲むトークライブ Q&A(田口・後編)
==================================
◆あわせて読みたい◆
▶日経ビジネス(2020.03)
#05 もうからないソーシャルビズ変える 起業家鍛える道場
▶IDEAS FOR GOOD(2020.03)
「ボーダレス・ジャパン代表 田口一成氏インタビュー。その社会課題解決力の根底にあるもの」
▶BUSINESS INSIDER JAPAN(2019.03)
「『10億円稼ぐ社会起業家1000人育てる』23もの社会課題解決に取り組むベンチャーが急成長」
▶YOUTURN(2019.2.25)
No.1「恩」と「成長」で加速するソーシャルビジネス組織論
No.2 人を育て助け合う企業カルチャー
No.3「制度は思想」
▶TEDxHimi| Kazunari Taguchi |
「人生の価値は、何を得るかではなく、何を残すかにある。 」(2016.7.29)