
社会問題をビジネスで解決したい―そう思い、起業家の卵としてボーダレスに飛び込んだ新卒のメンバーたち。実際に入ってから起業するまで、そしてそのあとの道のりを赤裸々に語りました。
以下、2019年3月21日開催のイベント「【20代限定】起業を目指すあなたに贈る"社会問題の解決とビジネスを両立する方法"」から、文字起こし。
司会(石川):まずは、自己紹介と事業紹介をお願いします。
バングラデシュで目の当たりにした"壮絶な状況"(中村)
中村将人(以下、中村):皆さんこんにちは、いまSunday Morning Factory(以下、サンモニ)というボーダレスグループの会社で代表をやっている中村です。
僕はこの中ではちょっと変わった経歴で、社会起業家とかソーシャルビジネスをやろうと思ってこの会社に入っていないんです。就活のときにテレビ局のキー局に全部落ちたのがきっかけで起業しようと思ったんですよね。その時にグループ代表の田口と縁があって話を聞きに行ったときに、ここで1、2年修行するのもいいかなと思って入りました。
2010年の入った当時はまだこんなグループにはなっていなくて、当時はボーダレスハウスしかなかったですね。そこで1年半くらい修行をしています。その後にAMOMAが立ち上がって半年くらいジョインをして、縁あってボーダレスとしてバングラデシュで新規事業をやることになったので、そっちに入りました。
バングラデシュは当時はまだユニクロさんとかも入っていなくて、アジア最貧国の1つとして本当に貧しい状態だったんですね。そこでボーダレスとして何かできないかということで、グループ創業者の田口と鈴木と出張に行きました。それからはハニーレディとかトイボーイとか、これはあとで聞いてもらったらいいんですけど、迷走の時代があって(笑)いろんな事業を試みました。
最初はボーダレス・ジャパンとして何かできないかと思って入ったんですけど、事業を考えながらバングラデシュの貧困の地域に行けば行くほど、壮絶な状況を目の当たりにしました。そこで初めて、このまま目をつぶって帰れない、どうしても解決したいと思ってサンモニを作りました。
僕が一番目をつぶれなかったのは、家計のために365日働いている5、6歳の小さな子が貧しいところにたくさんいたことです。それを見て児童労働をなくしたいと思ったのがきっかけで、そこからボーダレス・ジャパンとしてバングラデシュでやるというよりは、自分の事業として本当にここにコミットしたいと思いました。
なので、僕たちのビジョンとしては児童労働をなくして、子どもたちが将来好きなことを仕事にして、貧困の連鎖を断ち切るという社会を作ることです。
そのために何をやってるかというと、出産祝いに特化した「Haruulala」というブランドでベビー服を販売しています。バングラデシュの自社工場でつくったものを、日本の百貨店、セレクトショップ、ギフト専門の自社オンラインショップとして売っています。今年から海外に出店をしていきたいと思っているので、夏頃から中国やヨーロッパに出て行こうと思っています。
NGO、国連という選択肢を経てビジネスへ(呉原)
呉原郁香(以下、呉原):皆さんおはようございます。早速ですが、グアテマラって聞いたことありますか?中米・メキシコの南に位置する、いわゆる途上国と呼ばれる国で事業をしています。
経歴はこんな感じで、学生時代に海外をまわって色々な活動をしていました。その中でNGO・NPO、国際機関、政府機関で働いていて、そういった経験から色々考えることがあって、ビジネスを通じて社会問題を解決したいと思って2014年にボーダレス・ジャパンに入りました。
当初は、革事業のビジネスレザーファクトリーで2年間修行していました。そのあと結婚して産休・育休に入って、復帰してからグアテマラで新規事業MAYSOLを立ち上げています。
実際どういうことをやっているのかを簡単に言うと、子どもの教育のためにお母さんたちを雇用して、教育に繋がるような社会の仕組みを作るために事業をしています。
委託養鶏について、まずは「マイクロフランチャイズ」の仕組みを紹介します。たぶん聞いたことないと思うんですけど、マイクロファイナンスを少しステップアップさせた仕組みです。簡単に言うと、マイクロファイナンスは貧困地域の方に少額を融資して使ってもらう。そのお金を回して雇用の機会というか、お金ではなく事業の仕組みも一緒に提供するマイクロフランチャイズという仕組みです。
この中でどういうことができるかなと考えて、第1弾として養鶏の事業を行なっています。一番いいところは、負担がなくてリスクがゼロ。それでお母さんたちが仕事の機会を得られるので、この仕組みはいいなと考えています。今は養鶏ですけど、これだけではなくて牛とか、いろんなビジネスで活用できると思っています。
"難民キャンプの一部"だった僕が起業を志すまで(犬井)
犬井智朗(以下、犬井):犬井です。僕はもともと自分で起業したいなと思っていたんですけど、ボーダレスグループっていう仕組みを利用して起業したので、こういう方法もあるんだなと思ってもらえればと思います。
僕はBORDERLESS LINKという会社の社長で、ミャンマーの農業トータルサポート事業をやっています。いま25歳で、学生のときは難民支援団体のPASTELを立ち上げて、日本国内にいる難民の方の支援をしていました。2012年から2016年の間は休みのたびにタイとミャンマーの国境にあるカレン難民キャンプに行って、そこでフラフラする。何をするでもなく入り浸って、こいつ誰だとなるんですけど、だんだん「こいつも難民キャンプの一部だ」ってなりました。
そういうことをやっているうちに、難民の人たちの問題をなんとかしたいとか、ミャンマーをなんとかしたいという気持ちが芽生えてきて、自分で起業しようと思いました。その人たちを救えればなんでも良かったんですけど、それをやっている人はいなかったから自分でやるしかないと思って。自分には力がないし金もないし、ノウハウもないし何もできない。でもミャンマーに行ってミャンマーの人たちを幸せにしたいと思った時に、ボーダレスグループがあったんですね。
ボーダレスグループは、起業をさせてくれると。しかもめちゃめちゃ厳しい。いい経営者たちがたくさんいる。最速で成長できて、かつ2年以内に事業を立ち上げられると思って、ボーダレス・ジャパンに入りました。
多分、僕はボーダレスの中でも一番たくさん事業を経験していて、入社して最初は、中村さんが前にやっていた事業で商品管理を担当していました。社長の前でこういうのもアレですけど、オペレーションがぐちゃぐちゃで。在庫探してきてと言われても、どこに在庫があるか分からない。どうやって探すんですか?って聞いたら「感じろ」って。在庫は感じれないよなって(笑)。そんな状況で、ボス(田口)に「オペレーションを立ち上げる力がないと事業なんてできない」って言われて、その力をつけたくてそこにいました。
ある程度力がついたなと思ったときに、ちょうどシリアから難民の人がきて、新規事業立ち上げを半年くらい。それはいろんな理由で上手くいかなかったんですけど、そのあとは1年くらい、これまた新規事業なんですけどPOST&POSTにいました。それから、去年の2月にBORDERLESS LINKに行きました。
ミャンマーって70%くらいが農家なんですよ。その中の大半が1エーカーくらいの小規模。この人たちは1年間で200ドルくらいしか収入がなくて、貧困状態なんですね。そういう人たちがミャンマー全国にたくさんいて、その人たちを全員幸せにする事業にしたいと思って立ち上がったのがBORDERLESS LINKです。
この人たちの収入が低い主な理由は3つあって、お金がない・情報がない・販売先がないということです。お金や物や情報みたいなリソースは、社会にはあるんですね。でもその社会と繋がらない。その社会のカネ・モノ・情報をワンストップで、農家さんの一番身近なところで手に入れられる場を作ろうってことで、村から15分以内のところにアグリセンターを作りました。こんなことを、1年前からやっています。
ジャーナリスト志望→起業家になったワケ(廣瀬)
廣瀬智之(以下、廣瀬):廣瀬智之といいます、よろしくお願いします。僕はTomoshi Bitoという会社を最近立ち上げて、ニュースアプリ「どっち?」を3日前にリリースしたばかりです。
もともとジャーナリストになりたかったので起業なんて全然考えていなくて。でも自分の活動を続けるにはどうしたらいいか模索した中で出てきた答えが、社会起業家になるということでした。えりかさんとお会いして話して、ボーダレスに入って事業を立ち上げた感じです。
入社してすぐ立ち上げになったんですけど、アプリ事業だったので開発には時間がかかる。その間に時間を有効活用しましょうとなったときが、ちょうど西日本豪雨の災害があったときなんですね。なので、(自分たちのプランを発表した)社長会の場で「ボーダレスも何かやりたいね」という話が出て、「ちょうど今日(からアプリ開発を委託するから)暇になる人がいました」とボスから言われて(笑)。そのプロジェクトは(Tomoshi Bitoの)2人に任せようという話になって、立ち上げたり。あとはPOST&POSTに配属してもらって実務をやってみて、アプリができたタイミングで創業しました。
僕がやっているのは、日本の政治参加意識が、あまり言いたくないけど著しく低くて、それを解決していくことです。最終的には、社会や政治の問題が自分ごとになる社会をつくりたいと思っています。そのために、無関心じゃなくて「未認知」という状況を変えようとやっているのが、このアプリです。
事業モデルとしては、基本的には広告収入です。でもゆくゆくはこの広告も、何かソーシャルグッドなものとか、社会問題を解決するためのサービスとか、そういう社会にとって良いものだけを配信していくような広告のモデルにしていきたいなと思っています。以上です。
司会(石川):ありがとうございます。早速ここからは、テーマトークということで皆さんの話を聞いていきます。まず最初に、この問題を解決しようと思ったきっかけを教えてください。
次の記事「何のインパクトを出せているかが分からなくなったら、事業は続けられない」
■スピーカー
Sunday Morning Favtory
代表取締役社長 中村将人
( Facebook / Twitter )
ボーダレスグアテマラ
代表取締役社長 呉原郁香
( Facebook / Twitter )
BORDERLESS LINK
代表取締役社長 犬井智朗
( Facebook / Twitter )
Tomoshi Bito
代表取締役社長 廣瀬智之
( Facebook / Twitter )
■このイベントの連載記事
「【20代限定】起業を目指すあなたに贈る"社会問題の解決とビジネスを両立する方法"」
(2019年3月21日(木)開催 / イベント詳細)
(1)「何とかしたい」という思いを、ビジネスで形にする。新卒起業家4人の道のり(この記事)
(2)何のインパクトを出せているかが分からなくなったら、事業は続けられない
(3)グループ創業者は同僚?!新卒起業家が明かす意外な関係性
(4)行政でも非営利組織でもビジネスでもない、ソーシャルビジネスならではの難しさ