創業10年、ボーダレス・ジャパンを年商30億円の企業にまで成長させた創業者2名(社長・田口副社長・鈴木)が、本当に社会を変えるビジネスをつくるためにいま必要なことというテーマで話しました。

この記事は、起業から10年、創業者2人が語る「ソーシャルビジネスに本当に必要なこと」とは?(前編)の続きです。

↓以下、全文書き起こし

ビジネスでは解決できない社会問題

石川:ビジネスでは解決できない社会問題ってどんなものがあると思いますか?

田口:ええとね〜、これ結構あると思うんですよね。たとえばバングラで僕らが取り組もうとしている「ストリートチルドレン」どうする?って問題とかね

これって、子どもに児童労働させるの?って話とかあるじゃないですか。これはビジネスっていう形よりも、今シェルターホームを作ろうかなって話になってるんですけど。そこで家族の温かみがわかるっていう。

でも、やっぱりずっと外で暮らしてるとストリートの方が楽なんで、箱を作ってもみんな入りたがらないんですよね。だからそこは、家族のようなシェルターホームを運営して、人といること、協調性を含めて社会に出ていけるような状態にしていきたいと思っているんです。

こういうのは、ビジネスではなかなか成り立ちにくい。だから、そこはバングラデシュの工場チームで、ボランタリーというか担当をつけて今やろうとしてるんですけども。そういうのはビジネスではやりにくいかなーって考えていますね。

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番外編ついでにもう一つお話します。つい2、3日前にバングラデシュ代表のファルクから聞いたんですけど、工場で14~15歳の子どもが働いていたらしいんですよね。

もちろん、工場のメンバーは最初から知っていたわけじゃないんです。「18歳って言いはるわりには幼く見えるよね」って話になっていて、何度も確認したら、その年齢だったんです。結果的に、児童労働になっていたっていう。でも、「これすごい難しい問題なんですよね〜」って向こうの人は言うんですよ。

彼らを断ってもいいんですけど、そしたら彼らって食っていけないんです。物乞いって10歳くらいまではそれで食っていけるんですけど、14歳にまでなって物乞いしても、食えないんですよね。

確かにこの子たちは中学校に行くべきだけど、同時に食わないといけないですからね。この人を雇わないってことが何を意味してるのかなって考えるわけです。そういう課題を突きつけてもらいました。

社会問題ってメディアでは、これは良い、悪いっていうけど、現場を知った方がいいと思うんですよね。そのリアルな現場に行った時に、果たして児童労働はダメなのか?って考えないといけないわけです。

この問いについて、今バングラチームはすごく話し合ってるところなんですね。で、彼らが今出した結論としては、午前中は働いてもらって、午後からは学校にいってもらう、っていうかたちでできないかなって。ただ、それがベストじゃない気がする、他にいいアイディアないかなーって、相談がきたりするんですけれども。そういう話がボーダレスではあります。

あとね、BLF(ビジネスレザーファクトリー)やってると、苦情がきたりするんですよね。「お前らエコとか言っておきながら、バングラの革を使うんじゃないよ。牛殺して製品作るんじゃない」って。

やっぱりそれを言う人も現場を知らなくて、牛は別に革製品を作るために殺してるんじゃないんですよね。バングラの人たちは牛肉を食べて、残った革を捨てますか?どうしますか?って時に、捨てるんだったら製品として使いましょうっていう話なんで。そういうことで、資源を活かすってかたちで革製品が存在してたりするんですよね。

だから社会問題は、現場の当事者になったつもりで考える癖をつけたいなって思いますね。

僕らはソーシャルビジネスをやる会社なんで、あくまでもビジネスを主体でやります。でも、ソーシャルビジネスで解決できない問題は、いま言ったように、あります。

だから現地の人のことを考えて、ビジネスでない形、NPO・NGOのようにビジネス以外の形でやることが一番現地の人のためになるんであれば、それを取ろうと思っています。

鈴木:番外編ってことで僕からも。

今の工場の中に、ある意味児童労働って言われる年齢の子たちが混ざっていましたっていうこの話。児童労働がアウトだっていうこの論理って、基本的には先進国と言われる、教育がそれなりに制度として確立し、社会福祉が確立している国の論理であるっていう風に僕は思っているんですよね。

バングラデシュで、そういった社会的な制度がしっかり整っている中で13歳、14歳が働いちゃダメだっていうんだったら納得感ありますよ、確かに。

ここにいる皆さん、途上国に行ったことがあれば分かると思いますけれども、あのストリートにいる子たちは、社会的制度で守られてますか?ちゃんと生きていけるだけの状況を作れていますか?っていう風に考えたときに、ないわけですよね。

そうやっていきなり世の中にぽーんと放り出されて、自分で食ってけと言われたときに、「いやいや私、子どもなので、ちゃんと教育・福祉を準備してください」って待っていられないんですよ。

この現実をちゃんと直視し、理解し、それぞれの状況をちゃんと理解した上で、徹底的に議論し、彼らが少なくとも人間として生きていける状態をつくってあげられるかどうか。これを常々追いながら、僕らは仕事をしていかなければならない。

てなると、ビジネスはあくまでもツールなんですね。ソーシャルビジネスっていうやり方をとりますけれども、それが一番速くインパクトを出せるって思ってるからなんですよね。

でも田口が今言ったように、子どもや、体が動かないおじいちゃんおばあちゃん、重度の障害がある人、そういう人を対象としたときに本当にビジネスというツールでやるべきか、それとも行政を巻き込んでそこにインパクトを出そうとするのか。

これはあくまでも、その当人たちがちゃんと生活できるようにするために、彼らが自分にちゃんと誇りをもち、喜びをもって生きていけるという部分に主眼をおいて、やっていけるかってことがすごく大事なポイントだと思います。

そうした時に、それをちゃんと理解した上で、自分が何をどう解決していきたいのかっていうことが大事だと思うんで、ちょっと付け加えました。

ソーシャルビジネスを志す方へのアドバイス

石川:最後の質問です。この場所にはNPO・NGO・行政なりと、いろんな形で社会問題解決に携わりたいという方がいらしているんじゃないかな、と思うんですが、社会を変えるビジネスを創りたいという方に向けてアドバイスをお願いします。

田口:ボーダレスに来たらいいかな。(会場笑い) いや、でもこれは本気です。プレゼンではリクルーティング的な要素があったと思うんだけど、全然そういうつもりはなくて。ボーダレスを選択肢の一つだと捉えてもらったらいいと思うんです。なんで今のボーダレスの体制ができたのかっていうのは、自分の経験からなんですね。

僕は、前職でけっこう頑張ったんですね。2年間だったんですけど、めちゃくちゃ稼いでたし、明らかに事業内では圧倒的な稼ぎだったんですね。つまりそこそこできるってことじゃないですか。まあまあ優秀な人たちが集まってる組織だし。その中で頭角出たんだったらいいじゃんって思うんですけど。

でも自分で事業立ち上げたら全然ダメだったんですよ。もうへなちょこすぎちゃって。全くダメなんすね。もういつこけてもおかしくなかったし。まあ、こけまくってるんですけど。結果的に、たまたま周りにいい友達、いい先輩がいて、いろんな人たちが助けてくれてなんとかここにいるんです。

例えば僕があそこで失敗している確率ってフィフティーフィフティーっていうか。でももしもあそこでこけてたら、僕は社会的損失だったと思うんですよ。それは僕以外でも同じことだと思うんですよね。

儲けたいって思いで事業を始める人はこけてもいんですよ。それはこけても自業自得ってことで。やる自由と責任は自分で負ってくださいって感じなんですけど。でも、社会問題を解決するために身を投げ打ってやろうっていう人がこけるのは、社会的損失だなっていうのが僕の考え方なんですね。

そう考えると、僕がここにいるのはいま隣にいる鈴木とか、周りの人がいたからなんです。いなかったとしたらすごく危ない。これをどうこけないでいいかなって考えてできたのがボーダレスの歴史なんですよね。

その時に、成功するため、実力をつけるために一旦就職します!ってのも良いんだけどね。僕が実際やって、めちゃくちゃ力をつけたつもりだったんですけど、やってみたら全く歯が立たなかったんですよね。つまり、ある既存組織でどれだけ優秀かってことと、自分で事業を作ることは全然畑が違う話だったんですよ。

じゃあ起業家にとっては何がステップなの?っていう話なんですけど。だったらいきなり事業を始めた時に、何が必要なんだろうって考えると、それがスペシャリストなんです

このフォーラムや、ボーダレス自体、社会起業家って言葉をよく使ってるし、だから起業家一本のように思われそうなんですけど、実はその周りにいるスペシャリストの方が、事業成功の中では大切なんですよね。

やっぱりブランディングをするスペシャリスト、ウェブマーケティングのスペシャリスト、そういう人がボーダレスにはいるんです。で、彼らは志は同じなんだけど、役割が違うんですね。さっき言ったけど、事業を作る上で一番中心となるのは志を持った人間なんですよ。でも、彼の横に乗組員として一緒についていくスペシャリストの存在がめちゃくちゃ重要

それが僕らが事業をやってきてわかったこと、なんですね。なので、ボーダレスは今その体制に移ろうとしています。

スペシャリストもやりたいことは同じなんですよね。ただ役割が違う。だから皆さん、起業家である必要はないんですよね。じゃあ、自分がその中で、何屋さんだった時にその志に向けて一番貢献できるかなっていうのを真剣に問うべきなんですよ

組織を率いる、組織に対する興味がある人間が事業家を目指すべきなんです。言葉使うのがめちゃくちゃ上手にできる人はライターに、マーケティングのセンスはあるって人はマーケティングに、人と話すのこと、人と人を繋ぐのが好きですって人はPRをやるべきだと思うんです。

そういう人間がボーダレスに何人いるかっていうのことが、何人の起業家を支えられるかっていうことなんですよ。これが今回のSEEDっていうプログラムにつながる考え方です。

石川:鈴木さんはいかがですか。

鈴木:過去10年間やってきて、年商30億円ですけど、これって小さいですよね。30億円で世の中変えたなんて言ってられますかっていう話だと思うんです。

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ソーシャル界隈って、インパクトを求めるよりも、ひとりひとりに向き合おうっていう要素の方が強くて、さらにビジネス領域でプロだったって人がほとんどいないっていう状態なんですね。

だから、基本的には30億とか言っちゃうと、「わあーすごいですね!」って言われるんですけど、まあ何のこっちゃないですね。

ひとりひとりの生活が変わってるし、喜んでくださっているのは凄く嬉しいことです。でも、そこの人以外の領域においては、やっぱり今でも困ってるっていう人が沢山いる。で、そうした時に、結局その問題たちを解決するには、「絶対的にその問題をなんとかしたいんじゃ!」っていう志を持って中心に立つ事業家が必要なんです。

事業家の役割は、センターにある心意気をもってして、「こんな社会を作っていきます!」って組織の原動力となることなんですよね。一方で、店舗開発、商品開発、ウェブデザインの分野ってなると、やっぱりそこにはプロフェッショナルの人たちが必要なんですよ。それで、センターに立つ事業家が向かう先に対して、自分たちの力を徹底的に注入しながら、よりスピードをあげていくんです。

それで、ボーダレスは10年経ってこれしきのレベルってのが一番の問題ですね。一個の事業を立ち上げて、インパクトを出すサイズに持ち上げるっていうのをもっと早く回さないと、僕らがどうこうって話じゃなくて、現場で困っている人たちの生活ってのはその間何も変わってこないんですよ。

だとすれば、センターの意思をもった人間、及び、それを何がなんでも実現したるっていう素晴らしきプロフェッショルの仲間たち、これをワンセットできちっと機能させる状態をつくらなきゃいけない、と思ったのがボーダレスの新しいプラットフォームしての考え方です。今日こんなに可能性のある皆さんとお会いできる場を10年目にして設けたっていうのには、こういう経緯がありました。

(トークセッションおわり)

2人のソーシャルビジネスにかける熱意の強さが、聴いている方にも伝わってくるようなトークセッションでした。

当日フォーラムに参加いただいた方々には、「リスクをあえて引き受けて闘っている事業社長たちの話を聞き、自分も挑戦しようという勇気をもらいました」「ソーシャルビジネスは生ぬるいイメージがありましたが、一般のビジネスと同じように、もしくはそれ以上に本気で取り組んでいることが伝わってきました」などと感想をいただきました。(イベントの詳細はこちら

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