
大手商社で順調に昇進、順風満帆だったビジネスマンが一念発起、転職してソーシャルビジネスに挑戦する理由とは?「偏見のない世界をつくる多国籍コミュニティハウスBORDERLESS HOUSE」の事業社長・李 成一が語りました。
内容は、2016年月12月18日(日)、ボーダレス・ジャパンの社会起業家9名が登壇した、SEED BUSINESS FORUMのプログラム1「ソーシャルビジネス・プレゼンテーションからです。
↓以下、全文書き起こし
30歳で転職、自分が本当にやりたいことと向き合う
ボーダレスハウスは「コミュニティハウスづくり」をしています。実はこの事業は、ボーダレスが最初に始めたソーシャルビジネスです。
まずは簡単に自己紹介させていただきます。李成一と言います。在日コリアンです。大阪で生まれ育って、東京に2004年に上京してきて、ミスミっていう商社に勤めていました。
7年間この商社に勤めて、結構キャリアアップもしていって、自分のキャリアは順調だなあと感じていたんですけど、30代を迎えた時に、「ちょっと待てよ、オレは本当は何がしたかったんだ?」と思ったんです。
同じように思って、今日ここに来た方もいらっしゃると思うんですけれども。
その時に、改めて自分は何がやりたかったんだろうって考えると、やっぱり自分は在日コリアンというマイノリティな立場だったので、こういったマイノリティの人たちがどんどん活躍できるような社会をつくるために働いていきたいなって思ったんです。
この志はずっと持っていたんですけど、こういう気持ちって普通に働いているとなくなっていっちゃうんですね。なくなるというより、忘れちゃうんです。その気持ちを今の創業メンバーは思い出させてくれて、「よし、やっぱりそういうところにダイレクトにやろう」ということで2011年の4月にボーダレス・ジャパンに入社しました。
4月なんで、ちょうど3月に震災があってシェハウス事業はがたっと落ちたんですけど、そこからまた持ち直して、そして韓国の事業進出、戻ってきてから全体の統括、2014年には台湾の進出。
その後はホームステイ事業も始めたんですけど、早々にこれはダメだなってことで、撤退しました。この説明はみなさんにとってあまり学びがないと思うので、ここでは省きます。はい。(笑) そして、去年の6月に関西進出を果たしました。
ボーダレスハウスってシェアハウス事業なんですけど、ここには今日いろんな方がいるんで、シェアハウス聞いたことあるなって人もいれば、住んだことがある人もいれば、結構深く知ってる人もいると思います。
ちなみに、シェアハウスって言葉を初めて聞いたって人いますか?じゃあ、シェアハウス住んでる人?おお〜、結構いる!
僕らが10年前に始めた頃って、シェアハウスってワード自体なかったんですよね。「ゲストハウス」の時代だったんで。そこから作っていったので、僕らは一応「パイオニア」というプライドを持ってやっています。
うちのハウスは結構おしゃれです。で、商品力は研ぎ澄ましています。いいことやってるでしょ?っていうのじゃなくて、すごく商品にはこだわっていて、その商品は設計とか入居者さんの質だったりとかします。そこのところを説明していきたいと思います。
なぜシェアハウスなのか?
そもそも背景としてなんでシェアハウスを始めたのか?
当時10年前、社会起業家のプラットフォームという看板を抱えながらも、ボーダレス・ジャパンとしても飯食っていかないとねって話があったので、不動産賃貸の仲介業をやってました。
その時、外国人は「外国人」ってだけで、断られちゃうんですよね。これは僕もそうで、日本生まれでそれなりの収入があっても、やっぱり日本人じゃないからって理由で断る大家さんって結構いるんですよ。当時はめちゃめちゃいっぱいいました。
いまは、どんどん外国人向けの保証会社が出てきたくらいなので、大分変わってきたんですけど、当時そういう偏見がすごくありました。じゃあどうするか?ってことで、ボーダレスが借り上げちゃえ、と。その人を説得するんじゃなくて、借り上げて住んでもらおうというところが発想となりました。
一方で、外国の人が留学に行くと、その留学先で現地の人と交流する機会がなかなかないんですね。この中には留学されたことがある方もたくさんいらっしゃると思うんですけれど。行ってみたら、意外と自分の国のひとと群れちゃうとか、現地のひとと交流するには、クラブとかパブに行かなきゃいけないとか。
そういうことがあって、だったら日本人と一緒に暮らしてもらおう、ってことで始まったのが国際交流のハウスでした。これがシェアハウスのはしりでした。ちょうど日本のグローバル化が進んでいた頃だったので、思ったより、日本の方のニーズが多くて。で、僕らの事業は順調に立ち上がっていきました。
だから、もともとシェアハウスをやろうって始めたビジネスではなくて、ここの問題へのアプローチとして僕らはシェアハウスという方法をとっているという認識を持っていただけたらな、と思います。
ボーダレスハウスの今の状況はというと、海外事業にも力を入れています。
海外の人から見ると、日本という外国に、安心して暮らせる住居と現地のコミュニティとの交流の促進をテーマにやっています。日本・台湾・韓国で今事業をやっていて、全部で120ハウスあります。
シェアハウスっていう文化がある欧米ではなくて、アジアでも同じように外国人のひとが留学先で住居に困っているんですよね。そこを解決したいっていう思いがあったので、韓国・台湾に行って、これからは東南アジアの方に攻めていけたらなと考えています。
ボーダレスハウスの強み
シェアハウスは、空港から荷物一つで直接入居できるような環境をつくっています。じゃ何が強みなのか?てところで、ソフト面とハード面でお話していきます。ソフト面はフロントのことで、お客さんサイドの話で2つあります。
一つは必ず半数が外国人だということです。ここは本当に必ず半分で、その半分っていうのも、アジア圏、欧米圏っていうのでアジア圏が大体7割くらいですね。こういうカルチャーミックスってのを非常に意識しながら集客しています。
なので、たとえば10人のハウスで、日本人の方5人でその次に韓国人の方が入ってきて、その次に台湾人、次に中国の方がエントリーされてきたら、「ごめんなさい、他のハウスにお願いします」という形で英語圏の方を集客してやっています。
それでも稼働率は高いので、お客様のメリットをきちんと伝えるマーケティング力があるところが強みです。
もう一つは、国際交流に意識の高い、交流したい人だけが集まっているコミュニティだということです。なので、なんとな〜く新宿のこのハウスに住んでみたいなっていう人はお断りをしていて、ちゃんと交流意欲のある人に住んでもらって、それが結果的に僕らの商品であり、営業力になっているので、コミュニティの質を重視しています。
外国人だったら、空港から直接来る場合は会えないので、スカイプで一時間くらい面談して、ゲストハウスじゃないよ、ホテルじゃないよってことも理解した上でご入居いただいています。
次はハード面のお話です。僕たちが活用しているのは空き家ですね。
これを質の高いコミュニティハウスに再生するってのをテーマにしてやっています。ここの写真にあるようなもの、イメージするのは昔ながらのおじいちゃんおばあちゃんのお家ってことですね。
空き家を相続した若い夫婦は、他の分譲マンションに住んじゃったりするんですよね。そうするとその家を賃貸に出すんですけど、こういう古いお家を大家族が20〜30万払って暮らす時代ってのは、今はもう違うんですよね。
そういうのが日本にどんどん広がって、いま空き家問題になっていますよね。東京もしかりです。通常借り手がいないよねっていう家をリノベーションして、僕らは貸主に高い家賃保証をしています。
あとは、地域のコミュニティ活性です。空き家があるとやっぱり暗いんですよね。その町自体が。そこに人が通うこと。僕たちの入居者さんはすごくフレンドリーなんで、朝「おはようございます」って住人に挨拶をするとかですね。そういうところでコミュニティ活性化に貢献できていると思います。
強みの源泉として何がいいんですか?ってことなんですけど、家賃は確かに圧倒的に高いです。コミュニティの質が高いので、お客さんはそれでも住んでくれています。
次に、対大家さん。管理費は粗利ですね、だいたいこの粗利ってものが僕らはしっかりとれるような仕組みをつくっています。だいたい業界平均80%ぐらいの稼働率が、うちは非常に高いので、ハウスに行けば必ずどこも入居者さんが住んでいる状況をつくっています。
実際、無駄な広告を出さずに自分たちのポータルサイトだけで集客ができていて、ここに全コストを集中させて開発しています。
ここまでが細かいところで。実際僕らがやっているのが差別や偏見ってところなんですけど、僕らが事業を始めてから、今まで6,000人が住んでくれました。これからもどんどん増えていくと思います。
で、数を僕は非常に重要視していて。稼働率ではなくて入居数ですね。
やはりこのボーダレスハウスを経験することで、いろんな国の人のイメージとかあるんですけど、その国の人のイメージって変わるんですよね。
いままでこの国はこうだったよな〜と思ってたものが、その人との出会いを通じて一気に変わるって、みなさんも経験あると思うんですけども、そういう経験をもった人をどんどん世の中に排出していくことこそが、この社会の偏見とか差別とか、それこそ世界平和ってものを実現するんじゃないかっていう、そういう強い思いを持ってやってます。
なので、僕らはグローバル市民を排出するんだって思いでこのソーシャルインパクト6,000人ってものをどんどん上げていく為に、これからも事業展開していきたいなと思っています。
今まではハウスの中のコミュニティだったんですけど、一緒に住まずにもう少し外国人と触れ合える機会を提供したいとも思っています。
日本に来た方が、もっと地域を理解しながら住んでもらいたいっていうことを考えていて、京都に新しく新築のハウスをやります。ここは街自体、すごく歴史景観があって、最初から地域のコニュニティと共同していろんなイベントをやれるスペースを作っています。そういう地域交流もできるシェアハウスですよってPRして、新しい物件を来年3月からオープンします。
ここまでがボーダレスハウスの説明です。
僕らはシェアハウス会社ではなくて、ボーダレスハウス社として、コミュニティ事業を取り扱っています。その観点で、自分たちは何者か?って考えた時に、コニュニティ事業屋であるということ、やっぱりそこをテーマに、新しい居住形態を通して社会的意義を持てるような事業を作っていきたいという風に思っています。
だから、国際シェアハウスで終わるつもりはありません。いろんなテーマをやりたいんですけど、いま進めているプロジェクトとして、まずは母子家庭の貧困問題にコミュニティ事業でアプローチできないかと考えています。
実はシングルマザー向けシェアハウスってもうあるんですよね。でもなかなか増えていかなくて。自分一人で子供を育てなきゃいけない孤独だったりとか、フルタイムで働けない経済的な問題とか、それらによる貧困の連鎖が続いている中で、こういう人と人が一緒に暮らすコミュニテイっが出せる価値って、実はすごいあるんですね。
ただ、ビジネスとして儲からない、ビジネスとして広がっていかない、共感を生めない、なんて何か少し足らない現実があるんですよね。それこそさっき社長が話していた、置いてけぼりにされているマーケットがあるんですよ。
だから、志ある人が一生懸命やって、これを僕らが持っているマーケティング力と運営力でビジネスとして成り立たせていけば、かなり社会にインパクトが出るんじゃないかな、という思いでやってます。
来年の春くらいには一棟目をオープンする予定になっているので、ここもメディアリリースとかやったりしながら展開していきたいです。
差別偏見も同じですよね。マイノリティのコミュニティの人達のために、しっかりコミュニティをつくって、その人たちがそのハードルを越えていけるようなコミュニティを僕らが提供する。
そういう思いを持っていろんな事業をやっているので、ここが成功したら、たとえば独居老人だったり、難民だったり、貧困の子どもだったり、いろんなテーマが溢れているので、ここに僕らのビジネスノウハウを持ってコミュニティをつくりたいと思っています。
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